かいだん
私誰 待文
かいだん
「けんた知ってる? “オゥイサン”の話」
「最近、子供が一人の時を
どうしてと聞くと、往君は
「二階に行っちゃうと、オゥイサンが体を
「オゥイサンだって誰だって、知らない人に呼ばれてもそっちへは行かないでしょ」
思ったことを話すと、往君は蛇みたいに目を丸くして
その後、往君はオゥイサンの話をしなかった。
○
夕食の時間、パパとママと一緒にハンバーグを食べてる中、僕は
「オゥイサン? 似た話だったらママが子供の頃にもあったわ。ママの時代は下校中に『お母さんの具合が
「母さんの話は幽霊というより、不審者とか誘拐犯の
ハンバーグを食べ終えたパパは、いつも通り食後に一杯の水を飲んだ。
「呼び声といったら、お岩さんの怪談が有名だな。他にも、山で見知らぬ声がしたら、それは山の神が
「それもオゥイサンなの?」
「かもな。でもなけんた、お父さんはそういった怪談話をいくつも知ってるぞ」
それからパパはオゥイサンみたいに、声に関する怖い話をいくつもいくつも半笑いで話した。ハンバーグを食べ終えるころ、僕は胸の
お風呂にいる時も、布団に入った後も、もしかするとパパの話してた声がするんじゃないかってビクビクしてたけど、結局いつの間にか朝になってた。
○
次の日、僕は朝からお腹が
ママにお腹が痛いことを話すと、ママは学校に休みの連絡をしてくれた。それから僕のためにおかゆを作ってくれた。
「ごめんね。ママこれから仕事に行くから。夕方には帰って来れるようにするから、そしたら病院に行こうね」
スーツ姿のママは
ずっとお腹は痛かった。トイレに行って、でも痛みは引かなくて、リビングに戻って、ちょっとしたらまた行って……。
○
お昼、昨日ママが残したハンバーグを
「おーい」
えっ?
「おーい」
まただ。急に胸の
僕は声のする方向へ、ゆっくりと顔を向けた。
トイレとリビングの間にある、2階へ続く階段。
それだけでも怖いのに、僕は恐怖と混乱で
2階から「おーい」と呼ぶ声は明らかに、パパの声をしていたから。
○
何で? だってうちはパパもママも
だけど上から僕を呼ぶ声、それはどう集中して聞いても、昨日たっぷり階段を話していたパパの声だった。
「おーい、けんた」
僕の名前を呼んだ! 声の主はどうして僕の名前を知ってるんだ?
「けんた、今日は仕事が休みになったんだ」
僕の疑問を
「けんた、いるんだろう?」
パパは階段下で
「けんた、頼みがあるんだ」
「な」
返事をしようとした直前、僕は昨日パパが話していた怪談を思い出した。
見知らぬ声がしたら、返事してはいけない。
このままパパじゃないかもしれない存在へ返事をしたら、ダメじゃないか?
でも、本当に上からの声がパパだったら?
取りあえず、ママに電話した方がいいかもしれない。僕はポケットにしまったスマホでママに電話しようとした。
「けんた、リビングから水を汲んできてくれないか?」
ふと、上から頼み事が聞こえた。よくパパが食事の後、水を
「けんた、いるんだろう? いつもの通り、コップ一杯でいいんだ」
パパの声が
どうすれば……。
○
「……ぱ、パパ?」
結局、僕はウサギみたいに小さな声で返事をしてみた。
「けんた、いるじゃないか! 水を持って来てくれるかい?」
声が
「お仕事はどうしたの?」
「クライアントとの会合が先延ばしになってね、急遽一日だけ休みになったんだ」
「水、だけでいいの? ご飯は?」
「ご飯はもう食べたよ。今は食後の水を持って来てくれればいい」
「……ほんと?」
「こんなことに嘘をつく理由はないだろう?」
僕はリビングからキッチンで水を
「水、持ってきたけど……」
「ありがとう。苦労をかけるようだけど、こっちへ持って来てくれ」
僕は
「どうした? 持って来てくれー」
パパの声が僕を
階段に足を踏み入れる前に、僕はもう一度だけ聞いてみた。
「パパは……ほんとに、パパだよね……?」
「何を言ってるんだ? 当たり前だろ、パパはパパだよ」
本当に優しい声だった。
その声で心の
僕は上の階にいるパパに水を届けるために、階段へ足を踏み出した。
○
——ピンポーン
突然、家中に甲高い音が
「けんたー。ママ家の
「……けんた、何で右手にコップ持ってるの?」
「それ、おかしいわよ」
「どうして?」
「だってうち、マンションの最上階じゃない」
言われて気付いた。僕の住んでる家は平屋、五階建てマンションの一番上の階だ。2階へ上がる階段なんてあるはずない。
ママと一緒に階段の場所へ行く。
階段のあったトイレとリビングの間には、白塗りの
かいだん 私誰 待文 @Tsugomori3-0
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