第160話「明かされる親友の秘密」
次の日、午前の授業を終えるとお昼に
蒼空は肉うどん、
それぞれ料理を持って席につくと、向かいに座っている真司と志郎から見られている事にオレは気がついた。
「な、なんだよ。肉うどん美味いだろ」
「いや、おまえ昔はオレ達と同じ定食派だったよなって……」
「うどんだけとか、風邪でもひいたんですか?」
「違うよあんまり声を大きくして言いたくはないけど、この身体になってから食欲が少しだけ落ちたんだ。別に体調は悪くないから心配するな」
「そうなの?」
「……そういえば、蒼空君お昼はそれなりに食べる方だったよね」
その言葉を聞いた他のメンバー、黎乃と祈理が驚いた顔を蒼空に向けてくる。
あー、もう今まであえて口にするのを避けてたのに、黎乃がびっくりしてるじゃないか。
オレは溜め息を一つ吐いて、四人にこう言った。
「まぁ、単純に身体が小さくなったわけだからな。たぶん胃袋もそれなりに小さくなったのが原因じゃないかと、オレは思ってる」
「医学的には、身体は普通の女の子なわけだしな」
「今となっては、ほんと不思議ですよね。なんで蒼空だけ魔王と戦うことになったのか」
「さぁ、それはオレにも分からん」
意味があるのだとしたら、是非とも教えてほしいものだ。
溜め息混じりに蒼空は呟くと、気を取り直して手を合わせて「いただきます」と言って、それぞれ手元にある料理を食べ進める。
全て食べ終わると、コップに
今日から定期的に行うことにした〈アストラルオンライン〉の報告会を始めた。
「今日中には、黎乃と祈理と三人でお姫様を連れて海の国を出発するよ」
「なるほど、キングクラブ討伐の実績がないと海の外に出れないのは、驚きの新情報だな」
「これは港を見張って、ボク達も後に続けるようにしておきたい所なんですが………」
「ああ、そういえば今度は溶岩地帯をヨルと探索してるんだっけ。いい加減お前等、三人で何をしているのか教えろよ」
毎回二人して、かつてスカイファンタジーで〈黙示録の狩人〉の団長を務めていたヨルに駆り出されてる件について追求すると、真司と志郎は顔を見合わせてからスマホを操作。
チャットアプリの空気が抜けるような軽快な着信音が聞こえると、
「まぁ、実は壁画を三人で探し回ってるんだよ」
「壁画? お前ら騎士と魔術士を辞めて、考古学者の職業にでもチェンジするのか?」
「違いますよ。最初にヨルが〈精霊の森〉の遺跡のモンスターが強くて一人じゃ無理助けろってメッセージが来て、仕方なく行ってあげたら最後の部屋で発見したんです。───〈アストラルオンライン〉の隠し情報っぽいものを」
「は? そんなメチャクチャ重要っぽそうなのを、オレに黙ってたのかお前らは!?」
びっくりして後ろにひっくり返りそうになると、慌てて左右にいた黎乃と祈理が手を伸ばして支えてくれる。
目を丸くした蒼空に対して、二人は「今までヨルから口止めされてたから」と言って気まずそうな顔をした。
実に申し訳無さそうな雰囲気の真司と志郎の様子に、オレはそれ以上の言及をやめた。
つい最近までリアルの性転換について二人に黙っていたので、お互い様だなと苦笑する。
しかし、ヨルの奴……。
〈
「ということはさっきの着信音はヨルか。アイツが許可を出したということは、何か進展でもあったのかな?」
「さぁ、俺達が知っているのは最初の遺跡の壁画を見たヨルが、あの世界には四大天使と天使長ルシフェル以外にも天使がいるとか言ってたくらいか?」
「真司、すごい大雑把(おおざっぱ)にしか聞いてないじゃないですか……」
適当な事を言う黒髪の少年、真司に苦々しい顔をした茶髪の爽やかな少年、志郎はオレ達にヨルから聞いた壁画の事を語った。
「良いですか〈アストラルオンライン〉には、なんでも天上を統治する三柱の天使と〈世界樹〉を管理する三柱の智天使、そして
これら〈セフィロトの
「ほほう、存在していたのは四大天使と天使長だけじゃなかったのか」
志郎が聞かせてくれた新情報は、実に興味深いものだ。
天使長〈ルシフェル〉は呪いという形で、オレがスキルとして所持。
四大天使は蒼空が今進めてる〈四聖の指輪物語〉に関連しており、その内の二つは既に入手して、黎乃と真司が所持している。
いくつか考えなければいけない事としては、他の六柱の天使は存命しているのか。
或いは四大天使達と同じように亡くなり、クエストの報酬としてプレイヤー用のアイテムと化しているのか。
「以前に〈竜王祭〉で
「おう、任せろ」
「承知しました」
というわけで会議を終えると、蒼空達は食べ終えた器を片付け、今日は校舎の外で待機していた祈理の執事に家まで送ってもらった。
◆ ◆ ◆
時間を合わせて本日も〈アストラルオンライン〉にログインをする。
先ず目を覚ましたソラは、寝ぼけたラウラに抱きつかれ、更には謎の対抗心を燃やしたクロに抱きつかれ、危うく開始数分で気を失うところだった。
こっちは健全な男子高校生、美少女に抱きつかれるなんて心臓に悪すぎる。
危ないところでラウラが目を覚まして、謝罪しながら離れてくれた事で難を逃れる事が出来たが。
もしもこれで男子の姿だったなら、オレは即座に異性に過剰接触の判定を取られてふっ飛ばされ、更に罪過数がヤバいことになっていたのではなかろうか。
こういう時に女の子の姿で良かったと思ってしまう自分の思考が、実に情けなくて嫌になる。
そんな事を考えながら、顔を真っ赤にして頭の
「……ソラ様が魔王の呪いで殿方だという事は存じております。それなのに妾は……」
「イヤ、ほんと気にしないで良いよ。誰だって近くに手頃な抱きまくらがあったら、抱きつくのは当たり前だからさ」
「……なんと、これが天上のお方の慈悲深さ。二国の姫……アリアやアリスが、ソラ様に心寄せるのも頷けます……」
むしろ本来なら断罪されるのはオレの方だというのに、ラウラは感謝して感情の薄い顔を赤く染める。
その様子に
「と、とりあえず今日の方針は港に向かって船で出発。そこから島に到着するのに数日は掛かるらしいから、どこか 区切りの良いところでログアウトしよう」
「りょーかい」
「承知したのじゃ」
「……よろしくお願いします」
三者三様の返事を貰ったソラは、最後に装備をチェックしてから部屋を出て、宿の管理人であるお姉さんに礼を言って外に出る。
すると目の前にウィンドウ画面が突如出現して、ソラ達に一つのクエストを与えた。
その内容とは、
【王国の兵士に見つからずに、ラウラと共に港に到達せよ】
クエストの内容に目を通したソラとイノリは、実に面倒そうな顔をした。
うわぁ、スニーキングクエストだ……。
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