赤点な祭囃子

第31話 戦いの始まり


「始め!」



その台詞と共に俺たちは一斉に動き出す。


各々が今日までに培ってきた己の武器を全て使い、それを出しきれた者のみが勝ち残れる。



いわばバトルロイヤルだ。



そう、俺はこの日の為にあれだけの事をしたんだ。



ここで出し切ってみせる。


必ず。



今日は何の日かって?



そう、一学期文化祭前の大イベント。



定期テスト初日目だ。




※※※※※※※※※※※※※※※



「そーいやそろそろテストだなー。」



休み時間が始まると同時に、渓がそんなことを口にする。



「そうだな、あと一週間ちょいか。」


そう、一学期定期テストまであと10日だ。



高校二年の一発目のテスト。かなり大事な物だ。



もちろん俺は...



NO勉ー。



いつも通りだ。たぶんなんとかなる。



でも、それで毎回学年99人中40位前後という中途半端な怒られるでもない褒められるでもない成績なのだ。



別に頑張ろうなんて思わない。



だってさ、怒られないならそれで良くね?



褒められたいとも思ってないし、半分より前の成績なら十分だと僕は思うんです。



ただ、毎回学年トップの江原君がいるからモチベが上がらないというのも事実だ。



青葉の成績は全く知らないが、この感じそれほど頭が悪くもなさそうだ。20番台ってのがいいとこだろう。



ところが渓はダメだ。



昔から俺よりアホなんだ。ほんとに。



中学の時なんか酷かった。



俺も酷かったんだが、それでも学年110人中の90番台ってところだ。だいぶヤバいか。



渓は、、、なんと、、、!



104位とか毎回当たり前のように取っていた。


後ろから数えて何番目って感じだ。



俺と渓はお互いに勉強して、この高校になんとか入ったんだ。



でもやはり高校がなかなかにレベルが高いこともあって、渓は今でも99人中の70番台くらいが平均だ。



まぁたしかに難しいんだが、渓の場合、高校受験の時に全ての力を使ってしまったみたいで、そのせいで燃焼してしまい、今に至るという感じらしい。



「もうあと一週間ちょっとしかないのかぁー。私もだいぶやばいよー。」



「私も高校なってからのテストは初めてだから大丈夫かなー、、、。」



青葉と山吹もそう言い合っている。



やはりみんなテストは気乗りしないんだな。



人間だもの。



「なぁーー、コウーー。勉強教えてくれー。」



「やだよ、俺もそんなに賢くねぇし。むりむり。」



渓が頼んでくるが、俺は断る。



ほんとに別に俺は勉強が好きでも得意でもない。



ただ、留年とかがめんどくさいからやっているだけだ。



そこでお願いされても無理なもんは無理なのだ。



「実はね、私もあんまり勉強は得意じゃなくて、、、。四人で勉強会とかやらない!?」



「よしやろう。今日やろう。」



俺はキッパリと返事する。



「はぁ!?なんで俺はダメなのに望月が言ったらオッケーなんだよ!男女差別だー!」



「うるせぇぇー!!これは差別でもなんでもない。好きか好きじゃねぇかだ。以上!」



俺と渓が取っ組み合っているところに、山吹がまぁまぁと宥めながら話を進める。



「まぁ、でも青葉の案いいんじゃないー?やろうよ!みんなでー!」



「まぁ、楓がそう言うならそうだな。やろう!」



「へっ、おめぇだって山吹ならノリノリじゃねぇか。」



「それが何か??」



再び俺と渓がやいやいやっている所に、江原が手を振りながら近づいてきた。



「少し聞こえてきたんだけど、みんなで勉強会やるの?それなら僕も是非混ぜてもらってもいいかな?みんなの勉強の力にもなれるかもしれない。」



たしかに江原が居てくれればこれ以上に頼もしいセンセーはいない。



江原の事は別に好きでも嫌いでもないが、今回はばかりは共闘だ。利用させてもらうゼ...!



「あ、あぁ。もちろんいいぞ。お前が居てくれれば頼もしいよ江原。」



「ふふ、ありがとう鈴風くん。君ならそう言ってくれると思ったよ。じゃあみんなよろしく頼むよ。」



俺がOKを出すと江原も嬉しそうに頷く。



そしてみんな江原参加に異議はないみたいだ。



そういえば、江原は江原グループという江原から構成されたグループがあるはずだが、そっちは良いのだろうか。



そう思っていると、心を読まれたかのように江原が俺に言う。



「あっちのみんななら大丈夫だよ。僕が居なくても、何も問題ない。今回は結衣もあっちで頑張るみたいだ。」



結衣というと飯島の事だろう。


なるほど、彼女も江原にピッタリ引っ付いている訳ではないんだな。みんな偉いな。



「よーし、じゃあ今日から5人で勉強会がんばるぞー!」



『おー!!!』



青葉の掛け声で俺たちは気合を入れる。



よし、なんかこのメンツならいける気がしてきた。



「今日帰ってからやるか?」



「だねだね、そうしよー!」



渓が提案すると、楓も賛成する。



「あぁ、すまない。今日は僕は少し用事があるから、遅れて参加させてもらうよ。」



「おう、いいぞ。それまでは誰かがカバーしてくれる。」



「紅くんじゃないんだ、、、。」



青葉があははと苦笑いをこちらに向けてくる。



やめて!ちょっと虚しくなるから!

俺そんなに賢くないんです!



「よし、ならそれでいこう。みんな今日はよろしくね。」



江原はそういうとささっと自分の席に戻っていった。



サッときてサッと戻るとは、、、。



コミュ力高めっすね。やはり。



そう思いつつ、今日から勉強頑張ろうと気を引き締めた。



チャイムが鳴ると同時に、江口が教室へ入ってくる。



あー、やべ。午後の授業マジで眠いわ。



よし、寝よう。江口だし別にいいだろ。



明日から、、、いや放課後から本気出しまーす。



自分に言い訳をしつつ、俺の瞼は徐々に重くなっていった。





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