配信が終わっても、仲良し



 ……その後のゲームは、勝負とは名ばかりの虐殺であった。


 助けられてからものの30秒と経たずに枢に捕獲された愛鈴は、「ぢぐじょお゛お゛お゛っっ!」という言葉の全てに濁点をつけた断末魔の悲鳴を上げながら地獄に堕とされ、生き残りの2人がおろおろしている間にたらばもゲームオーバーになり、怯えてロッカー内に隠れたリアも捕まってしまい、最終的に1人残された芽衣も今、枢に抱えられて牢屋に向かっている真っ最中だ。


『わ~い。枢くんとお出掛けだ~い。たのしいな~!』


【芽衣ちゃん、心が……!】

【ここまでてぇてぇを感じないデートを見るのは初めてだ】

【どちらかといえばデートを終えてお持ち帰りされてるところじゃないか?】


 終わってみれば発電機の修理数は0。当然ながら脱出者もなしという、1つ前の試合とは打って変わっての枢の大勝利。

 先にゲームから除外されたメンバーも悔しそうに試合結果を噛み締めながら、それぞれの感想を漏らす。


『うわ、すっごい悔しいんだけど! っていうか、あんた私のことを集中的に狙い過ぎてない!?』


『1番弱い奴から狙って落とすのは戦いの定石だろ?』


『誰が1番弱いってぇ!? でも、それで全滅まで持ってかれてるからなにも言えねえ……!』


『わーがもう少し上手く出来たら、試合結果も変わってたと思うけどなぁ……』


『いや~、ちょっと私が迂闊だったさ~。スモーカーの能力を理解した今なら同じ轍は踏まないって言えるけど、それにしたって枢くんの立ち回りが上手すぎたよ~』


『お褒めに預かり光栄です、っと。さ、これで試合終了な』


『うわ~い。みんなのところに行くんだ~。こわくないよ~!』


【芽衣ちゃん、幼児退行しとるやんけ……可愛い】

【ロリ芽衣かあ……アリだな】

【ロリと化した芽衣ちゃんのお世話をくるるんがする配信はまだですか?】


 他にランナーがいない状態で捕獲された芽衣が地獄に引き摺り込まれた後に表示されたリザルト画面を確認し、満足気に笑う枢。

 誰も何も文句を言わせない完全勝利で最終試合を終えた彼は、はっはと大口を開けて笑いながらそのことを宣言した。


『完! 全! 勝利!! いや~! まあ、俺が本気を出せばこのくらい朝飯前かな~!?』


『は、腹立つ~!! え? ちょ、今日これで終わり!? このままだと悔しくて眠れないんだけど!!』


『はいはい。もう時間が時間だから終わりにするよ。延長戦はなしだからね』


『5戦もしましたしね。3時間くらい配信してたんだ……』


『なげ配信になったばって、皆さんとゲーム出来で楽すくてあっただ! 付ぎ合ってくださった皆さんも、ほんにどうも!』


【いやいや、こっちも楽しかったよ! 時間が一瞬で過ぎてった!】

【次はまたゲームに慣れてから、パークとかアイテム解禁してプレイしてほしい!】

【女の子たちのくるるんへのリベンジ、待ってます!】


『改めまして、ここまで配信を観てくれてありがとうな! 明日は芽衣ちゃんのチャンネルで配信があるから、そっちも楽しみにしててくれよ!』


『はい。それじゃあ、今日の配信はここまでとさせていただきます。また明日、お会いしましょう! ばいば~い!』


 そう、簡単な別れの挨拶をしてから、各々のチャンネルで配信を切る2期生たち。

 そんな中、最も枠を落とすのが遅かった羊坂芽衣のチャンネルには、配信を終えた5人の会話が入っていた。


『ねえ、あと1戦だけやらない? マジで、このまま終わるの悔し過ぎるでしょ?』


『はははっ! どんだけ悔しがってんだよ? ま、俺は別に構わないけど……』


『わーも、まだもうわんつかだげ皆さんと遊びで!』


『私もあと1回だけなら付き合えるよ!』


『あ、ちょ、ちょっと待ってください。まだ配信落とせてないんで、それが終わったらロビーに参加しますね』


【Cパートやん。芽衣ちゃんのチャンネルで観ててよかった】

【裏でも仲良しな2期生のやり取りを観れて嬉しい】

【あんまり夜更かしするなよ~!】


 表でも裏でもあまり変わらない仲の良さを見せつけながら、配信後も愛鈴が持ちかけた泣きの1戦に臨む2期生たち。

 その試合がどうなったかはリスナーたちの知るところではないが、5人が楽しくゲームをプレイしたことは間違いないだろう。


 翌日にはこの場面の切り抜きも上がっており、改めて2期生の関係の良好さをファンたちの間に知らしめる結果となったのであった。






【明日は羊坂芽衣のチャンネルにて、ドッキリ&検証の企画配信を実施! 蛇道枢が同期たちの中で1番好きなのは誰なのか? その結果が明らかになる!?】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る