ようやく終わるよ、クソマロ配信
『いや~、いい雰囲気だな~! このまま配信を締めにしたいくらいだ』
心温まる会話と、リアの感謝の言葉に感激した枢がしみじみとそう呟く。
その声には、ある種の悲しみの感情が浮かんでおり、この後に自身を待ち受ける運命を予期しているようだった。
『あ、枢くん、回復終わった~? じゃあ、もう1回枢くん宛のマシュマロを紹介していくね~!』
『ああ、知ってた。俺はこうなる運命なんだよな……』
その予想は正しく、クソマロ再びといった雰囲気で休憩を終えた自分に向けて濃厚なマシュマロが投げつけられることを理解した枢は、大きな溜息を吐くと共に、リスナーたちの期待に応えるべく、同期が投げつけてくるクソマロを次々と処理していく。
『いつキュアくるるんになるの?』
『一生ならねえよ! 2期レンジャーの解散から展開を繋げるんじゃねえ!』
『くるるんに質問です。くるめい分を限界を突破して摂取するにはどうすればいいですか?』
『知るか。風船に空気と一緒に溜め込んでおけ』
『枢、俺は構わないんだ。俺は枢の一番じゃなくても大丈夫。だけど、たまには俺のことも見てくれよな』
『お前誰だよ!? 俺のなんなんだよ!? 見ようと思ってもお前がどこのどいつかすら俺にはわからねえんだよ!』
『く〜る〜る〜の〜う〜た〜が〜き〜こ〜え〜て〜く〜る〜よ〜小火っ 小火っ 小火 小火 小火 小火 小火っ 小火っ 小火〜』
『今回も来たよ、こういうネタ……! 歌わねえからな? 俺は絶対、歌わねえからな!!』
『くるるんとPマンがキャッキャウフフしてるのを夢に見ちまって夜しか眠れねぇ。くるるん……嘘だよな?嘘だと言ってくれよぉ!!』
『そんなことを思いつくお前の思考回路が嘘だと思いたいわ。病院に行ってこい』
『Pマンとヘビのホワイトソース和えタケリタケを添えて』
『もういい加減タケリタケネタは止めてくれねえか? っていうかお前、マジでその内特定してインターネットセクハラで訴えてやるからな!』
『うわ~! 今日もキレッキレだね~! 流石は枢くんさ~!』
『いつかは愛鈴さんもあんな風になるんだかねぇ?』
『え、怖っ……! マジで怖いわ……!』
『本当に大変なんだね、枢くん……』
一問一答の要領で素早くクソマロを両断し、テンポよく話を進めていく枢へと感嘆と称賛の言葉を贈った同期たちは、しきりに画面の前で頷いていた。
ぜぇはぁと息を荒げながら、そんな彼女たちへと視線を向けた枢は、呼吸を整えつつ提案もとい懇願をしてみせる。
『あの……そろそろもう、本当に終わりません? 十分、マロは消費したでしょう? 流石に限界が近いんで、終わりたいんすけど……』
『う~ん、まあ、そうだね! 目ぼしいマシュマロは全部食べたし、これだけやればリスナーのみんなも満足してくれたでしょ!』
【お疲れ、くるるん。今日もクソマロ処理の手際が素晴らしかったぞ】
【5人でマロ配信してもクソマロが集中するくるるんのキャラクター性よ……】
【次からは愛鈴にも送られてくるだろうから多少は楽になるぞ! やったね!】
【クソマロの量が2倍になって一層大変になるだけかもしれんがな】
『うんうん、満足してくれてるみたいだし、時間も丁度いいし……じゃあ、オチってことでこのマロに答えてもらって終わりにしよっか!』
各個人への質問と、全員の性格を掘り下げる質問と、期待されていた枢のクソマロ処理という大体の工程を消費したことと、それを観たリスナーたちが満足してくれていることを確認したたらばが最後のマシュマロを提出する。
これがラストだ……と、自分を奮い立たせた枢は、疲弊した精神を奮い立たせると、最後のマシュマロへの返答をすべくそれを読み上げるたらばの声に意識を集中させていく。
そして、その不思議な内容を耳にして、怪訝な表情を浮かべながら
『なあくるるん……俺、最近自分は本の中の住人で,唯の作られた存在なんじゃないかって考えることがあるんだ。俺たちのセリフも、出来事も,全てはこの世界の作者によって決められたシナリオを辿ってるだけなんじゃないかって。まあ勿論そんなのは俺も考えすぎだと思ってる。だけど、どうしてもその考えが頭を離れないんだ。なあくるるん。俺はどうしたらいいかな?』
『え、なにそれ、こわっ。てかどうしてそんなことを考えるように――』
―――――――
―――――
―――
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【このストリーミングは終了しました。アーカイブが公開されるまで、少々お待ちください】
【明日は花咲たらばのチャンネルにて、外部Vtuberと初コラボ&企業案件配信! ASMRで脳を溶かされる覚悟の準備をしておいてください!】
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