第39話 飯島家へレッツゴー!
俺はふと、飯島との四日間の勉強会を思い出していた。
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(期末テスト9日前)
はぁ、飯島からのお誘いを受けてしまったわけで...。
どうしたもんかねぇ...。
まず女子の部屋に行くというのが久しぶりすぎて、考えが纏まらない。
前回女子の部屋に行ったのは、中学1年の時だったか。
あの時は結構何も考えずに部屋に入り、共通の話題で盛り上がったり、漫画などを読みながら楽しく過ごせたもんだが。
今となっては、色々考えてしまう。
あの頃の自分がどうしてあんなに何も考えずに部屋に上がって楽しんでたのかがわからない...。
やっぱり色々かんがえちゃうんですよね...。
部屋で勉強するのはわかってるんですけど、
勉強以外ナニするのかなーとか。
さすがに勉強ばっかりしてるっていうのではないと思うから、それ以外の時間が気になる...。
どうしよう、何を喋ればいい。
そもそも飯島は俺に気があるのか...。
疑問だ。
気があるならあるで俺はどうしたらいいかわからないし、ないならないではっきりさせてほしい。すごくモヤモヤする...。
そう思いながら休み時間に机に座り窓から景色を見て悩んでいると、江原が声をかけてきた。
「なにやら浮かない顔だね、鈴風君。もしかして、結衣の事かな?」
江原は軽く笑みを浮かべながらそう言った。
ほんとなんなのこの完璧超人イケメンは。
なぜ俺が悩んでいる理由が飯島にあるとわかったんだ。エスパーか?エスパーだよな?
俺が少し驚きつつ機嫌が悪そうな顔をしたのが原因なのか、江原は笑った。
「ふふっ、やっぱり結衣のことなんだね。たしか勉強会に誘われたんだったかな。本堂君たちとは喧嘩中?」
「まぁ...な。俺が悪いんだけど、飯島と勉強会を2人ですることになってさ。」
俺が言うと、江原も頷きつつ答えてくれる。
「なるほどね...。それで、結衣との勉強会でなにが不安なんだい?」
俺は少し素直になり答える。
「いや、なんていうか、女子と2人で勉強会なんてしたことないからな。どういう感じでやればいいかわかんねーんだ。」
「ふむ。普通でいいんじゃないかな。」
「ふつぅー?」
俺が問い返すと、江原は頷く。
「うん。色々考えたとしても、するのは勉強会でしょ?逆に、色々考えて変に思ったり思われたりする方が大変だと思うな。」
なるほど...さすがは江原といったところだろうか。
飯島に変に思われたりしないように、普通に
勉強会に挑む。普通が良いというのは当たり前の事だけど忘れてしまっていた。
「なるほどな、たしかに。江原のおかげで気持ちの整理はつきそうだ、助かった。」
ここは素直に礼を言う。
それが礼儀でもあると思うしな。
「ああ、それなら僕としても嬉しいよ。鈴風くんの力になれて良かった。」
「お、おう。じゃあそろそろ授業始まるし、俺は用意するわ。」
「そうだね、僕も戻るよ。しばらくは勉強面で力になれなくてすまないね。」
それは仕方がない事だ。
江原が謝ることはない。
「いーや全然。飯島としっかり勉強してくっから安心してくれよな。」
「それなら安心だ。」
俺がグッドサインを作り言うと、江原も安心してくれたようで自分の席へと戻って行った。
さてと。放課後まで頑張りますかねぇ。
その後、3限分授業を受けて終礼が終わった。
俺が終わった終わったと思っていると、当然ながら話してくれない青葉たちは帰っていく。
あぁ...
こういうのが寂しいってことなんだなぁ...。
まぁ俺が悪いのだからしょうがない事だ。
ため息を吐きつつ、下駄箱の所で飯島を待つ。
話によれば今日から飯島との勉強会は始まるらしい。
江原にはああ言われたものの、やはりまだそわそわ感は無くならないというものだ。
そわそわしてると飯島が来る。
「ごめんねー!待ったかなぁ?」
そんなデートの待ち合わせみたいに言われてもな...。こちらに早足で駆けてきた飯島は普通に可愛かった。
「ちょい待ったけど全然大丈夫だ。」
「もー、そういうときは全然待ってないって言うものなんじゃないのー?」
と笑いながら飯島は言った。可愛いな。
「いや、正直な方がいいかと思ってな。」
「まぁ鈴風くんらしいっちゃらしいけどさー。あはは。」
「だろ。」
「まあとりあえず行こっか!」
え、行くってどこにですかね、飯島さん。
まさかこのまま飯島の家に直行とか言わないよな?制服だし荷物もこのままだぞ。
俺は一応確認をとる。
「え、行くってそのまま飯島の家にか?」
「うん、そーだよ?学校の教材とかは持ってるし、このままでもいーでしょ?」
「いやたしかにそうだけど...。はじめて家行くのに手土産とかいるだろ...。」
さすがに人様の家に初めて行くときに手土産1つないのは礼儀としておかしいんじゃないか?少なくとも俺は親からそういう風に習ってるしな...。
俺が言うと飯島は手を顎に当てて考えている。
「うーん...そうなのかなぁ。別にうちなんにもないし、そういうの要らないと思うけどぉ...。」
「そうは言ってもだな...。」
そうやって会話をしているうちにもう学校から最寄りの駅まで到達していた。
とりあえず俺は最低限はいると思い、駅で簡単な菓子折りを1つ購入する。
1000円ちょっとの安物だが、学生ってことでそこは見逃してほしい...怖い人だったらどうしよう...。
飯島の親に限ってそんなに怖い人ではない気がするし、大丈夫だとは思うけど。
電車に乗り込み、飯島と並ぶ。
「ほんとによかったのにー、そんな良いもの買わなくてもー。」
「いやいいんだよ。俺がこのくらいもしなかったら飯島の親御さんにも俺の親にも失礼になる。」
「えぇー...。」
飯島は納得いかないようだが、さすがに手ぶらでいくのはだめだからな。
このくらいはしておかないと。
電車内はそれほど人が多いわけでもないが、席が全て埋まっており、仕事帰りのサマリーマンやOL、学校帰りの学生と、時間が時間なだけに人は少なくなかった。
俺と飯島は隣同士で吊り革を握って立っているわけだが。
こう見ると飯島もやはり小柄なほうである。
150ちょいか...?青葉や山吹と比べると少しだけ身長は高いから普段は思わなかったが、俺と並ぶだけならかなり小さい。
そうして俺がじっと見ていると、飯島もこちらの視線に気づいたようでこっちを見る。
「ん?鈴風くんなに?」
「いや、なんでもない。髪綺麗だなと思ってな。」
「え、そう...かな。ありがと...。」
え、何その反応。
さすがに身長が小さいと思っていたとは言えずに、
誤魔化したつもりだったんだが、飯島は微妙な表情になっている。
嬉しかったのか?
それともまずかったか?
よくわからないまま、電車は飯島の家の最寄り駅に着いてしまった。
「さ、さぁ行こっか!」
謎に歯切れの悪い飯島がそう言って元気に電車を降りる。
「おう、行こう。」
俺もそれに答え電車を降りる。
プシューという音と共に電車の扉が閉まった。
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