第4話 ありがとう はにかみブス

入院4日目


いまわたしは担当ナースに ドスの効いた声で脅されている

ナース「無許可で勝手に出歩かないでください バレてますよ」

おかしい どこで間違えた?

『怯えてるとかえってやられるぞ 弾は臆病者が好きなんだ 堂々としていれば弾のほうが避けていくもんだ』

ではなかったのか? つまり堂々としてナースステーションを横切り顔を洗いにいけば問題がないはずである。

え?『ひとりでどこかへ行くのも死亡フラグ』なんだそれは 初めて聞いたぞ


*******


ってなことが朝あったんだよ

「アハハハ」と大爆笑している彼女は作業療法士の大川さんだ

いまは午後のリハビリ作業療法の時間だ。

大川さんは笑顔がすてきで よく笑う この柏藪病院の良心みたいな存在だ。

どんな患者さんに対しても笑顔であいさつしている いつもニコニコの八方美人である。

大川さんに聞いたが 患者さんが転ぶと ナースは反省文が待っていて

リハビリステーションのほうでは会議の議題としてやり玉にあげられるらしい


この場を借りて大川さんにはお礼を言っておこう

『ありがとう はにかみブス』

どうせ 二度と会うこともないし顔も思い出せないしお礼はこの程度でいいだろう



閑話休題


夕方には 歩行許可 トイレ見守りといったものにステータスが変化した

トイレにいくとき、 そして帰りに ナースコールをおしてナースにストーキングされながらベットまで帰るのである。

ストーカー に出会ったら? もちろんダッシュで 逃げるよね?

スタコラサッサと

ナースA「オイ なんかいま駆け抜けてったぞ なんだあれ」

ナースB 「30代のあの人ですよ」

ナースC「いったいなにやってんだあいつ」etcetc

部屋まで戻るわたしに対してナースステーションから 妙な声(主に罵声)が聞こえたが 空耳であろう

反省文なんて気にしてたら仕事にならんぞ 目の前に事に集中しろよ?

なお ストーカーは ドン引きしながら 帰っていったようだ めでたしめでたし。


そんなわけで

この病棟にもなれてきたので 軽く説明しておこう。

柏藪病院 丸二病棟の基本方針

その1 患者は黙って寝ていろ

その2 患者のQOLは金にならないからドブにすてろ

その3 患者は 全員 認知症扱い だから、話すだけ無駄

その4 TIA(脳虚血発作)患者は 見つけ次第 MRI撮った後、つまみ出せ(これは丸二の、朝の日課のようだ)

その5 柏藪出荷システム 3割負担者は治療終わったことにして問答無用で7日で叩き出せ、金の回収率優先(ベットの回転率 MRIx3 初診料 )

こんなところだろうか?

余談ではあるが もし読者さんがTIAと診断され 翌日にMRIをとってつまみ出されるようなことがあったならば

会計せず そのまま帰ればいいと思う。つまり踏み倒しである。 悪意には悪意を持って返す 『倍返しだ!!』

そのまま よその病院へ TIAを起こしたと相談しにいくのがベストであると私は思う。


丸二の3秒回診などからもわかる通り 患者と対話をしないのである もちろん病状の説明もしない。

例えば、来週 検査だから など一方的に通告するだけである なんの検査か?と聞き返されてもシカトである

その結果 なにが起きるか 患者のストレス爆発である 自分の病状が説明されないまま 不安が増すばかりである

患者さんだって 血の通った人間なんだぞ 頭だってシッカリしてる患者さんたくさんいるんだ

『いくら患者が、年寄りばかりだとはいえ、他人を軽く見てはいけない とだけ わたしは 柏藪病棟のスタッフへ この場で忠告をしておく』


はっきり断言しよう 『丸二よ そんなの回診って言わないし やるだけ 無駄だから やめちまえ この碌でなし』


つづく

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