2期生コラボ、はじまる
【まだか? まだか……?】
【なんか妙に緊張してきた】
【わくわくしてるけど、ドキドキもしてる。すげえ怖いし楽しみ】
21時数分前、待機場にてコメントを送りながら配信の開始を今か今かと待ち侘びているリスナーたちは、そわそわと落ち着きがない様子を見せている。
普段の配信とは全く違う雰囲気の待機場に集っている彼らは、この配信が特別なものになるということを十分に理解しているようだ。
もしかしたら、今日という日を誰よりも心待ちにしていたのは、零たちではなく彼らなのかもしれない。
推したちが長く遠い道のりを歩んで行く様を見守り続けたリスナーたちは、その先にあった合流地点に5人が辿り着く瞬間を目にしようとPCやスマートフォンの画面を食い入るように見つめている。
配信開始時刻まであと数分。
時間を確認する度に、歓喜と緊張が入り混じった妙な感情が胸の中で暴れまわる。
その感情を抑えながら、解放する瞬間を待ち続けながら……画面を見つめ続けていたリスナーたちは、時計の針が21時を指すと共に切り替わった画面の中に映る人物たちの姿を見て、ぱあっと笑みを浮かべた。
『あ~、マイクテス、テス……声聞こえてるか~?』
『音量とかの確認もしたいんで、ちょっと協力お願いしま~す!』
【きちゃ~~~っ!!】
【始まった、始まった……!】
【声聞こえてるよ!! ゲームの音声も大丈夫! あとはみんなの挨拶を聞いて、その大きさを確認する!!】
始まった配信に、聞こえてきた声に、リスナーたちがそれぞれの反応を返す。
画面に並ぶ5名の立ち絵と、ゲーム内に表示されている同じ数のアバターを目にした彼らが感激に心を震わせる中、メンバーを代表して花咲たらばが挨拶の音頭を取った。
『え~……遂に、この時がやってきました! 改めて、自己紹介をさせていただきます! はいた~い! 【CRE8】所属Vtuber、花咲たらばさ~! 続いて!!』
『こんばんめ~、です。同じく【CRE8】所属バーチャルタレント、羊坂芽衣と申します』
『おばんです! リア・アクエリアスだ!! 今日はばげだばって、元気いっぱいやらへでいだだぎます!』
『こんラブリー!! バーチャル世界にキラリと輝く一番星、【CRE8】所属Vtuberの愛鈴で~す!! そして、ラスト!!』
『はい。たった1人だけ固有の挨拶がない男、蛇道枢と申します。前の奴が1番濃い挨拶をしてくれたもんで、アウェイ感が凄いで~す』
各個人が次々とそれぞれの配信で行っている挨拶を行い、次の相手にバトンを渡していく。
最後の締め(オチともいう)を担当した蛇道枢の挨拶が笑いを生み出したことを感じながら、5人がしっかりと自分たちの存在をリスナーたちに知らしめたことを確認しながら、まとめ役を担うたらばが深く息を吸い込んでから、感慨深さを滲ませる声で言う。
『本っ当に……大変長らく、お待たせいたしました! 2期生全員が揃ってのコラボ配信、ようやく実現しました!!』
【イエ~~~~イッ!!】
【待ってました! 本当に待ってた!!】
【長かったなぁ……でも、こうして全員が揃ったからOKです!!】
同期たちの拍手と、リスナーたちからの祝福コメントによって配信が盛り上げられていく。
膨れ上がった期待感にプレッシャーを感じながらも、寄せられるコメントからリスナーたちの喜びの感情を読み取った2期生たちは、心の中で感謝の気持ちを抱きながら配信の内容について解説していった。
『本日の2期生コラボでは、手付かずだった2期生ハウスの建設に取り組もうと思います!! 数か月も更地のまま放置してごめんね~!』
『4月とか5月に決めてからずっと放置だったもんね。いや~、あの頃が懐かしいなぁ……!』
『ようやぐ建設さ着手出来るどいうごどで、わーもけっぱるべど思います! 初心者だげど!!』
『そうそう。リア様は初心者なんで、色々とサポートとか助言してあげてな。ただし指示厨にはなるなよ!』
『みんなで楽しく、を合言葉にして、配信をやっていきましょう!』
【はーい!!】
【了解! どんな家が建つのか楽しみだ!!】
【枢と芽衣ちゃんの寝室はあるのか、気になります!!】
注意事項も告げた、やろうとしていることも言った。あとは、この楽しい時間を全員で共有するだけだ。
ファンたちにとっても、タレントたちにとっても、随分と待ち侘びることとなった2期生コラボ配信は、こうして幸先のいいスタートを切るのであった。
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