食事休憩、酒が欲しい!!
視聴者たちからは見ることはできないが、どうやらスタッフが新しい料理を手にスタジオへとやって来たようだ。
先の美味しかった料理の数々を思い出したマコトと乙女もまた、沢山しゃべったが故に感じる喉の渇きを潤すことも含めて、一旦休憩を挟むことにした。
そんな彼女たちの前に運ばれてきた料理たちが画面に映し出される中、それを見た三人の歓喜の声が響く。
「うっひょ~っ! 洋風の次は中華ですか!? ヤバッ!」
「どれも美味しそ~っ! でも、揚げ物ばっかりだから太っちゃう~っ!!」
「美味い物はカロリーが高いからな。仕方がないけど、食欲には逆らえなさそうだ」
唐辛子と一緒に炒められた四川風唐揚げに食べやすく半分にカットされた春巻き、更にはこんがりと焼き色がついた餃子と、追加の料理は中華ばかりだ。
他にも焼売や小ぶりの肉まんなどが並んでいるその様は、まるでレストランで点心セットを注文しかかのように見える。
「ええ~っ!? さっきのパエリアとかもそうだけど、こんなに豪華な料理を頼んじゃっていいの~? スタッフさんたち、無理してない?」
「まあ、この程度で潰れる事務所じゃあないでしょ! ほら食おうぜ! 腹がはち切れんばかりに貪り食らおうぜ!!」
「すいません。飲み物を頂いてもいいですか? あ、ありがとうございます」
ほかほかと湯気を立てながら、食欲を誘ういい香りも漂わせる中華料理の数々を前にすると、流石のビッグ3たちも食欲を抑えきれないようだ。
割り箸を割るパキンッという音が響いた後、料理を口に運んだ三人の表情が満面の笑みへと変わっていくと共に、喜びにあふれた感想が口から飛び出してくる。
「肉まん、ふわっふわでおいし~っ!! コンビニとかのより小さめなのに、すっごくジューシーだ! お店の料理ってすごいね!」
「餃子も焼かれてからそんなに時間が経ってないのかな? 皮がパリパリで、香ばしいっすね」
「皮がパリパリといったら春巻きでしょ! 皮だけじゃなくって、中の具もシャキシャキでヤバいって! 止まんないって! デブになるって!!」
こちらの料理たちも最初に出てきた洋風の品々に勝るとも劣らないレベルの美味しさを誇っているようだ。
むしろ手軽につまめる料理が多い分、箸の進み具合でいえばこちらの方が早いかもしれない。
先ほど、結構な量の料理を食べていたと思ったのだが、それでもここまで追加の料理を食べられるだなんてすごいな……と、見守るスタッフ一同が苦笑しながらそんなことを思う中、四川風唐揚げを頬張った乙女がこんなことを言い出した。
「あ~……っ!! これ美味いんだけど、マジで。あ~、あ~っ! 酒が欲しい! 多くは望まないから、ビールが一本だけ飲みたい!」
「ふざけんな。お前、今は仕事中だぞ? 自重しろよ」
「わかってる! わかってるけどさ~! 絶対にこれ、ビールが進むじゃん! このスパイシーかつサクサクの唐揚げなんて正にその代表だし、そもそも揚げ物と酒の相性が抜群過ぎるんだよ~! 逆にどうしてこの料理を出しておいて酒を飲ませねえんだ!? もはや新手の拷問だろ、これ!?」
「あ~、でも乙女ちゃんの言ってることもわかっちゃうかも。これはお酒欲しくなるよ~……!」
「早矢、お前までそいつに賛同したら歯止めが効かなくなるだろうが。アタシの負担も考えてくれって」
収録中にも関わらず、酒が飲みたいと言い始めた乙女とそれに同意する早矢にツッコミを入れるマコトであったが……本音を言えば、彼女も同じ気持ちだったりする。
揚げ物特有の油や肉汁による脂っぽさでいっぱいになっている口の中を冷えたビールでリセットできれば、どれだけ気分がいいだろうか?
飲み物として黒烏龍茶を貰っているし、体脂肪のことも含めてこれはこれで相性がいいのだが、酒を飲みたくないかと聞かれると否と答えるしかない。
「……どうする? 一旦収録ストップして、ビール空けちゃう? グビッと一杯いってみるとか、どうでしょうかねぇ……?」
「ダメに決まってるだろうが! 諦めろって!」
「流石にそれはマズいし、今日のところは諦めようよ。ケータリング先のお店を教えてもらって、プライベートで楽しむってことで……ねっ?」
欲望に忠実な乙女を何とか制しつつ、座談会を先へと進めるべく話をしていく早矢とマコト。
口の中に残る濃厚な中華料理たちの味を烏龍茶の苦みと冷たさで胃へと押し流した彼女たちは、食事休憩を終えると残る二期生たちについて語り始める。
「残りは二人だね~。オチのことを考えると、次は――」
「芽衣ちゃん! いや~、いっぱい語りましょう! ちっぱいについても語っちゃいましょうっ!!」
「……そろそろ欲望の歯止めが効かなくなってきたな。早く終わらせないとマズいぞ」
食欲が満たされたことで、残る三大欲求の内の一つである性欲へと乙女の欲望が傾きつつあるようだ。
下手をするとこの収録はお蔵入りになるかもしれないなと思いながら、マコトたちは羊坂芽衣について語っていった。
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