方言女子の、あれやこれや





『そういえばだけど、リアちゃん宛のマシュマロも結構来てたよ~!』


『わ、私のところにも、沢山届いてました!』


『わ~……!! わー宛のマシュマロだが? どった内容だったんだがね……!?』


 枢と愛鈴に送られてきた臭い立つマシュマロを見ても臆さないどころか、むしろ自分宛のマシュマロが届いていると知って大喜びするリア。

 この状況を楽しめるほどに神経が図太いのか、あるいは純粋であるが故に何も考えていないのか……おそらくは後者であろうなと考えるクソマロ処理班2名を放置して、残りの3名が彼女宛のマシュマロを披露してみせた。


『リア様、俺北海道民なんだけどさ、ちょっと訛り方似てると思わねぇが?』


『リア様の方言たげいど思います! 普段どのギャップがたまらん、、、、今後も応援すちゅ!! 個性豊がな兄っちゃ姉っちゃたぢに負げずにけっぱってけ』


『リア様大好ぎ! 方言もたまらん! 大変なごどもあるど思うげどけっぱってけ! こぃがらもずっぱど応援すてら!』


『……なんだろう。私のところに届いたマシュマロと比べて、純粋な応援が多くない?』


『人徳の差ってやつだな。……でも、よかったっすね。方言、受け入れてもらえてるみたいですよ』


『そうですね。素出すの、わんつかちょっとだげおっかなぐであったんで……こうすて沢山のふとからいい、ってしゃべってもらえで、ほっとすてら』


 おとぎ話に登場するお姫様のような外見から繰り出される津軽弁というリアの強烈なインパクトは、彼女の不安に反してファンたちに受け入れられているようだ。

 過去のトラウマを払拭するとまではいかないが、訛りのある自分も素敵だと言ってくれるファンたちに感謝する中、ふと自分の下にはこんなマシュマロも届いていたなと気が付いたリアは、同期たちへとそのマロを提出してみせた。


『そういえばなんですけど……わーのところには、こんなマシュマロが送られてましたね……』


『リア様へ 私は方言女子好きですよ! でも、無口キャラも好きです! 時々焦って方言が出る無口キャラならもっと良き!』


『たまには無口キャラで配信もありだと思います。あれはあれでいいキャラだったし。感情が高ぶると早口とか素敵やん?』


『あ~、なるほどね……方言キャラもいいけど、無口キャラも好きだったって人もいるわけか』


『難しいところだよね~。確かにミステリアスなクールキャラの時だったリアちゃんも可愛かったしな~!』


『リア様的にはどうなんですか? 今と昔、どっちの自分が好きなんです?』


『う、う~ん……難しい、ですね……』


 無口キャラも好きだったという意見のマシュマロを見たせいか、方言を封印した言葉少なな状態になったリアが芽衣からの質問に唸りを上げて悩む。

 ややあって、彼女が語り出したのは、嘘偽りない彼女自身の本心であった。


『今の状態は、楽と言えば楽です。同期もファンも、皆さんが私の素を受け入れてくれてます、ので。ただ、いつかは標準語を普通に話せるようになりたいから、そっちの練習もしたいな……とは思ってます、ね』


『やっぱそうだよね。津軽弁は可愛いけど、ライブとかガンガンやっていきたいっていうのなら、標準語は話せた方がいいもんね』


『同じ方言キャラとして、花咲さんはどう思いますか?』


『う~ん、私の場合はな~……今使ってる沖縄方言も、ある程度崩して聞く人に意味が伝わりやすくしてるエセ琉球弁みたいなものだからね~。1か10かで考えずに、その中間あたりの手段を模索するのもありなんじゃないかな~?』


【配信者としてやっていくなら大きな武器だけど、歌手としての活動にはネックになるのか……難しいな……】

【俺はリア様の方言好きだけど、言ってる意味が伝わらない時もあるっちゃあるから、その辺は確かに問題だね】

【たらばみたいにある程度崩してキャラと融合出来たらベストなんじゃないかな?】


『……ありがとう、ございます。私のつまらない相談に、真剣に乗ってくれて……』


 自分の現在と、これからに関しての悩みについて、タレント、リスナーという立場を問わずに真剣に考えを深めていく人々に再びリアが感謝の言葉を告げる。

 そして、すぐに答えが出るようなものではないこの問題に対しての総括を述べるようにして、枢が口を開いた。


『リア様的には少しずつ標準語に慣れていきたいっていう気持ちがあるのなら、配信を通じて身に付けていけばいいんじゃないですかね? 俺たちとか、リスナーのみんなから標準語を教わる企画とかをやってもいいわけですし、協力は惜しみませんよ』


『マイク必要だけど、音声認識で演技するゲームとかも出てるし、それ使えば実践で標準語を学べていいんじゃない? 遊びながらだから楽しくやれるしさ』


『私たちも演技の勉強になりますし、WIN-WINでいいですね』


『そうやって標準語を勉強しつつ、津軽弁と上手く組み合わせる折り合い地点みたいなものを見つけられればいいんじゃないかな~?』


『そう、ですね……! 今のわーには、頼れる人たちがこんなにいるんだもんな……!』


 かつて自身の訛りを隠していた時とは違い、今はそのコンプレックスを露にした上で頼りにすることが出来る仲間がこんなにもいる。

 1人では解決出来ないことも、友達と協力すればきっと良い形での解決を迎えることが出来ると、そのことに気が付いたリアは、満面の笑みを浮かべながら、三度みたび自分のことを心から想ってくれる人々に感謝の気持ちを伝えた。


『ほんにどうも。みんな、大好ぎだ』

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