第29話 桜餅様のおなーりー
「え、、、これって、、?」
青葉が拍子抜けした様子で聞いてくる。
これはもちろん、、、アレだ。
「見てわかるだろ、桜餅だよ。欲しがってたろ?」
「え、たしか桜餅は売り切れだって、、、」
ふむ、たしかに青葉の言う通り桜餅は売り切れだったな。たしかに。
でも、
「売り切れだったのは、昨日の話だろ?この桜のシーズンは目玉商品なんて毎日入荷されるに決まってんだろーが。」
「じゃあ、、、」
「そ、俺が今日朝イチでいくつかスーパーとかコンビニとか周ってゲットしたってことよ。」
俺は手でグッドサインを作り、青葉に向かってニコッと笑ってみせた。
「あり、、がと。まさか桜餅があったなんて、、!
みんなは知ってたの?ドッキリ?」
青葉がみんなを見てそんなことを聞く。
もちろんみんなは知らなぁい、何故なら俺は誰にも言わずに買いに行ったから。
ただ一つ誤算があったとすれば、お花見イベントの時間ギリギリになって遅刻したことくらいだな。
「いや、俺知らねーけど?」
「僕は知らなかったよ、気づいてはいたけどね。」
渓と江原がサラッと答える。
ん?江原さん気づいてたってマジ?こわ。
まぁとにかく、どっかの完璧超人さんにはバレてたみたいだけど、サプライズは成功...かな?
青葉は俺の今の行動で完全に軽いパニック状態だ。
本当に全く意識してなかったのだろう。
人間、意識してなかった斜め上から急に予想外の物事が起きると、困惑するもんだ。
「紅くん、、、ありがとう。嬉しい、、、。」
「さすが紅君だねー、青葉良かったね!」
青葉が喜ぶと、それに続き山吹も同感した。
「鈴風君優しいね、青葉ちゃんも喜んでるよー。」
「そっか!良かったよ。」
飯島に言われ、俺もうんうんと頷く。
よかったー、これ失敗したり、全員にバレてたりしたらマジでサプライズもクソもねぇからなぁ、、。
そんな事を思ってハラハラドキドキを収めていると、チラッと見えた江原をみると、ふふっと笑ってグッジョブと俺に合図していた。
、、、だからどんだけ見てんだよ。
あまりに気になるが、とりあえず江原が気づいた件については後回しだ。
青葉に桜餅を食べてもらわなくちゃな。
「食ってみたらどーだ?美味いと思うぞ。」
俺が催促すると、青葉もうんと頷く。
「そうだね、食べてみるよ!、、、いい匂いー!」
青葉が桜餅のパッケージの蓋を開けると、ふわっとお餅ならではの和風の甘い香りが辺りに漂った。
たしかに、いいかほりですなぁ。
「いただきまーす!」
「おう。」
「、、、んー!美味しい!もちもちだ、、、!」
そんな風にコメントする青葉を見て、全員和んだ雰囲気になる。
「おいコウ、俺の分はねーの?」
「野郎に用意する餅なんざねーよ!!!草でも食っとけ!!!」
「んだと!?」
「まぁまぁ、2人とも落ち着いて。桜餅なら、まだあるんじゃないかな?」
俺と渓の喧嘩を止めるようにして入ってきた江原がそんなことを言う。
え、マジでどこまで知ってんの江原は。
実際、俺は全員分とはいかないものの、青葉、山吹、飯島の3つは確保してある。
そんで、4つしか買えなかったので、残り一個を俺と渓と江原でわけるという形だ。
これも江原にバレていたとなると、、、。
ほんとに江原には敵わないな。
「ほい、買えるだけは買ったからどーぞ。山吹、飯島、ほいよ。」
そう言って、2人に渡すと、嬉しそうな顔になり
「え、ありがとー、紅君!美味しそー!」
「いいの?嬉しいなー!ありがとねー!」
2人ともそう言って桜餅を受け取って、青葉も含め3人できゃっきゃしてる。
そうそう、こういう光景を見たいがために女の子3つ分は確保したまであるんだよなぁ、、、、。
こう言う事いうと折角の俺の好感度的なものがガクッと下がりそうな気がするので辞めておこう。
「ほら、残り一個しかねぇから、これは俺ら3人でわけっこな。」
「おお!!さすがコウ、ありがとなー。」
「ありがとう。嬉しいよ、鈴風くん。」
「どいたま。」
俺らも俺らで蓋を開けてきゃっきゃしますかね。
高2男3人できゃっきゃとか需要はどこにあるんですかね、、、。マジで得なさそうだから、女の子のグループに混ぜてもらおうかな、、、。
いや、無理だな。それが出来ていればスクールカーストもっと高ぇわ!ちくしょうが。
そんなことを思いつつ、向こうで女の子が三人、特に青葉が笑顔で食べている姿を見て、俺も口元が緩み自然と笑顔になってしまった。
今日の花見は良かった。
俺は高校になってからのイベントで初めてで一番、良かったなと思えたイベントになった。
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