くるるんキッチン、おかわり!(二皿目)
未公開映像集、再び
みんな~! こんラブリー! 【CRE8】二期生、とってもかわいいアイドルVtuberのラブリーこと、愛鈴だぞっ♡ きゃはっ♡
『くるるんキッチン』で放送できなかった未公開映像の振り返り番組こと『くるるんキッチン、おかわり!』はっじまっるよ~っ!
今回の放送では私が出演した第三回と、魚住しずく先輩が出演した四回目の放送の未公開映像を一緒に見ていこうね!
どれもこれも本放送で使えなかったのが残念なくらいに面白い内容だから、楽しみにしてて!
ではでは、今日も……お腹いっぱいになるまで、召し上がれ♡
【PROJECT LOVELY】
(BGM:リア様が歌う地○の星)
(ナレーター:愛鈴)
――全ての計画が動き出したのは、第二回放送の直後のことだった。
「蛇道さん、次の回のゲスト、愛鈴さんなんですけど……何を教えますか?」
「それですよね……本当、どうすればいいんでしょう……?」
くるるんキッチン第三回のゲストは、二期生の愛鈴。
後に蛇道家の電子レンジを破壊し、調理器具スレイヤーの異名と共に恐れられることとなる、最悪の世代の一人。
彼女を料理番組に出演させ、更に料理をさせるという行為は……想像以上の難易度を誇る。
枢、そして番組スタッフたちは協議を重ね、慎重に番組の内容を決定していった。
「正直、ご飯の炊き方から始めたいレベルなんですけどね。許されるのなら、おにぎりとかにしたいです」
「いや、流石にそれは撮れ高に問題が……3D配信ならまだしも、2Dかつ実写映像を織り交ぜた番組なので……」
「そうですよね……う~ん、どうすっかなぁ……?」
会議は困難を極めた。時に彼らは、ぶつかり合うこともあった。
「だから、揚げ物は無理だって言ってるでしょ!? あれは結構手間がかかるし、初心者向けかどうかって言われたら微妙なところなんですから!」
「でも、火を使わないと映えが……! それに、揚げるだけなら意外と簡単な部分もあるんじゃないですかね?」
「そういう料理もありますけど、何より危険なんですよ! あの女が家で揚げ物なんてした日には、ネット的な意味じゃなくてマジで炎上しますって!」
料理担当と映像編集担当、双方の立場から意見をぶつけ合う激しい会議。
しかし、彼らは互いに手を取り合い、この困難なプロジェクトを成功させるための話し合いを続けていく。
「完成品は色が豊かなのがいいですね。その上で火を使うとなると――」
「……中華系いきましょうか。愛鈴のイメージに合ってるし、肉も野菜も取れます」
「でも、愛鈴さんが重い中華鍋を振れますかね?」
「なにも本格的な中華を作る必要はないですよ。俺が初心者向けにレシピをアレンジするんで、それでいきましょう」
中華でいく……方向性は定まった。
問題は中華料理の中から何を選ぶのか? ここに番組の行く末がかかっている。
「チンジャオロースとかはダメですよね? 肉とピーマンを細く切るのは難易度が高そうですし……」
「ムーシューロウはマイナーだもんなぁ。色味もちょっと地味か」
(※きくらげと豚肉の卵炒めのこと。他に野菜を加えて炒めることもある。美味しい)
「チャーハンもあれですもんね。前回がペペロンチーノ作っちゃいましたし、二連続主食は厳しいか」
「そもそもあれは前日に余ったご飯を有効活用するレシピですから、ご飯を炊くっていう習慣がないあいつには合ってない気がするんですよね」
次々と料理の名前を出しては自分たちで却下し、出しては却下し……そうやって苦悩し続けた彼らは、ついに納得のいく答えに辿り着く。
酢豚……誰かが不意にその名前を出した瞬間、一同の心に確かな光が差した。
「それだ! 酢豚なら初心者向けのアレンジも簡単だし、ピーマンとパプリカで色味も十分! 肉も野菜も取れる上に火も使うから、絵面もバッチリですよ!」
「やっと決まりましたね……! 長かった……!!」
差し込んだ光の先を目指し、一致団結するメンバーたち。
最後まで油断せず、番組を盛り上げるため、安全に収録を終えるため、その先のことも考えて、彼らは話し合いを詰めていく。
「レシピは本当に簡単に作り上げます。食材を揚げたりせず、フライパン一つで作れるレベルに調整してみますね」
「ありがとうございます。調理中はガンガンツッコんであげてください。多分、それが一番面白くなる展開だと思うんで。遠慮しなくていいですよ、愛鈴さんですし」
「そうですね。別に俺が何か仕込まずとも面白くしてくれるでしょう。ツッコミを遠慮する必要もないですよね、愛鈴だし」
「ツッコんだことが視聴者にもわかりやすくするために、ピコピコハンマーじゃなくってハリセンを用意しておきますね。安全に注意しつつ、フルスイングしてください」
「わかりました。ちなみにどこをぶっ叩いた方がいいですかね?」
「う~ん……お尻がいいんじゃないですか? 叩くなら背面でしょうけど頭は流石に危ないし、背中は微妙だし、痛みに強くて盛り上がる部位といったらお尻かと……」
「了解です。まあ、愛鈴が相手なら別にセクハラだなんだと騒がれることもないでしょうから、安心して叩いてやりますよ」
「はい。そろそろ会議も大詰めです。収録を問題なく行うために、もう少しだけ頑張りましょう!」
――過去最長の企画会議を経て行われた収録は、演者、スタッフ双方の尽力もあって無事に終了した。
その後、こうして未公開映像を放送する際、ナレーションを担当することとなった私は、この会議の映像を見せられた時に思うのだ。
お前ら、私のことを何だと思ってるんだ……と。
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