二期生・リア・アクエリアスについて
「愛鈴の話はこの辺にして、次にいこうか。三人目、捻らずリアについて話していこう」
「リアちゃんね! あの子は最初の印象と今の印象が百八十度変わった子だね! 最初はクールなお姫様って印象だったけど、今はもうかわいい妹としか思えないもん!」
「無防備で実に良き。ご飯で釣ってハイエースした――」
『※しばらくお待ちください』
大変不適切な発言が流れた後、画面に注意書きが表示された。
数秒後、再び切り替わった画面の中で微動だにしなくなった乙女を放置して、残りの二人が話を続ける。
「無口っ娘も好きなんだけどね。今の方言全開の妹ムーブリアちゃんも本当にかわいくってさ~! いや~、ついつい甘やかしたくなっちゃうよ~!」
「二期生でも妹分的な存在だし、そもそもうちで一番年下じゃなかったっけか? みんなが甘やかしたくなる気持ちもわかるな」
「あとは……歌ね。最近、こっちに来てもらったんで色々とお話して、歌も聞かせてもらったんだけど、まあすごいのなんの! 普段あんなにかわいいのに、歌う時には完全にスイッチが切り替わるんだよ。マコトちゃんと同じくらい格好良くなる」
「あはは! なんかついでで褒められた。でもそうだな……あいつは歌に関しては特に真剣だよな。Vtuberとして活動していく内に一皮剥けた感もあるし、最近は本当に技術が上がってるなって思うよ」
「クールビューティーもかわいいも格好いいも全部いけるって、本当にすごいよね! 全部が全部ギャップ満載で推し甲斐があるっていうかさ!」
「ふ、ふふふ……! 事務所NO.1シンガーである獅子堂マコトにもついにライバルが登場したね。若い目を早めに摘んでおかないとマズいんじゃないかぁ……?」
「……お前のそのどんだけ折檻されても減らない口だけは尊敬してるよ。見習いたくはないけど」
「ふははははっ! この口のすごいところは他にある! 具体的に言えば、キスのテクニックとか――」
『※この歩く下ネタbotが不適切な発言を連発してしまい、本当に申し訳ありません。しばらくお待ちください』
本日二度目(数分ぶり)の画面切り替えからの再び微動だにしなくなった乙女という見覚えしかない流れを繰り返しても、早矢とマコトには一切動じている様子はない。
そこから彼女たちがこのやり取りに慣れているんだろうな~、ということを視聴者たちが推察する中、早矢が今後のことも視野に入れた話をし始めた。
「もうこの動画が公開される頃には発表されてると思うけど、三期生のデビューも決まったわけでしょ? ってことはリアちゃんも先輩になるわけで、そうなった時にどんなふうになるのかに興味があるのと同時に心配でもあるよね」
「年上の後輩ってちょっと接しにくそうな雰囲気あるもんな。幸い、今のところ、アタシたちはそういう問題とは無縁だけどさ」
「二期生は全体的に年齢が若めではあるからね。半分が二十歳未満なわけだしさ。これからデビューする三期生たちがどんな人たちなのかはわからないけど、礼儀正しい子たちが多いから、後輩との接し方には苦労しそう」
「その中でも最年少のリアは色々と戸惑いそうって不安もある、か……う~ん、人間関係でトラブルになることはないと思うけど、慣れるまではギクシャクしそうではあるよな」
デビューが決まった三期生のことに触れながら、後輩たちが彼ら彼女らとどう接するかを不安に思う早矢とマコト。
これまで後輩でしかなかった自分たちが先輩になるという境遇の変化や新しくデビューした後輩たちと上手くやっていけるかを心配する彼女たちであったが、残る一人は割と楽観的にこの状況を見守っているようだ。
「大丈夫だと思うよ~。なんだかんだ、二期生ってコミュ力高い子たちが多いわけじゃん? リア様もデビュー直後の無口モードだったら厳しかったかもだけど、素の自分を曝け出せるようになったなら、そんな気後れすることもないって!」
「……なんかお前が言うと説得力がすごいんだよな」
「流石は幻の三十分間を作り出した女! よっ、すごいぞ乙女ちゃん!」
「はっはっは~っ! 褒めろ! 崇めろ! 奉れ! 惚れたついでにちょっと抱かせ……あっ、今のなし!」
「……よし、ようやく躾が効いてきたみたいだな」
三度目の折檻タイムに突入する寸前、危ない発言を自ら撤回した乙女が大慌てで口を閉ざす。
ここまでの調教がようやく功を奏し始めたことにマコトが頷きと共に満足気な表情を見せる中、追加の料理が運ばれてきたことを見て取った早矢が二人へと言った。
「あ~っ! 新しい料理が来たよ! ちょっとおしゃべりは中断して、栄養補給タイムといこう!」
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