第3話 出会いは唐突に

「おばーちゃーん、おばーちゃーん。アイス買いに来たよー」


 僕はこぢんまりとして薄暗い店の中に入りつつ、レジの奥の方へ声をかける。返事は無い。


「おばーちゃーん! 会計おねがーい!」


 何度か声をかけてみるが、相変わらず返事は無い。屍かな?

 クソが。何がコンビニだよ。買い物をするためには、店の奥でお茶を飲んで休んでいる耳の遠い店主を何度も呼ばなきゃならんなんて。そんなコンビニがあってたまるか。どこがコンビニエンスじゃ。だいたいこの店午後六時には閉まっとろうが。マジで何がコンビニだよ。この島の住人は誰一人としてコンビニの概念を知らんのか。


 心中でそんな悪態を吐きながら、店主のおばあちゃんを何度も呼ぶ。


「あいよ~、ちょっと待ちな~ね~」


 あいよーじゃねーし、もう散々待ったわ。

 度重なるシャウトの甲斐あって、店主の老婆村上がようやく現れた! 暑さで渇いたノドにシャウトが加わり大ダメージ! おお悠太、死んでしまうとは情けない!

 曲がった腰をさするようにしながら、おばあちゃんはゆっくりとレジ前までやってくる。


「おー悠太君かい。まーた大きくなったんじゃないけ?」


 大きくなってたまるか。僕が前回この店に来たのは一昨日だ。そんなペースで背が伸びていたら、行きつく先はチェホンマンである。


「あい、アイスね。百五十円」


 レジに到着したおばあちゃんの皺深い手に僕は百円玉を二枚置く。おばあちゃんは慣れた手つきでそれをレジにしまった。


「あい、おつりね」

「ありがとー」


 僕はハーフパンツのポケットに五十円玉をしまいつつ、店を後にする。なんで買い物するだけでこんなに疲れなきゃならんかなー。


 おばあちゃんに聞こえないように(どうせ聞こえないだろうが)小さくため息をつき、炎天下へ足を踏み出す。


 その時、とんでもないものが僕の視界に入ってしまった。


 熱中症による幻覚か、あるいは真夏の日差しが生んだ陽炎か。




 獣耳巫女娘がアイスケースを覗いていた。

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