第8話 4人の場合
季節は移り変わり、とある雪の降る日。受験生の那月と修弥のために勉強会をうちで開いていた。
「まさか薫が専門で翔也が就職とはねー。
俺らだけ受験生とか2人がずるい!!俺も受験やめたい!!」
那月が何か喚いているがいつものことなのでスルー。
「俺はもともと、高校出たら就職するって決めてたからなぁ。でも、薫が専門なのはちょっと意外だった。」
「俺も、専門行けるなんて意外だった。でも店継ぎたかったから親に認めてもらえてよかったよ。」
「ほーん…。ちなみに先生方、問5がわかりませんですヘルプミー。」
修弥は隣の県の大学、那月は地元の大学を受ける。
すでに進路を決めていた俺と翔也が2人の勉強をたまに手伝っていた。
「でも、こうやって集まれるのも残り少ないんだねぇ。おれは問7がわかりません。」
「まあ、卒業したらみんなバラバラの進路だしなぁ。それはこの公式使えば解ける。」
「なんか実感ねぇな。このまま日常が続きそうなのになあ。ここは?」
「まあ、分からんでもないがこればっかりは仕方ねえことだからなぁ。それは教科書読めば解ける。」
「待って、その教え方は雑すぎねえ?」
問題を解きながらお互いの進路と卒業後の話をする。毎日嫌になるくらい顔を合わせた日々が終わり、別々の日々を迎えることに寂しさを感じた。
「てかさ、俺は隣の県だけどお前らは地元じゃん。俺だけのけものー!」
「ゆーて隣なんだからいつでも帰ってくりゃいいじゃん。」
「でも、なんだかんだ向こうの生活が楽しくて帰ってこないかもよ?」
「あー、そうやって俺の存在を忘れていくんだろ。寂しい寂しい。」
「まあ、少なくとも、俺はずっとこの家で働いてるし。学生のうちはバイト扱いだけど。いつでも来いよ。」
「俺の味方は薫だけかもしらん。」
「今、現在進行形でお前の勉強見てるのは薫ではなく翔也先生なのだが?その点はいかように?」
「大感謝!」
「よろしい。」
高校生としてこうして集まれるのは残り少ないかもしれない。
でも、卒業した後もなんだかんだ集まってはバカな話をしてるんだろうなあ。
「でもさ、なんだかんだ薫家の和菓子食いながらこうやって集まってそうだよな、俺たち。」
那月が笑顔で俺が思っていたことと同じ内容を口にした。まあ、一部違う点はあったが。
「「たしかに。」」
「お前らには俺が作ったものの実験台になってもらうよ。」
「「「それはおてやわらかに〜。」」」
何気ない会話をしながら受験勉強をする。こうやって集まる回数が減ってくることを意識し出したということは、俺らの高校生活という青春が終わりを迎えようとしていることを表していたのかもしれない。
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