いざ、最終決戦
『……っ!?』
スコープの中に映っている地面が、赤く染まっていく。
まるで潜水艦のソナーのように中央からじんわりと広がっていく赤い光を目にした零は、スナイパーライフルの構え状態を解除すると大声で叫んだ。
『
スタバトで使用できる必殺技の1つ、空襲爆撃。
その名の通り、一定範囲内に空中から爆撃を投下するという強力な必殺技は、多くのプレイヤーが集結している今の状況こそがベストな使いどころだろう。
最初に空襲爆撃を発動した者に釣られるようにして、1人、また1人と同じ必殺技を使用して戦場に混沌をもたらそうとするプレイヤーたち。
気が付けば、爆撃の範囲は今もプレイヤーたちが激しい戦闘を行っているフィールドのほぼ全域に広がっており、零の叫びと爆撃範囲を示す赤い光を目にした陽彩は、スキルであるワイヤーを用いての移動でそこから逃れながら有栖へと言う。
『芽衣ちゃん、建物の中に隠れてっ!』
『わわわ、わかった~っ!!』
陽彩からの指示を受けて弾かれるように立ち上がった有栖が、振り向いた先にあった建物を目指して走り出す。
彼女と同じく爆撃範囲から逃れるべく必死に走る者や、そうやって逃げる者の背中を撃ち抜く者、あるいはもはやこれまでと全てを諦めてがむしゃらに近くにいる相手を銃撃する者と、プレイヤーたちがそれぞれの反応を見せる中、有栖は開いていた扉の中にスライディングで飛び込むと、大慌てでその扉を閉めた。
(来る……っ!!)
最初の必殺技発動の兆候を目にしてから数秒、そろそろ爆撃が降り注いでくる頃だと熟練のスタバトプレイヤーとしてそのタイミングを理解している陽彩はダッシュとワイヤー射出を繰り返して高速で範囲から遠ざかっていた。
駆け、跳び、スイング移動で宙を舞って、体をかすめる弾丸にアーマーの耐久値を削られながらもぎりぎりのところで窪みを発見し、その中に転がり込む。
それから一瞬の間も空けずに鳴り響く、爆音。
次々と戦場に巨大な爆弾が降り注ぎ、逃げ遅れたプレイヤーたちが爆炎と煙に飲まれていく。
幸いにも最初から爆撃範囲外にいた零は、建物の屋上から有栖たちが戦っていたエリアへととんでもない数の空襲が降り注いでいる様を目にして、唖然とした表情を浮かべる。
大量に流れる撃破ログの中にチームメンバーの名前がないことを確認して安堵した彼は、とりあえず見える範囲にいた敵にスナイパーライフルの残弾全てを叩き込んでトドメを刺すと、狙撃ポイントから離れ、空襲に巻き込まれた有栖たちとの合流を果たすべく走り始めた。
『ライフルの弾を使い切りました! 今からそっちに向かいます!』
報告を行いつつ、一瞬だけ脚を止めた彼が再び駆けだすと共に跳躍し、屋上から1階まで繋がっている縦穴を飛び降りる。
今の爆撃で陽彩も有栖も少なからずダメージを受けただろう。急いで合流し、2人を援護してあげなくては。
そう考えながら、愛用のアサルトライフルであるコブラを携えて潜んでいた建物から飛び出した零は……そこで待ち受けていた人物の姿を目にして、動きを止めた。
自分と同じ武器を持ち、同じ索敵スキルを使用するキャラクターを操るその人物のIDを確認し、ぴりぴりとした緊張感を感じて立ち止まった零の耳に、陽彩からの通信が響く。
『ごめん、枢くん。できたら芽衣ちゃんの援護に向かってあげてほしい。ボク、すぐにはそっちに行けそうにないや』
『……すいません、俺もです』
呻くように呟きながら、即座に真横へダッシュ。
一拍遅れて、自分が立っていた場所へと無数の弾丸が撃ち込まれる様を目にした零は、近くにあった柱へと身を隠し、その陰から相手の様子を窺う。
『蛇さん、見~つけた……! さあ、お姉さんと遊びましょうか!!』
そんな彼へと容赦のない猛攻を仕掛ける敵プレイヤー……三三檸檬は、索敵役を担っていた者として、【Milky Way】に奇襲を仕掛けられた屈辱を晴らすかのようにアサルトライフルの弾を撃ち続ける。
軽快に、素早く、ダッシュ移動を行いながら零にダメージを与えるべく攻撃を繰り返す彼女に零が手を焼く中、別の場所でも決戦が繰り広げられようとしていた。
『……いい感じに
残りチーム、2つ。生存中のプレイヤー、6名。
参加者54名、18チームの頂点に立つプレイヤーたちが、今、決まろうとしている。
瓦礫の上から自分のことを見下ろすプレイヤーから発せられる途轍もないプレッシャーに息を飲んだ陽彩がゆっくりと戦いの構えを取り始める中、勝利への執念を滾らせる【Winning Girls】のリーダー、夕張ルピアが低く唸るような声で彼女を睨みつけながら叫んだ。
『さあ、
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