第2問(¥1000)
【同一ユーザーが全色のスーパーチャットを揃えて投稿する行為、なんと呼ばれる?(全員正解で1000円)】
『あー、はいはい! あれね? わかる、わかる!!』
『これ、私まだやってもらったことないわ。みんなはある?』
『私はないかな~? やろうとしてる人はいるのかもしれないけど、成功してるところは見たことないね~』
『私は……枢くんとコラボした時に何回かやってもらいましたね。その節はありがとうございます』
配信者と深い関わりを持つ投げ銭行為、『スーパーチャット』に関する問題を出された面々が頷きながらそれについて語る。
まあ、これも比較的低難度の問題であり、この程度ならば苦も無く正答出来ると思っていたのだが――
『ど、どうするべ……わー、わがらね!』
『げぇっ!? ま、マジでっ!?』
――ただ1人、その行為の名称がわからないリアが悲痛な叫びを上げた瞬間、状況が一変した。
最近まであまり生配信を積極的に行ってこなかった彼女は、あまりスパチャをはじめとした配信に関する情報に疎いようで、本気で思い悩んでいる。
おまけに、全員が正解しなければ賞金が獲得出来ない問題で、自分1人だけが答えをわかっていないという状況が彼女の感じている焦りを加速させていた。
『あわわわわ、どうするべ……? 全色のスパチャ揃えるって、なに……?』
『落ち着いて、リア様! 少し考えればわかるはずですから!』
『ほら、スパチャの色の数とか、何かに似てるでしょ?』
『スパチャの色も数もわからね~!! 困った~!』
『おおっと!? リア様、まさかの不正解か~っ!? ここで1000円を獲得出来ないとなると、後半厳しくなるっすよ~!』
『母さん! リア様にプレッシャーかけるの止めて! 本気で追い込まれてるから!!』
『うぅぅぅぅ……うぅぅぅぅぅ~ん……?』
この状況に加え、煽るようなしゃぼんの実況がリアの感じている重圧を強めていく。
刻一刻と迫るタイムリミットの中、リアは唸りを上げて悩み続けているも、全くといっていいほどに答えが見つけ出せずに困り果てている。
……その時、だった。
『ん? なんかコメントが加速しているような……?』
悩むリアから視線を外し、コメント欄を確認したしゃぼんが訝し気な呟きを漏らす。
どうせ彼女に意地悪をした自分に対するバッシングの声が大量に寄せられているんだろうなと思っていた彼女であったが、そこに送られていたあるものを目にすると、言葉を失ってしまった。
【¥100】『Pマンさん、から』
【¥200】『Pマンさん、から』
【¥500】『Pマンさん、から』
『げ、げえぇっ!? ま、まさか、こいつ……!?』
なんだか見覚えのある名前のリスナーから送られてくる、青、水色、緑のスーパーチャットに驚いて大声を出すしゃぼん。
彼女の反応に驚いた2期生たちがコメント欄を確認すれば、そこにはまだまだスパチャを投げるリスナーと彼を応援する大多数の人々のコメントがあるではないか。
【¥1000】『Pマンさん、から』
【¥2000】『Pマンさん、から』
【¥5000】『Pマンさん、から』
【頑張れニキ! リア様に届け!】
【気付いてくれ~っ! リア様~っ!】
【かなりギリギリだが……答えを教えてるわけじゃないからカンニングじゃないぞ!】
【コメント欄が見えないようになってたら不発だが、それでも構わないというPマンニキの漢気を感じ取って痺れた】
黄色、オレンジ、ピンク……と、額を増やしながら、色を変えながら送られてくるスーパーチャット。
出演者たちの注目と、視聴者たちからの応援を受けながら、Pマンは最後にコメントを付けながら最大金額のスパチャを送る。
【これが最後だ~っ! リア様、気付いてくれ~っ!¥10000】『Pマンさん、から』
『や、やりやがった! こいつ、身銭を切って実演しやがった!』
7つの色に彩られたコメントを送ったPマンの行動に画風が変わったしゃぼんが呻きに近い悲鳴を上げる。
まさかこんなことをしでかす奴がいるとは思いもしていなかった彼女は、ここでコメント欄を見えるようにしたままであることを後悔したが、既に遅かったようで……?
『7つの色が、並んで……? あっ!? あぁっ! わかった、わかりました!!』
『よ~しっ! よくやった、Pマン!! お前のお陰でリア様が助かったぞ!』
【枢の役に立てて嬉しい……! もう悔いはない……(尊死)】
【↑推しに1000円を取らせるために合計18800円出費した男】
【なんの迷いもなく突っ込むのかよ、流石は枢のところのヤベー奴だ……!!】
『ぐあああああっ!? しまったぁ! コメント欄を見えなくしておくべきだったっす~っ!!』
今更ながら初歩的なミスをしていたことに気が付いたしゃぼんが悲鳴を上げるも、もう遅い。
答えを直接教えているわけでもないし、むしろ多額のお金を支払ってまでギリギリのラインでヒントを与えてくれたPマンの漢気を無下にするわけにもいかないしゃぼんは、この問題を無効にすることも出来ずに悔しそうに顔を顰めていた。
『ええ、もう、しょうがないっす! 全員の答え、オープンっ!』
ヤケクソ気味にそう吼え、全員のフリップを公開するしゃぼん。
そこには5人揃って、【虹スパチャ】との回答が並んでおり、それを確認した彼女は更に悔しそうに正解の結果を彼らに告げた。
『正解っす! 7色全てのスパチャを連続して投げる行為の名前は、虹スパチャ。間に割り込まれたりする可能性があるから、なかなか成功しないんすよね~……』
『ほんにどうも、Pマンさん! お陰で助がった!』
『ありがとうございます。でも、あまり無理はしないでくださいね?』
『流石は有名な枢くんのリスナーだね~! 迷いがなくって面白かったよ~!』
『色んな意味でヤベー奴、Pマン……名前は覚えたわよ』
【2期生全員からお礼言われとるwwwPマンニキ、やったな!】
【ニキ出てこないな、どうした?】
【嬉しさのあまり死んでるんじゃねえの?】
Pマンの身を切った献身のお陰で正解を導き出せた2期生たちと、有名ファンである彼の推しに対する愛を目の当たりしたリスナーたちが大いに盛り上がる中、1人だけ悔しそうにしているしゃぼんが気を取り直してから彼らに向けて大声で言った。
『はい! 次からはこういったヒントやカンニングが出来ないようにコメント欄を非表示にするっす! 2度目はないっすから、そこんところを肝に銘じておくように!』
【Pマンニキはしゃぼんママには認められないみたいだな……くるPのCPは無理か】
【くるめいがある時点で無理に決まってんだルォォ!?】
【たらくる勢のわし、異議を申し立てます】
『CP厨論議はそこまで! ちくしょう、でもこれは自分のミスっすから、諦めるしかないっす……』
なんだか別の意味で騒がしくなってきたコメント欄に注意しつつ、自分自身を納得させるかのように呟いたしゃぼんが大きく深呼吸を行う。
まだ2問しか出題していないのになんだかどっと疲れたなと、息子が普段味わっている疲労感を身をもって体験した彼女は、雰囲気が少しずつ落ち着きを取り戻し始めたことを確かめてから次の問題へと話を移していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます