2期生ウィーク第2弾!復讐鬼、蛇道枢の逆襲!!(短編)
開始前の、茶番
『あっはっはっはっは! あ~っはっはっはっは!』
『ふううううっ! いえーーいっ!!』
ジュージューという肉が焼ける音を掻き消すような、陽気な声が響く。
片方は楽しそうに笑うたらばの声、もう片方はそれに追従するような愛鈴の声だ。(陽キャのノリに無理についていこうとしている陰キャとは絶対に言ってはいけない)
夜のキャンプ場を背景にバーベキューと洒落込んでいる雰囲気の彼女たちの横では、リアが音楽に合わせて体を左右に揺らしている。
そんな風に始まった配信の中で、3人は早速茶番とでも呼ぶべきやり取りを行っていった。
『いや~、助かりましたよ、裁判長! まさか別の罪状で枢をブタ箱にぶち込むなんて、冴えてるぅ!』
『はっはっは~! 枢くんにはお姉さんへのセクハラも含めた余罪がわんさかあるからね~! 1つの罪で無罪になっても、また別の罪で裁いちゃえばいいさ~!』
『よっ! 流石ぁ! 無罪判決を勝ち取ったと思ったら別の罪で有罪になった時のあいつの顔、笑えましたねえ!』
『なんでも言うことを聞いてあげるとは言ったけど、なんでも許してあげるとは言ってないからね~! ズルい大人のやり方の勝利さ~!』
昨日の裁判配信に合わせた内容の会話を繰り広げながら、その後に後ろ暗いやり取りがあったことを示唆する2人。
どうやら、折角最終兵器を使って無罪を勝ち取った枢であったが、また別の罪で有罪判決を受けて服役する羽目になてしまったようだ。
それは本当の罪なのか、あるいは昨日と同様にでっち上げの罪なのかはわからないが……結果として、枢は現在収監中ということになるのだろう。
当初の予定通り、彼をブタ箱にぶち込めた(台本を書き直したともいう)ことに満足した愛鈴は、裁判長であったたらばの機嫌を取るという見事な三下ムーブを披露している。
ちなみにまだリアは音楽に合わせて体を揺らしている。ついでに、陽キャ感を出すためなのかサングラスまで装着し始めた。
『ささ! 今日はあの男をとっちめることが出来た祝いの席です! 女4人で楽しくキャンプでもして、パーッと騒いじゃいましょう! ここ、貸し切っといたんで!』
『悪いね~! でも、夏の夜のキャンプ場って、パニック映画の舞台になりそうな場所じゃない? 殺人鬼とか出そうだよ~!』
『あっはっはっは! そんなの映画の中だけの話ですよ! そ~んな、偶然ここに私たちに恨みを持つ犯罪者がやって来るわけないじゃないですか~!』
『そだね~! あれ、そういえば芽衣ちゃんの姿が見えないね~。どこ行っちゃったのかな~?』
着々とフラグを構築しつつ、茶番を進めていくたらばと愛鈴。
その横で音楽に合わせて体を揺らすリアは、立ち絵を宙に浮かせて回転させるというゲッ〇ン風味の動きを披露して、無言ながらも誰よりも騒がしくこの状況を楽しんでいる。
そんな彼女の動きに2人が一切触れないというシュールな状況にリスナーたちが笑いを噛み殺す中、展開を先に進めるための要員である芽衣が息を切らせながら同期たちの下へと駆け寄ってきた。
『みみみ、皆さ~ん! 大変です~っ!!』
『どうしたの~? おっきい虫でもいた~?』
『違います! そうじゃないんです! こ、これっ! 聞いてくださいっ!』
そう言いながら芽衣が差し出したのは、フリー素材として配布されているラジオの絵だった。
ガガガ、ザザザ、とノイズ混じりの音声を響かせるそれを芽衣の手から受け取った愛鈴が耳を澄ませば、CV獅子堂マコトによる臨時ニュースが聞こえてきた。
『臨時ニュースをお伝えします。先日、公判にて有罪判決を受けた蛇道枢が護送中の車から脱走したとの報告が入りました。警察は脱走した蛇道枢を見失っており、現在も逃走を許している状況です。付近にお住いの住民の皆さまは、戸締りをしっかりして夜をお過ごしください』
