2期生ウィーク第5弾!心を掴め!ASMR対決!!

企業案件兼、外部コラボ



『配信始めました~! そちらは大丈夫ですか?』


『大丈夫で~す!!』


 明るい女性たちの確認の声が聞こえてくると共に、彼女らの立ち絵が配信画面に表示された。

 合計8つ。左右に4つずつある小さな四角いワイプにそれぞれの立ち絵を表示させている女性陣を代表して、この配信を放送しているチャンネル主である2人の女性が挨拶を行っていく。


『はいた~い! 皆さんどうもこんばんわ~! 【CRE8】2期生花咲たらばで~す!』


『こんぶる~む~! Vtuberグループ【SEASON】所属、春担当! 春日野さくらだよ~!!』


 そう、挨拶をしたのは2期生のリーダー格であるたらばと、桜色の長髪が特徴的な学生服姿の女性だ。

 普段よりも多くのリスナーたちが推したちのコラボに歓喜する中、2人はこの配信の概要について彼らに説明を行っていく。


『この配信は、「未来を少しユニークに」のキャッチコピーでお馴染みの【ロクヨンTEC】の提供で行っております! 我々【SEASON】の4人と【CRE8】2期生5名、合わせて9人のVtuberたちが初の企業案件に臨んでいるわけですね!』


『私たちに至っては外部コラボも殆ど初めてって感じだから、かなり緊張しちゃってるよ~! でも、お仕事はしっかりこなさせてもらうさ~!』


【頑張れ! 応援してる!!】

【遂に企業案件をする時が来たか……! 2期生も【SEASON】も有名になったもんだな】

【そういうの抜きにして取り合えず楽しませてもらう!】


『応援のコメントありがとうね~! じゃあまず、今回取り扱う機材について、紹介させてもらいま~す!』


 そう言って、画面を切り替えるたらば。

 視聴者たちの前には【ロクヨンTEC】が製作した2種類の機材が表示され、彼女たちはそれについての説明を行う。


『まずは私、春日野さくらより、バイノーラルマイクの紹介をさせていただきます。こちら、通称『バイカム』と呼ばれている【ロクヨンTEC】さんが既に販売しているバイノーラルマイクを更に改良した、『バイカムⅡ』と呼称されている製品です! お値段、性能、利便性の3拍子が揃った『バイカム』は私も愛用しているんですが、それが更にパワーアップしており、今回はASMR配信を行うことでこの『バイカムⅡ』の性能を皆さんにも身を以て……いえ、耳を以て体験してもらおうかなと思っております!』


【うおおおおおおっ!! 聞いてはいたけどやっぱ興奮する!!】

【2期生はこれまでASMR配信してないからこれも初めてか! 楽しみ!】

【枢のASMRボイスは聞けますか?】


 さくらが紹介しているのは、普通のマイクとは大きく形が違う、アルファベットのTの形に近い特別なマイクだ。

 左右に人間の耳を模した特別な形状のマイクが設置されており、ここに向けて声を発すると、聞く者にはまるで本当に傍で囁かれているような風に聞こえるという代物である。


 こういったバイノーラルマイクを使って行う配信はASMR配信と呼ばれており、Vtuberが行う配信企画の中でも根強いファンを抱える人気企画となっている。

 推しに耳元で囁かれたり、息を吹きかけられたり……という疑似体験が出来るのだから、その人気も当然だろう。


 まあ、ASMRボイスを聞いていると妙な気恥ずかしさがあるし、人に言うのも躊躇われることなのだが、それは今は置いておくことにする。


 1つ目の製品の紹介を順当に終えたさくらからバトンを受け取ったたらばは、リスナーたちへともう1つの製品についての解説を行っていった。


『そして、こちら! みんなの健康を守るバイタルチェック機能持ちのスマートウォッチ『Contrast』!! ゲーム中の心拍数とストレス値を計測して画面に表示出来る機能を有しており、配信者だけでなくゲーマーの皆さんにもおすすめ出来る製品となっております! 皆さんもお気付きでしょうが、既にこのスマートウォッチを装着してもらってる人の心拍数とストレス値が画面中央に表示されてるね~!』


 たらばの言う通り、中央の最も目立つ位置には2つの数字が並んでおり、どちらも中々に高い数値を記録している。

 この数値から読み取るに、スマートウォッチを装着している人間はかなり緊張しているのだろうな……とリスナーたちが予想する中、2人がこの配信の肝となる企画を解説し始めた。


『今回の配信では、この2つの機材を同時に使った対決企画をさせていただきます! 【SEASON】チームと【CRE8】チームに分かれ、シチュエーションに合った演技をこの『バイカムⅡ』に向けて行ってもらい、『Contrast』を装着した審査員の心拍数とストレス値を確認して、より相手をドキドキさせた方が勝ち! というシンプルな企画ですね!』


『気になる審査員は~……もちろんこの人! この中で唯一の男の子、蛇道枢くんさ~!』


 たらばの紹介と共に、心拍数とストレス値の下に枢の立ち絵が表示された。

 既にげんなりとした表情を浮かべている彼は、嫌な予感を感じまくりながら戦々恐々とした声で言う。


『お家に帰してください。僕は無実です……』

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