第35話 仲間外れ
「なんで喧嘩なんかしてるのー!!」
俺の耳に入ってきたのは、可愛らしい声で少し驚きながら言ってくる青葉の声だった。
「いや、すまん。でも俺にはアイツは受け入れられない。無理無理。」
俺は思っていることを素直に率直に伝えた。
だってあいつマジで無理だもん。
俺が何に腹を立てているのかといえば、
今日の昼頃に訪れた生徒会室でのちょっとしたトラブルにムカついている。
俺と生徒会副会長の夢栗は少し...というか俺的にはなかなかにとある事で揉めた。
その際に俺が受けた罵詈雑言は酷いもんだ。
あと別に俺はいいとしても、俺と少し関わっただけの江原の事まで侮辱されるのはお門違いだ。
だから俺はアイツを認められない。
俺が言う立場ではないのかもしれないが。
「うーん、、、今の話を聞くに俺でも夢栗には腹が立つな。コウ、正しいぞ!いくら勉強できたからって性格がクソじゃ意味ねぇよ。俺みたいに性格が良いならまだ」
「とにかく、なかなかに喧嘩売っちゃったねー紅くんー。」
まだ腑に落ちねぇなぁ。
それより今渓が自画自賛をしたことも腑に落ちないねぇ。山吹に遮られてたしな。
「おい楓遮ってんじゃねーよー。」
「んー」
相変わらず渓と山吹も悪くない距離感だ。
結構仲良いのか....?
山吹が若干のらりくらりとしたやつだから分かりにくいな。
「それよりも、これから海斗くんが来るまでどうする?私たちだけじゃどうしようもないよね?」
この前からそうだが、妙に青葉や山吹が江原を海斗呼びすることがどこか腑に落ちないんだよな。
おそらく嫉妬などの類ではないのだろうが、、、。
なんなのだろうか。
「たしかになぁー、コウどうするんだよ。コウのせいでこうなったってのもあるだろー。」
「けっ、夢栗ならもう忘れろ。もうあと数日は個人勉強で耐えるしかないんじゃねぇか?」
「うーん、、、。」
俺の発言に、場の空気が重くなる。
まぁ、俺のせいと言えばそうなんですがね、ちょっと夢栗は本能的に受け付けなかったんですわ。
「あ、じゃあさー。結衣ちゃんに頼んでみるー?」
「あ、楓ちゃんそれいいかも!」
「でしょ、青葉もそう思うでしょー。」
2人で盛り上がっているが、結衣ちゃんとは誰のことだ?えーと...。ちょっとloadingします。
「結衣?あー、飯島かー。成績しらねぇんだけど、いいんじゃね?賢そうだし。」
「あ、飯島か!飯島ね。なるほど、結衣ちゃんか、、、。」
俺が思い出した事に安堵し、名前を再確認していると渓が冷たい目でこちらを見てくる。
「なんだよ渓。」
「いや、なんかコウが飯島の事を結衣ちゃんとか呼ぶとちょいキモくて。すまんな、、、。」
「いや謝んなよ。失礼、、、なのは俺か。」
周りの目が怖いっす。
飯島さんごめんなさい。
でもなんで男子が女子の事を下の名前で呼ぶのって禁制なんでしょうか?
いやたしかに距離感バグってるしキモいのもわかるけどさ、別に良くね?駄目かな。
女子はバンバン男子のこと下の名前で呼ぶくせに男子がやると気持ち悪がられるよな。
こういうので男女差別ーとか女尊男卑ーとかいうと大きな争いになってしまうので、心の中だけで留めておこう。これは触れては行けない永遠の課題だ。
そんなこんな思いながら、飯島の成績の話に耳を傾ける。
「結衣ちゃんってたしか、、、学年総合で10番台とかじゃなかったっけ?」
山吹が言う。
10番台...賢いな。
飯島がそんなに賢いとは思わなかった。
これこそ失礼だな。
「すご、成績良いんだね結衣ちゃんは。」
「それなら十分教えて貰えるんじゃないか?」
青葉が言うと、渓も頷きながら返す。
なんだ、夢栗なんかいなくても始めから飯島に頼めばよかったんじゃないか。あーよかった。
「じゃあ早速私が頼んでみるよー!」
「おう、よろしく。」
青葉がはいはいと手を挙げ、自分が行くと宣言して飯島の席に向かった。
飯島は席で数人の女子と話しているようだ。
さぁ、俺にしてはここが第一関門なんですがね。
だって数人で話してるとこに1人で入るのってむずくね?学年10番台取るとの同じくらい難しい気がするんだけど。
しかしここから様子を見ていると、青葉はスッと飯島のところへ行って、飯島だけに要件を伝えてすぐに戻ってきた。
「なんか、考えといて、後で返事するってさー。」
「オッケー。」
青葉に返事する。
まぁ、飯島といえど勉強グループはあったみたいだし予定の一つや二つあってもおかしくない。
そりゃあ考えさせてくれとはなるよな。
と、思っていたとき徐に教室の扉が開き誰かが入ってくる。
そちらを見ると、見たことのあるすらっとした体つきに整った制服、そして威圧感のある黒縁メガネ。
そこまで要素がそろえば、誰かなんてわかる。
いや、わかりたくないのにわかってしまう。
夢栗数裡、俺の嫌いなやつだ。
「急にすまない。申し訳ないが、今すぐ山吹楓、望月青葉、あと、、、本堂渓。以上の者には、私に同行して貰おう。着いてきてくれ。」
「え?夢栗くん?」
「は?なんで今夢栗が来るんだ?」
教室は少しざわつき始める。
夢栗はそういうのに慣れているのか、目線だけで青葉たちへ来いと合図を送った。
反射的に青葉と山吹は夢栗の元に向かうが、渓は立ったまま俺に話しかけてくる。
「おい、アイツだよな例のやつ。」
「あぁ、、、、そうだよ。」
「コウと江原を馬鹿にしたのは許さねぇ。ちょっと文句言ってきてやる。」
と俺の肩をポンと叩き夢栗の所へ向かっていく渓。
そして3人が夢栗のとこへ着いたとき、夢栗は教室の扉を閉めながら言った。
「お騒がせしてすまなかった、以上だ。」
それきり、教室にはいつも通りのガヤガヤ感が戻る。戻ったが俺はまた怒りを覚えていた。
そうか、、、俺は抜きか。
そりゃそうか。アイツも俺のこと嫌いだもんな。
だが、仲間外れにされたというよりは、俺が勝手な事をしたばかりにあの3人にも迷惑がかかるのかと思えば、少し胸がザワザワした。
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