歓迎会を、やろう!
「歓迎会って……気が早過ぎるだろ? まだ先の話だぞ?」
「ちっ、ちっ、ちっ! マコトちゃんは甘いね~! こういうのは直前になって準備するより、前々から段取りを決めておいた方がいいものなんだよ~!」
「そうそう! 余裕をもって準備するのが一番さ~! 今ならお店の予約も簡単だしね~!」
まだデビューしてもいない三期生の話題を出しつつ、彼らを飲み会のダシに使おうとする早矢へとツッコミを入れるマコトであったが、紗理奈とたらばが彼女の意見を援護したことで閉口せざるを得なくなってしまった。
えっへん、と胸を張る早矢たちに対して、芽衣がなるほどといった表情を浮かべながら口を開く。
「歓迎会……! 確かにいいかもしれませんね! 新しい仲間と打ち解ける場としては最適かもしれません!」
「でしょでしょ~!? さっすが芽衣ちゃん! 話がわかる~!!」
「……芽衣ちゃん、普通に騙されてるよ。あの人たちがそんな殊勝なことを考えてるはずないって」
新しく事務所に仲間として加わる後輩のことを想っての提案だと勘違いする芽衣へと、枢が優しく(三名+乙女に対しては辛辣に)事実を伝える。
そのまま早矢たちの方へと視線を向けた彼が、無言で「飲み会をやりたい本当の理由は?」と問いかけてみると――?
「私も頑張ったし、誰かにねぎらってもらいたい! 乙女ちゃんと同じ気持ち!!」
「楽しくお酒を飲んだりして、みんなで騒ぎたいさ~! 新人の子もいると更に楽しそうだよね~!」
「人の金で美味い飯と酒が飲みたい!! 自分の懐を痛めずに美味しい想いをしたい!!」
……と、彼女たちは胸を張って(その内二名は胸を揺らしてといった方が正しい)正直な欲望を口にしてみせた。
「ほ~ら、やっぱこんな感じだ。まだデビューしてない後輩をダシに使わないでくださいよ」
呆れた様子の枢からそう言われても、三人は堂々とした態度を崩さないでいる。
更に面倒なことにここに大魔神こと清川乙女が加わるわけで……枢はたった一人でこの我がまま美女四名と戦う羽目になってしまった。
「いいだろ~! 私たちにも後輩にもメリットはあるんだし、誰も困ったりしないじゃないか~!」
「普通に考えて、タレントの欲望のために金を出す羽目になる事務所が困ると思いますよ」
「新人の歓迎会だよ? 実質、一生に一度のイベントなんだから、そのくらいお金を出してくれたっていいじゃない!」
「規模を考えましょうね、規模を。そもそも、歓迎される当事者たちの意思を無視して話を進めるのもおかしいでしょうが」
「まあまあ、新人の子たちもみんなと美味しいお酒を飲んだりご飯を食べたりしたいと思ってると思うよ~!」
「三期生が何人入るかもわからないし、そもそも未成年だったらお酒も飲めないでしょうが。その辺を配慮してね、たら姉?」
「いいじゃん、いいじゃん! ほろ酔い美人に囲まれるだなんて羨ましいシチュエーションでしょ! ちょっとえちちなハプニングが起きるかもしれないよ!?」
「遠回しに炎上予告するの止めてくれません? 見えるんですよ、未来が。歓迎会で何か変なことが起きたら、それがどこかから漏れて絶対に俺が燃えるんですって」
「……枢の奴、ツッコミ慣れてるな。あいつ一人に任せても大丈夫そうだ」
「他人にツッコミを入れるのはクソマロを捌くので慣れてるって言ってますから……」
我がまま放題の四人組へと丁寧にツッコミを入れる枢の頭上では、『一級クソマロ検定師』という虹色の文字が踊っている。
日々のVtuber活動の中で磨いたスキルを遺憾なく発揮する彼と早矢たちの言い合いが続く中、このままでは埒が明かないと考えたであろう芽衣が枢を宥めにかかった。
「先輩たちの動機は不純かもしれないけどさ、新しく入ってくる三期生のみんなを歓迎するっていうのはいいんじゃないかな? 少し話を聞いてあげようよ」
「……芽衣ちゃんがそう言うのなら、まあそうしようか。でもこの人たち、すぐに調子に乗るからなぁ……」
「おお! 芽衣ちゃんの一言で枢くんが大人しくなった! 真のへびつかいは芽衣ちゃんだったか!」
「流石は嫁! 夫婦! 枢くんもかわいい芽衣ちゃんには甘々さ~!」
「やっぱりそういう関係な相手には弱いんだね~! 助かる、助かる! にゃっはっはっはっは!!」
「芽衣ちゃんもありがとう! お礼に私の熱~いキッスを受け取って……ぶぎゅうっ!?」
芽衣の進言に従って話を聞くことにした枢は、そのまま凝りもせず三度芽衣に迫る乙女へとマコトと共に折檻を入れる。
綺麗にひっくり返った彼女を心配する者は誰もおらず、若干そのことを枢が不憫に思う中、またしても早矢がメンバーを代表して大声でこんな宣言をしてみせた。
「それじゃあ、三期生の歓迎会に関する会議を始めます! 【CRE8】タレント! しゅうご~うっ!!」
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