『く、枢が脱走!? そ、そんな、馬鹿な……!?』
ラジオから聞こえたニュースに驚き、愕然とする愛鈴。
そんな彼女や、自分自身が抱いた不安を吹き飛ばすようにして、たらばが明るい声で言う。
『だ、大丈夫だよ~! 脱走した枢くんがこのキャンプ場に来るだなんて偶然、絶対にあり得ないからさ~! でもちょっと怖いから、今すぐここを出て、安全なホテルにチェックインして――』
と、仲間を励ましつつ安全確保のための行動を取ろうとしたたらばであったが、その言葉を中断させるようにして、ホッケーマスクを装着した枢が一同の前に姿を現す。
『アーイルビー・バーーック!! 貴様ら、よくも俺を嵌めてくれたな~!!』
『げええっ!? く、枢っ!? ど、どうしてここが……!?』
『だってお前、SNSにキャンプに来てるって投稿してたじゃん。ご丁寧に位置情報まで乗っけてくれちゃってさ。お陰で楽に居場所が掴めたぜ』
『し、しまったぁっ!! やっちまったぁ!!』
湖の殺人鬼よろしく、コーホーと呼吸の音を響かせながら怯える女性陣に接近する枢。
楽しい空気がパニックホラー映画の雰囲気へと一変する中、たらばが大声で仲間たちへと叫ぶ。
『と、とにかく逃げよう! 1人でも多く脱出して、安全地帯に逃れるさ~!』
『わ、わ~……』
『あっ!? こら、待て! 絶対に逃がさないからな!!』
たらばの声を合図に、芽衣が慣れない気勢の声を上げて逃亡する雰囲気を作り出す。
バラバラの方向に逃げた3人を追って駆け出そうとした枢であったが、そこで何かに気が付くと足を止め、口を開いた。
『……リア様、みんな逃げちゃいましたから。あなたも逃げて。ほら、早く!』
『え……? あ、本当だ。かにな、蛇道さん』
復讐鬼枢の登場も意に介さず、延々とゲッ〇ンし続けていたリアは、彼からの注意を受けてようやく場の異変に気が付いたようだ。
ぴゅ~っ、と音を立てて逃げ出した彼女の背を見送ってから、枢は改めて逃走した同期たちの追跡を開始する。
こうして、ご尤もな理由で怒りを募らせた枢による、同期たちへの復讐を行う惨劇の夜が幕を開けたのであった。
――――――――――
ホラーゲーム『チェイス&ハント』ルール説明
このゲームは4対1の人数非対称型の対戦ゲームです。
4人のメンバーは『ランナー』と呼ばれるチームに属し、残りの1人は『ハンター』となって彼らの確保を目指します。
『ランナー』の目的はマップの各所に点在する発電機を修理してゲートを開き、そこから脱出すること。
『ハンター』はそれを阻止し、全員の確保を目指します。
『ランナー』は『ハンター』の攻撃を2回受けるとダウン状態になってしまい、その状態で檻に連れて行かれることでカウントダウンが始まります。
合計3回檻に収監されるor一定時間以上檻の中に確保され続けるとゲームオーバーとなり、その『ランナー』はゲームから除外されてしまいます。
そうならないよう、『ランナー』同士で協力して傷を癒したり、マップ上にあるオブジェクトを使って『ハンター』を撒いたり、捕まってしまった仲間を救出してあげてください。
また、『ハンター』はそれぞれ特殊な能力を持っており、それを上手く活かせば索敵や確保が楽になるでしょう。
他にもレベルを上げることで習得出来るスキルやゲームで役立つ持ち込みアイテムなのがありますが、2期生は全員初心者なので今回はそういった能力は無しでプレイしています。
枢に追いかけられる2期生女子たちの悲鳴を存分に楽しんでね!
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