大混戦、最終局面
『ひゃああっ!? 敵が、こんなに沢山……!?』
『落ち着いて、芽衣ちゃん! 向こうも自分たちのチーム以外は敵なんだから、状況はみんな同じだよ! 目立たないようにしてボクと合流して、戦いの準備を整えよう!』
『そそそ、そうだね……ひゃあっ!?』
大混戦を極める中央エリア、生き残ったチームの面々が一気に雪崩れ込むと共に撃ち合いを始める中、有栖たちはルピアたちへの不意打ちを行ったためにバラバラで行動していた。
スナイパーとして遠方で待機している零はともかく、FPS初心者の自分が単独でいても格好の的になるだけだと……そう考えた有栖は急いで陽彩との合流を果たそうとするも、その前に別のプレイヤーが立ちはだかる。
「わっ! わっ、わわわっ! こ、こないでください~っ!!」
何とか距離を取ろうと発砲しながら後退する有栖であったが、敵プレイヤーも負けじと銃を撃ち返し、ヤケクソ気味にこちらへと突撃してきている。
どうやら彼以外のチームメンバーは既に倒されてしまったようで、最後まで1人で勝ち残ることは無理だと判断した彼は、少しでも活躍を見せてから散ろうと考えているようだ。
派手なダメージエフェクトが飛び散り、アーマーの耐久が少しずつ削れていく様を見て取った有栖は、敵の気迫に飲まれてがちがちに固くなっていた。
エイムが上手く合わせられず、思うようにキャラコントロールもできずに劣勢へと追い込まれていった彼女へと、敵プレイヤーが武器をショットガンに持ち替えると共に一気に接近していく。
『きゃっ……!?』
やられる……と、急接近してきた敵の姿に小さな悲鳴を上げて怯える有栖。
敵プレイヤーがそんな彼女へとショットガンの照準を合わせ、引き金を引こうとした瞬間、遠くから飛来した閃光が彼の頭を撃ち抜いた。
バスンッ、という音と共にヘッドショットをくらった相手がその場に倒れ、即座に戦利品が詰まった箱と化す。
絶体絶命のピンチに陥ったと思ったら、何が何だかわからない内にそれを脱していた有栖が驚きにきょろきょろと周囲を見回す中、耳に当てられたヘッドホンから安心感を与えてくれる声が聞こえてきた。
『芽衣ちゃん、大丈夫!? やられてないよね!?』
『く、枢くん……! 助けてくれて、ありがとぉ……!!』
零が自分の状況を把握していることから、彼が自分のことを見守ってくれていたことに気が付いた有栖は、同時に敵プレイヤーを見事に射貫いた今の攻撃も彼が放ったものであることを理解して彼に感謝を告げた。
危機を脱した有栖がアイテムを使ってアーマーの耐久値を回復させ始めたことを確認した零は、スコープ越しに彼女の周囲の状況を確認しつつ、リーダーである陽彩へと叫ぶようにして言う。
『魚住先輩、ワイヤー使って芽衣ちゃんのところまでショートカットとかできませんか!? 状況、思ってた倍くらいごちゃごちゃしてます!』
『そうしたい、けど……そんなことしたら目立って、ボクが集中砲火される可能性が高い! できる限り急いでるから、それまで枢くんが芽衣ちゃんのことを守ってあげて!』
『俺もそうしたいんですけどね、流石にそろそろライフルの弾が切れそうなんですよっ!!』
そう言いながら、安全を重視したルートで芽衣の下へと急ぐ陽彩に攻撃を仕掛けようとしたプレイヤーを狙撃する零。
カチャンッ、という小気味いい音を鳴らして薬莢を排出したスナイパーライフルの残弾が残り5発も残っていないことに苛立ちながら舌打ちした彼は、次々と流れる撃破報告の通知を確認しつつ、もう1発油断している敵の頭に背後から狙撃を叩き込む。
確実にプレイヤーたちは倒れ、その数を減らしている。だが、飛び交う弾丸の数はむしろどんどん増えていってるように思えてならない。
これがラストバトル……バトルロイヤルFPSの最終ラウンドの激しさかと、予想外にも程がある大混戦を少し離れた位置で見守りながら狙撃し続ける彼が、また新たな敵をスコープに捉えた時だった。
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