お店、どうします!?
「はいは~い! まずはやっぱりお店を決めるべきだと思いま~す!」
「それは確かにそう! このお店に行く! ってのはまだでも、何を食べるかくらいは決めておいた方がいいよね!」
「私は美味い酒が飲めればそれでいい! そこにきゃわいい女の子たちが加われば最高じゃい!」
まずはどんな店に行くか? というところから始まった会議は、序盤からなかなかの盛り上がりを見せている。
とりあえず、普通に話し合いが進んでいる間は黙っておくことにした枢が見守る中、彼の義母であるしゃぼんが勢いよく挙手すると共に大声で自分の意見を口にしてみせた。
「やっぱこういう時は肉っすよ、肉! 夜は焼肉っしょ~! ってことで、自分は焼肉を推すっす!」
「焼肉か~! 飲み会の鉄板だし、盛り上がりやすくていいよね!」
「嫌いな人もまずいないメニューでもあるし、確かにいい感じさ~!」
「酒も進むしね! ビールもサワーもよく合うんだ!」
飲み会のド定番であり、大多数の人間が好むであろう焼肉という案に賛同するメンバーたち。
提案者のしゃぼんも自信満々といった様子で胸を張っているが、そんな一同に対して紗理奈が待ったをかけた。
「ちょっと待った! その案で決定するのはちょっとマズいと思うよ!」
「むむっ! どういう意味っすか、紗理奈ちゃん? 自分のパーフェクトな案のどこに不具合があると?」
「確かに焼肉はあたしも好きだし、飲み会の定番だと思うよ。でも……これが三期生の歓迎会だってことを忘れてない?」
えへんえへんと咳払いをした後、仲間たちの視線を浴びながら焼肉案への反対意見を述べ始める紗理奈。
これはただの飲み会ではなく三期生の歓迎会であるという部分を強調しながら、彼女は問題点を指摘していった。
「焼肉ってことは、当然ながら生のお肉を提供されて、それをテーブルで焼くわけでしょ? じゃあ、肉を焼く人って誰になるわけ?」
「誰って言われたら、そりゃあまあ――」
「枢くんとかおせろママとかの面倒見のいい人になる、だろうね」
「そう! そこだよ! そもそも肉すらまともに焼けそうにない料理下手たちが集まるうちの事務所のメンバーが焼肉屋で会食なんてしたら、自ずと焼き役がほんの一握りの料理できる面子に固定されちゃうでしょ? 食べる側はずっと食べてて、焼く人はずっと焼き続ける……それってなんか不公平じゃない?」
席で調理するという特性上、焼肉は食べる人間と作る人間が固定されやすいという問題点があると指摘する紗理奈。
確かに彼女の言うことも一理あるが、流石に肉を焼くだけならば(しゃぼんや乙女、愛鈴などの一部例外を除いて)誰でもできるのでは? と集まったメンバーの内の何名かが思う中、彼女は更にこう続ける。
「それにさ~、後輩くんたちからしてみたら、先輩たちが自分たちのためにずっと肉を焼いてくれてる状況になるわけじゃん? なんかそういうのって普通に気を遣うし、安心して楽しめないと思うんだよね~……」
「確かに、それもそうですね……私も先輩たちが自分のためにずっとお肉を焼いてくださったりしたら、ありがたいと思うと同時に申し訳なく思っちゃうでしょうし……」
「かといって、主役である三期生に肉を焼かせるなんてのは論外だしな。あっちの立場とか心境を考えると、席で調理する系の店は避けた方が無難か」
「う~ん、いい案だと思ったけど、よく考えてみればそうか……紗理奈ちゃん、指摘してくれてありがとうね」
「へっへ~ん! おっぱいもお尻も大きい上に顔も良くって気遣いもできるサソリナちゃんと呼んでもいいよ! にゃっはっはっはっ!!」
単純な飲み会ではなく、三期生の歓迎会として主役である彼らに楽しんでもらえるような場にしなければならないという紗理奈の指摘を受けた一同は、しゃぼん案である焼肉パーティーを却下することに決めた。
ならばどこで何を食べるか? という部分について、活発な話し合いが続いていく。
「肉がダメなら海鮮系のお店とか? お刺身とか、そういう系ってのはどう?」
「悪くはないけど、ちょっとおしゃべりに夢中になってたら乾いてカピカピになっちゃったりしそうで怖いよね……あと、お魚は生臭くって苦手って女の子も多いだろうし、そこも心配」
「洋風のバルとかどうっすか? 肉バルならステーキとかポテトみたいな定番かつ調理済みのメニューも沢山ありますよ!」
「バルはオープン過ぎるから、身バレの危険性があるのがマズいんじゃないっすかね? 大人数だと席の確保も難しいし……」
「鉄板焼きとか鍋も焼肉と同じ理由でダメだし……あ~っ! 難しくない!?」
「私たちは別に後輩ちゃんたちに喜んでもらえるならいくらでも調理役を引き受けるけど、それが逆に気を遣わせることになったら意味がないものね。難しいわ……」
ああでもない、こうでもないと意見を出しては問題点を見つけて却下するということを一同が繰り返す中、意外な人物が手を挙げる。
おずおずと挙手をした芽衣へと会議室に集まったメンバーが驚きを込めた視線を向ける中、彼女は若干気後れしながらもこんな質問を投げかけた。
「あの、地味に気になってる部分なんですけど……三期生さんたちって、何人入る予定なんですかね?」
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