第37話 虚偽と謝罪


なんだろう、今俺はとんでもない申し訳なさを感じつつ会話を聞いています...。



いやホント...なんて言えば...。



※※※※※※※※※※※※※※※



先ほど飯島との勉強会の予定について話し合った後解散して、席にいたのだが少しすると青葉たち三人が帰ってきた。



表情から見て、あまりいい気分では無さそうな感じだった。



とりあえず、話しかけられるのを待っていると、俺の席に三人まとめて話しかけにきた。



「コウ君、ごめん!!!」



「コウ、、、すまねぇ、、、。」



「紅くん、ごめんねー、、、。」



ん???



何故だが分からないが、三人とも一斉に俺に謝ってきた。



...何かあったんだろうか?



そう思った俺は、とりあえず聞き返す。



「き、急にどした?夢栗となんかあったのか?」



俺が問うと、青葉が実はねと話し始める。


「私たち生徒会室に行って、夢栗君と話をしたんだけど、君たちには勉強を教えろと江原から頼まれているので教える。って言われてね。」



ほうほう。俺は頷きながら、続きを聞く。



「と同時に夢栗君は、君たちには教えるが、あの男は例外でいく。あの男には教える価値もないし、最低限の礼儀さえ感じられないからな。って、、、。」



「ほーん。まぁ話の流れからいうと、たぶんあの男ってのは俺のことだよな。」



山吹が申し訳なさそうに頷くのを確認して確信へと変わった。


そして渓も話し始める。



「でよ、俺ももちろんコウの事を勝手に外されちゃ困るし筋が通らないから反論したんだけどな。」



渓の言葉の続きを青葉が代わりに話す。


「君もあの男と同じ道を辿るのか?望月さんと山吹さんの二人にのみ教える事だって可能なのだぞ?って言われちゃって、私が本堂くんまで被害者になるわけにはいかないと思って、止めたの、、、。」



そしてさらに申し訳なさそうに渓が言う。



「コウ、ほんと悪りぃ!!!俺じゃアイツには通用しなかった、、、。認めさせるって言ったのに、すまねぇな、、、。」



「私も、ずっと聞いてるだけで何も言えなかった。今回コウくんだけ悪い点数を取っちゃったら、、、私のせいだよ。ごめん、、、。」



あれ、二人ともめちゃくちゃ謝るやんけ。



ヤバい、大変な三人を差し置いて飯島と二人きりで勉強会することになったなんて言えねぇ...。



ど、どうしよう.....。



これ以上は俺自身のためにも、謝らせるわけにはいかないと思い、俺も口を開く。



「ま、まぁ今回の事は仕方なったわけだしよ。俺が夢栗に最悪な第一印象を植え付けちまったのも事実だ。二人は悪くない。俺のせいだよ、、、。」



よし、少し二人を庇う様にしつつ、俺が悪いと言う結論に持っていけた。



これでこれ以上は謝られる事はないはず...。



「なっ、そんなことねぇよ!!!夢栗とコウの間で何があったか詳しく知らねぇが、俺が約束を守れなかったのも本当だ!申し訳ねんだよ、、、!」



け、渓さーん...。

いつもそんなキャラじゃないよねー...。



いつもの分も含めて謝られているのか?

それならまだいいかもしれないが...。



「私もだよ!横でコウくんがどんなに酷く言われようと、本堂くんへの助け舟もろくに出せずに、横ではいはい頷いてただけだったの。ほんとにごめん。」



あれ...?



「私も、二人ばかりに負担かけて、結果的に紅君にも迷惑かけたんだよ。、、、ごめんね。」



おや...?



待て待て待て、流れがおかしい。



ついには山吹まで謝りだしちゃったよ?



これどーしよ...。

俺だけ解決してて、三人より楽に飯島に勉強を教えてもらうなんて口が裂けても言えなくなっちまったじゃねぇか...。



逆に少しだけ目の前の三人の非を認めて、謝ってきているのに対して許してみるか...?



いやいや、そんなの俺がただのクズになっちまう。

却下却下。



こうしている間にも、青葉たち三人は俺に向かって申し訳なさそうにテンションがだいぶ低くなっている。



早く事態を収束させなければ...。



俺の第六感が嫌な予感がすると言ってくる。



よし、とりあえずこの場を収めよう。



「なんかすげぇみんな謝ってるけど、別に俺はもういいよ。しょうがないだろ?夢栗に嫌われちまったんだし。俺もアイツは嫌いだし、三人とは別で俺も勉強するから、もうあんまり気にしないでくれ。俺は大丈夫だよ。」



「コウ、、、。」



「コウくん、、、。」



青葉たちが小さく頷き、まだ申し訳なさそうにしているものの、いつも通りの会話に戻るのに時間はかからなさそうだ。よかったよかった。



あとは、どう隠し切るかだな。



なんだろう、すげぇ俺が申し訳ない気分になってくるなコレ。俺はクズなのだろうか...。



いやいや、クズじゃねぇよ!たぶん!



夢栗との事は仕方ないのは事実だし、謝らないでくれってのも本心だ。



何一つ嘘は言っていないし、やましい事だってない。そこは言い切れる。



大丈夫、大丈夫だ...。



よし!

お詫びの意味も込めてここは一つ、俺がいつもの空気に戻そう。



「まぁまぁみんな!別に俺はもういいから、普通に楽しくしようぜ!みんなで成績あげるぞー!やるぞー!えいえい、ぉ」



「鈴風くんーーー!!!勉強会なんだけどね、今日から始めようかなと思ってるんだけど、予定大丈夫かな?」



おそらく今一番威力の高いの爆撃が俺たち四人...

いや三人の中に放り込まれた。



「..........え、えーっと、今日からでも俺はいけるよ?大丈夫、大丈夫。ちょっと今話してるから、後でまた言うわ。」



「あ、了解!じゃあまた後でねー。」



飯島が自分の席へ戻るのを確認する。



「.....よし、俺も次の授業にそなえて、トイレでも行ってこようかなっと」



「おい」



後ろからガシッと、かなり強めの力で肩を握られた。



「な、なにかな渓君。あはははは。」



「今のどういうことだ?なんで飯島がお前に勉強会とかそんな話してるんだ?あぁ?」



「えーと、、、それはね。そうそう!飯島が俺と夢栗の喧嘩のこと知っちゃったみたいでさー、心配された、みたいな??」



「嘘つくな、さっき飯島は今日から勉強会を始めるとか言ってたよな?心配とかとは関係ないと思うんだが、、、?」



こいつ!!!

なんでこんな時だけ勘が良いんだよ!!

チクショーめ!!!



「コウくん、、、嘘ついたらダメだよね、、。」



「嘘はだめだなー、、、。」



さっきまで黙っていて表情も見えなかった青葉と山吹が低いトーンで言う。



そして渓は拳をポキポキ言わせながら俺に近づいてくる。



「おい、あんだけ俺らに謝らせておいてこんな事。なんか言い残す事はあるか...?」



渓の手は若干震えている様にも見えた。



「いや、別に俺が謝れって言ったわけじゃねぇし!俺は嘘はついてないよな?一つも!!」



「なるほどな、、、。わかった。コウの言いたい事は大体わかったよ。」



「わかってくれたか、、、?じゃあこれで話は終わりな、、、?」




俺が言うと渓はニッコリと頷き、




「もちろん、お前が話せなくなるんだから、終わりだな。安心しろ。」





「すいませんでした」





俺は、その場で手と頭を床につけて、日本古来の本気の謝罪をお見舞いした。









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