第3問(¥1000)
『え~、続いての問題は、1人が1文字ずつ答えを書いて解答してもらうっす! ジャンルは我々とも関わりが深い星座の問題っすよ~!』
『うわ、またプレッシャーがデカい問題がきたよ。でもまあ、答えが5文字だってわかってる分、多少は難易度は下がるか』
1人が1文字、合計5文字の答えを協力して導き出せという内容のクイズに苦笑を浮かべながらも枢が感想を呟く。
誰1人として間違うことは出来ないというプレッシャーを2期生たちが感じる中、しゃぼんが3問目となる問題を読み上げた。
【夏の大三角形を形成する星の1つである、デネブ。この星は、何座に含まれる星?(ひらがなで解答。正解で1000円)】
『あーあーあー! はいはいはい! これはわかる! 余裕よ、余裕!』
『俺もわかるっすね。ただ金額にしてはちょっと難しくないっすか?』
問題を聞いて、即座に答えを知っていた枢と愛鈴が頷きながら答えをフリップに書く。
だがしかし、残りの3名は出された問題の答えを導き出せず、ペンを持った手を動かせずにいた。
『何座ぁ? 夏の大三角形を作ってる星なら全部わかるけど、何座かなんてわかんないよ~!』
『こ、これ、○○座の座の部分は答えに入ってないんですよね? 入ってたら助かったのに……』
『な、夏の大三角形ってなんだ……?』
『おおっとぉ!? 2期生チーム、この問題がわからない子が3人もいるみたいっすね~! これは困ったな~!!』
『……母さん、なんか嬉しそうっすね。見てて腹立つんですけど』
『マイサンっ!? 楽しそうにしてるママを見て、もっと優しい気持ちになってもらえないっすか!?』
意地悪く笑うしゃぼんに辛辣な言葉を投げかけた枢が、泣き言をいう彼女を放置して同期たちの様子を伺っていく。
そうすれば、全く答えに見当が付かず頭を悩ませている3人に対して、ルール違反にならない程度にヒントを出す愛鈴の声が聞こえてきた。
『落ち着きなさい! ほら、有名な星なんだから、なんかちょっと聞いたことくらいはあるでしょ!?』
『夏の大三角形を作ってる星がアルタイル、ベガ、デネブなのはわかってるんだよ~! でも、それが何座かなんて普通は知らないって~!』
『むしろなんで枢くんと愛鈴さんは知ってるんですか……?』
『私はよく聴いてた歌の歌詞にあったから調べて知ったのよ。何年か前に流行ったでしょ?』
『俺は子供の頃に見てたヒーロー番組のお陰かな……男子向けだったから、芽衣ちゃんとかは知らなくて当然っちゃ当然だと思うよ』
『もっと歌詞の内容さ興味持って、気になったごど調べる癖作っておげばえがったなぁ……』
最早手遅れだが、確かにそんな星の名前を聞いたことがあったなと思い返したリアがしみじみと呟く。
既に諦めムードに突入している彼女に反して、たらばと芽衣はなんとかして答えを導き出そうと躍起になっているようだった。
『ヒント! ヒントちょうだい! その3つで、セットで1つになるものだったりする!?』
『え~、どうだったかな……? 枢、あんた覚えてる?』
『ならない。むしろ残りの2つが何の星座に含まれてる星か聞いたら混乱すると思う』
『て、手掛かり無し、ってコトぉ!? ぜ、全然わからないよぉ……』
どこかで聞いたような台詞を口走りながら、一切のヒントが無い状況に絶望する芽衣。
そんな彼女の反応をよそに腕を組んで何事かを考えていたたらばは、ぽんと手を打つと堂々とこう言ってのけた。
『よし! もう最終手段さ~! 適当に文字を書いて、神様に祈る! これっきゃない!!』
『……当でずっぽう、ってごどだがね?』
『いや、もうそれでいいわよ! なにも書かなかったら間違いなく不正解なんだし、奇跡が起きるかもしれないじゃない!』
『5文字、5文字の星座っぽいもの……考えよう、考えよう……!』
『さあ、そろそろタイムリミットっすよ~? 早く答えを書いた書いた~っ!』
あまりにもあれな最終手段ではあるが、愛鈴の言う通りなにも書かずにいるよりかは可能性はある。
答えがわからない3人は、取り合えず思い付いた文字をフリップに書き込むだけ書き込んで……そこで、制限時間がやって来てしまった。
『タイムアーップ! ということで、答えを見てみましょう! 一斉に、オープンっ!!』
どどんっ、とフリップを公開し、2期生たちが書いた答えをリスナーたちと一緒に確認するしゃぼん。
そこに書かれていた文字を1文字ずつ読み上げていく彼女の声は、実に楽しそうなものであった。
『お、し、ち、ょ、い……ということで、デネブが何座の星かという問題への2期生の答えは、おしちょい座ということになりました! 当然ながら、不正解で~す!』
『ぬああああっ! やっぱダメだったか~っ!!』
『ちなみに正解は白鳥座っすよ! 愛鈴ちゃんと枢坊やはしっかり正解してて偉いっすね~!』
そう、正解である文字を書いた2人を褒め称えたしゃぼんは、ここからが本番だとばかりに思いっきり的外れな解答を書いた3人へと弄り半分の質問を投げかけ、笑いを取りにいく。
『で? 不正解3人組は答えがなんだと思ったんすかね~?』
『わーは何も思い付がねがったんだばって、おひつず座どがおうす座みだいに、お、って書いでおげば意外ど当だるがなって……』
『5文字の星座から考えて、確からしんばん座ってあったよな……って思ったからワンチャンを賭けてみたんだけど、やっぱダメだったね~』
『お~! しっかり考えた上で勝負に出たんすね! 芽衣ちゃんはどうして答えをいにしたんすか?』
『わ、私も花咲さんと同じで、文字数から考えたんですけど、その――』
少しドギマギとしながら、もごもごとした口調で芽衣が答えを導き出した経緯を語り始める。
息継ぎの間があって、そこから再び言葉を紡いだ彼女が口にしたのは、予想外の方向からリスナーたちの心臓を止めにかかる一言であった。
『――思い付いた5文字の星座が、その……へびつかい座しかなかったので……』
『……あ~。ああ、あぁ……! なるほど、なるほどねぇ……』
『……え? なに、この空気? まさかこれで炎上とかないよな!?』
【ッスーー……やっぱ芽衣ちゃんは枢が大好きなんだね……(心停止)】
【唐突なくるめいは心臓に悪いからやめてほしいがもっと欲しい】
【大丈夫、炎上はしない。ただ俺たちが召されるだけだ】
発言の1つ1つから尊さを感じてしまうリスナーたちがそれぞれの反応を見せる中、息子とその嫁の様子に満足したように頷いたしゃぼんは、満ち足りた表情を浮かべながら芽衣へと言った。
『芽衣ちゃん、後でお小遣いあげるっすから、美味しいものでも食べるっすよ~! 遠慮しないで! 義理のママからの気持ちってことで、自分のポケットマネーから出しますんで!』
『おいやめろ! なに暴走してんだ!? 芽衣ちゃんの発言では燃えないかもしれないけど、あんたの発言は確実に俺を燃やすんだよ!!』
正答出来ずに賞金が獲得出来なかった悲しみよりも、しゃぼんの下手な発言で自分が燃えることへの不安を感じている枢の叫びが響く。
普段通りの母娘のドタバタを見守るリスナーたちは、てぇてぇとお笑いのコンビネーションを思う存分楽しみ、その余韻に浸るのであった。
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