いざ、お買い物
「ふぁぁぁぁぁ……! こ、ここが、東京のスーパーマーケット……! やっぱ都会は違うなぁ……!」
「ははは、大袈裟っすよ。この程度の店なら、そこら辺にいくらでもありますって」
「ひえぇ……!? この大ぎさが、そごら中さ……!?」
それからおよそ1時間後、5人はケーキを予約した洋菓子店の近くにあるスーパーマーケットへとやって来ていた。
地元にはない大きさの店の光景に目を輝かせ、嬉しそうに周囲を見回すという無邪気な子供のようなムーブを見せるスイに対して零が突っ込みを入れれば、彼女は驚いているんだか恐れ戦いているんだかわからない反応を見せてから再びスーパーの中を見回し始める。
そんな2人の傍らでは、残りのメンバーがこんな会話をしていた。
「いや~、天ちゃんが免許持ってて助かったよ~! 運転してくれてありがとうね~!」
「あんま運転に慣れてないからビビりまくりだったわよ。
「私たちも免許は取れる年齢ですけど、色々あって取りに行くのはハードルが高くって……」
「まあ、社員寮住みじゃあ車も持てないしね。でも持っておくといざって時に役に立つことも確かだから、気が向いたら講習所行ってみれば?」
「零くんに取ってもらって、2人でドライブデート行くといいさ~! 車は今回みたいに事務所の使えばいいよ~!」
「ぴえっ!? か、からかわないでくださいよぉ……!」
沙織からの言葉に顔を真っ赤にした有栖がもじもじと指を絡ませながら言う。
なんともまあ、可愛らしいその姿にどうにも彼女を弄ってしまいたくなる気持ちを抱く2人であったが、そこにスイを落ち着かせた零が割って入ってきた。
「はいはい、なに話してたかわかんないっすけど、そろそろ目的のための行動に移りましょうね。ケーキの受け取りもあるし、配信の準備をしつつ調理も済ませとかなきゃいけないんすから」
「わかってるわよ。時間的なことも考えると、サクッと買い物を済ませておくべきね」
「調理用の道具は事務所にあるやつを使えばいいよね~。1番心配だったやつが置いてあって助かっちゃったよ~!」
「なんであれが置いてあったんでしょうね……?」
「なんか1期生の人たちが使って事務所に放置してたらしいよ。ご自由にお使いくださいって感じだったらしいから、遠慮なく使わせてもらおう」
「3階におもちゃ売り場がある! ちょっと見てきていいだか!?」
「三瓶さん? フリーダムにも程がありません?」
「人が多いから、はぐれないように固まって動きましょうね。おもちゃはまた今度見に来ましょうか」
「……なんか、夫婦とその娘の買い物を見てる気分になるのは私だけ?」
店内地図を見て興奮をぶり返させたスイを窘めつつ、買い物の準備を整えていく零と有栖。
男として荷物持ちを担当する彼に代わって、子供モードに突入しているスイを落ち着かせる役目を担っている有栖の姿を見た天は、休日に買い物にやって来た親子連れを見ているような気分になってボソッと呟きを漏らした。
そんな感じで買い物かごを手に、食品売り場の野菜が置いてあるスペースへと向かう3人を慌てて追いかけ始めた大人組は、スマートフォンに記録しておいた買い物メモを確認しつつ、必要なものを零が持つかごへと放り投げていく。
「え~っと……必要なのはキャベツと青ネギか。特にキャベツは実質メインみたいなところがあるから、多めに買っておく?」
「紅ショウガってこの野菜エリアに売ってるんですかね? それとも別の場所?」
「わー、長芋探してきます!」
「わわわっ! スイちゃん、1人で行ったら迷子になっちゃうよ~!?」
なんとも慌ただしい、ドタバタとしたやり取りを繰り広げる女性陣。
そんな彼女らのあれやこれやを見ながらちょっと楽しそうに笑う零は、誰にも聞こえない大きさの声で抱いた感想を呟いた。
「な~んか、家族で買い物に来たみたいだな……」
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