じっくり炒めて、作っていこう!

『わかりました! ……やっぱり包丁持づど緊張すますね』


『あはは、芽衣ちゃんもそうでしたよ。でもあんまり難しいことはしなくていいんで、リラックスしていきましょう』


 そう言いながら、リアの前にあるまな板の上ににんにくを二欠け置く枢。

 緊張してはいるものの、前回の芽衣と比べればかなり落ち着いているリアに対し、彼は次の指示を飛ばす。


『まずはにんにくの両端を落としましょう。そうしたら、爪楊枝で上方向から芽の部分を押し出しちゃってください』


『はい! えっと、両端を落として、爪楊枝で……できた! できますた!』


 言われた通りににんにくの先端と底の部分を落とし、出てきた芽の部分を頭から爪楊枝で押してみれば、ぐにゅっとお尻から芽が押し出されてきた。

 焦げてしまいやすい部分の処理を終えた後は、本格的なカットの始まりだ。


『一つは薄くスライスして、もう一つはみじん切りにしてください。リア様、できますか?』


『だ、大丈夫です! やれます!』


『慌てずゆっくりでいいですからね。みじん切りも、練習だと思ってやってください』


 少しだけ難しい指示に緊張をぶり返させつつも、丁寧ににんにくをカットしていくリア。

 歌の才能が抜群な彼女は、リズミカルな包丁捌きでにんにくを薄くスライスし、みじん切りもやや不格好ながらこなしてみせる。


『上手じゃないですか! これは、俺が教えなくてもその気になれば色んな料理をマスターできそうですね!』


『どうも! えへへ、料理って楽すいね』


 褒めて伸ばす方針の枢と純粋なリアの相性は実に良く、講師からの褒め言葉に嬉しそうにはにかむ彼女は料理の楽しさに早くも心を掴まれているようだ。

 同じく、鷹の爪に関しても中の種を処理した後で輪切りにし、これにて全ての下準備が完了した。


『よしよし、それじゃあここからは火を使った工程に入ります。フライパンにた~っぷりオリーブオイルを入れてから、薄切りにした方のにんにくを入れてください』


『オリーブオイルをた~っぷりですね。た~っぷり』


『そうです。た~っぷりです!』


 多少のおどけも入れつつ、お互いに楽しく会話をしながら調理を進めていく二人。

 言われた通りにフライパンへと多めにオリーブオイルを注いだリアは、更に自分がカットしたスライスにんにくをその中に投入するとコンロに火を着ける。


『できたらフライパンを傾けて、オリーブオイルが一か所に溜まるようにしてください。にんにくもその中に全部浸らせるような感じで』


『はいっ! こった感ずだびょんか?』


『いいですね! 火の強さは弱火で、じっくり炒める感じでお願いします。俺はその間に、沸騰したお湯の中に塩とパスタを投入してっと……!』


 料理のメインとなる調理はリアに任せつつ、彼女と作業を分担する枢。

 食い入るようにフライパンを見つめている彼女の姿をまるで父親のような眼差しで見つめていた彼は、ふつふつとオリーブオイルが泡立ち始めた様子を見て、リアへと指示を出した。


『そのふつふつが合図です。それがいい感じににんにくの香りと味が出る状態なので、そうなったら残りのにんにくと鷹の爪も入れちゃってください』


『はい! ちょいや~っ!!』


 枢の指示を受けたリアが小皿に分けたみじん切りのにんにくと鷹の爪を泡立ち始めたオリーブオイルへと勢いよく投入する。

 そこから再び全ての食材をオリーブオイルに浸した状態で香りと味を出すためにじっくりと弱火で炒め始めた彼女へと、枢は笑顔でこう告げた。


『さあ、そろそろクライマックスですよ。もう少ししたら、一番楽しいタイミングがやってきますからね』


――――――――――


※くるるんはパスタの茹でとソース作りを同時に行っていますが、自信がない人はソースを作った後、ゆっくりとパスタを茹でても大丈夫です!

また、にんにくのスライスも薄切りorみじん切りどちらか片方でも構いませんので、お好みに合わせて変えてください!(薄切りの方が香りが強く、みじん切りの方が味が濃く出る気がするby枢)


――――――――――

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