大事だぞ、配慮!
「ほう? その心は?」
「単純に配慮が足りないと思うから。なんて言うか、成人向けイラストをSNSに上げる時って、もう少し気を遣うべきだと思うのよね」
とまあ、そんなふうにばっさりとイラストの投稿者を斬り捨てた天がそこで一度口を閉ざし、説明のために頭を悩ませる。
同期たちに自分の意見が伝わるよう、一生懸命に言葉を選んだ彼女は、自分なりの意見を発表していった。
「Vtuberってさ、
「わかりますよ。○○っていうキャラクターがムカつくっていうのと、○○ってVtuberがムカつくっていうのとではまるっきり印象が違いますからね。前者は声優さんにそこまでダメージはないですけど、後者の場合はその魂を担当してる人がボロクソ言われてることになるわけですから」
「そうそう、そうなのよ! 実際、そういう部分を気にしてるファンって、成人向けイラストだけじゃなくカップリングの部分も気を遣ってるのよね。例えばだけど、『花咲た〇ば』みたいな感じで一部を伏字にしたり、krmiみたいな隠語的タグを使ったりとか、そんな感じ。これが普通……っていうのはちょっとあれかもしれないけど、Vtuberっていう存在の特性を考えると、配慮はしておくに越したことはないわけよ」
「天ちゃんの言ってることもわかるさ~。そういう絵とかを投稿するためのサイトならまだしも、SNSって誰でも見れるし、意図せずそういう絵が回ってくることもある場所だからね~。できる限りの配慮は必要だって意見には賛成だよ~」
「うん。でも、今回スイちゃんが見つけたイラストを描いた人っていうのは、成人向けイラスト用のタグでもない、いわば公式が用意したタグを使ってそういう絵を投稿したわけでしょう? それってやっぱりマズいことだと私は思うのよね。誰でも見れるどころか、むしろ見せつけてやろうって考えてR18のイラストを投稿したわけだしさ……」
件のイラストを投稿したファンは、やや浅はかだったのではないかと述べる天。
確かにタグを設定したスイだけでなく、リア・アクエリアスのファンという不特定多数の人間が目にする状況を作った上であまり人前に出すべきではない作品を公開してしまったその人物の行動は、彼女が言う通り浅慮だったという他ないだろう。
だがしかし、だからといってその人物を徹底的に非難するのはどうかという意見もこの場で噴出してきた。
「確かにその人は失敗しちゃったかもしれませんけど、だからといってそれだけで沢山の人たちから叩かれるっていうのも可哀想だと思うんです。本人に悪気があったならまだしも、本当にうっかりミスだったかもしれませんし……」
「あ~……俺もぶっちゃけ、有栖さんの意見に賛成かな。本当に極一部だけどさ、炎上した人間に容赦しない奴っているじゃん? いつぞやのストーカーならまだしも、悪気があったかどうかもわからない奴がそういう連中に追い込みかけられる様ってのは、あんまり見てて気分がいいもんじゃあないんだよな……」
「そっか……ちょっと懐かしい話だけど、タケリタケ事件があったもんね。あれは確かに凹む事件だったさ~……」
「タケリタケ事件……? なんですか、それ……?」
「私も名前は聞いたことあるけど、詳しく内容は知らないな。その、腐ってた時期だったからさ」
有栖の意見に同意した零の言葉から彼の感情を読み取った沙織が苦々しいとある事件について触れる。
その出来事についてあまり詳しくない天とスイが困惑する中、苦笑した零が有栖と沙織と共に二人に事件の説明を行っていく。
「タケリタケ事件っていうのは、そうだなあ……この話をするとなると、そもそもタケリタケがなんなのかを説明しなきゃいけないんだけど――」
「タケリタケっていうのはキノコの一種で、男の人のおちんちんにそっくりな形をしてるやつのことだよ~。うん、それだけ」
「お、おちっ!?」
「ぴえっ!? きゃ、喜屋武さん! 流石にそのまま言うのはマズいんじゃ……!!」
「配信に乗せるわけじゃあないし、私たちも一応は高校生以上なんだからまあ平気よ。ここで時間を食うより、ズバッと言ってもらった方が助かるし」
タケリタケの説明に苦戦する零へと助け船を出した沙織の発言に一同が思い思いの反応を見せる中、気を取り直した零は改めて話題に出ている事件についての説明を開始した。
「この事件の発端は、あるSNSユーザーの悪ふざけだったんだ。俺がマシュマロ配信で話題に出したタケリタケがツボに嵌っちゃったみたいでさ、結果として俺は炎上しなかったけど、そいつがボコボコに叩かれてアカウントを消すまで追い込まれる羽目になったんだ」
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