第26話 エベレストと新たなナニか
さてさて、まだまだゲームは終わらない。
さっき江原は、青葉とのハグという罰ゲームを早速拒否った。
どうやら王様ゲームというのは、罰ゲームを拒否するのは相当ノリが悪いというのが常識なのか、先ほどから俺と江原以外のみんなは納得がしきれていないようだった。
まぁ、普通こういう罰ゲーム系を断るのはかなり勇気と人望がいるよなぁ、、、。
と、俺は江原に感謝を続けつつ同情する。
「さっきは断ってしまってすまない。私情を挟むようで悪いんだけど、次からは他者との接触がある罰ゲームは禁止にしないか?勝手な理由ですまない。」
江原はみんなに頭を下げて謝りつつも新たなルールを作る提案をする。
いや、江原が言った言葉にはあり得ないほどの力がある。
おそらくは誰も反論するものはいないだろう。
「ま、まぁ?たしかに?江原の言うこともあながち間違いじゃないだろうし、俺はそれでいいよ?」
とても言えたモンではないが、俺も江原に加担するようにみんなに向かって言う。
「鈴風君、わかってくれて嬉しいよ。感謝する。」
「いやいや、間違ってない意見だし、俺もそんな感じで思ってから。」
うん、ほんとに思ってたからね?
そして、江原に加えて俺も同意したからか、認めてくれる人が増える。
「まぁ、たしかに。そういうので関係が良くない感じになってもやだしねー。」
山吹も同意のようだ。
続けて青葉と飯島も発言する。
「うん、私もそれでいいよ!」
「あたしもー、同意かな!」
それぞれが江原の意見に賛成のようだ。
良かった、良かった。
「んじゃ、全員意見は同じと言うことで、それだけ守ってゲーム再開すっか!」
「そうだね、そうしよう。」
俺がまとめて言うと、江原もうんうんと頷き、
ゲームは再開の方向へ向かう。
「なんか、、、忘れられてる気がするんだけど、、、まぁ、いいか。」
と、視界の端では誰のせいか律儀に鼻に手を突っ込みながら不満を垂れている渓がいた。
スマン、ここは抑えて。という視線を渓に送ると、納得はいってないようだが、なんとか大丈夫そうに合図を返してくれた。
「じゃあ、次の王様決めるよー!」
飯島がそう言って割り箸を掲げる。
『せーのっ!』
何人かでそう言いながら割り箸を引く。
お、俺は3番。王様ではないようだ。
誰が王様なのかと周りを見渡していると、明らかにそれっぽい感じできょろきょろ周りを見ている望月さんがいた。望月さーん?大丈夫ー?
青葉あんまり命令とかしたことなさそうだからな、、、。戸惑ってんのか?
そう思いつつ、気づいてしまったのに気づかないふりをするのもどうかと思ったので、青葉にこそっと耳打ちで伝えようと近づく。
「なぁ、王様になったなら、」
「ひゃっ!?」
「おぉ、何ごめん!」
どうやら青葉は少し戸惑っていたようで、急に俺に話しかけられて驚きの声を小さくあげていた。
しかしなに今の声、今の声だけでごはん四杯はいけるんですけど。
録音必須だったのかもしれない、、、、。
「いや、、ごめん。ぼーっとしてて、、、なに?紅くん。」
「いや、王様になったなら遠慮なく好きな番号に命令していいんだぞって言おうと思ってな。」
俺がそう言うと青葉はむーとなりながらも答える。
「そのくらいわかってるよ!ちょっと戸惑っただけ!」
「そーかそーか、悪いな。あまりにおどおどしてるから大丈夫かと思って。」
俺が言うと青葉は驚きながら問うてくる。
「え!そんなにおどおどしてた?」
俺はキッパリと答える。
「うん。してた。」
「そ、、そっか、、。なんか恥ずかしいな、、。」
少し恥ずかしがる青葉にこっちまでなんか恥ずかしくなりそうな気持ちを抑えて再び話しかける。
「まぁとにかく、なんか指名して命令しないとゲームは進まないぞ。」
「そうだね、おっけー!やってみる!」
俺が言うと青葉はやる気を出したかのようにグッと手を握りながら言う。
「じゃあ、3番と4番が鼻に手を入れてください!」
『えっ!!!?』
一同が唖然とする。
俺と同じ!?というかそれより酷いぞ!?
俺はたしかに、ターゲットが誰かわかった時点でそう命令していた。
しかし青葉は違う。ほんとに相手がランダムな状態で俺の受け売りの命令。
マジか。この子マジか。
まぁそういう素直なとこも青葉のいいとこだと俺は思うよ。
「で、何番って?」
「3番と4番。」
青葉は当然かのように答える。
俺じゃねぇか!3番って!
しかし、4番が江原ならいい!
江原の可能性もまだある!
江原こいこいとさっき自分が江原にしてもらった恩を仇で返すような思惑を俺はする。
そんなの関係ねぇ!!!
俺が選ばれたからには江原君にも犠牲になってもらうんだよぉぉぉー!!!
「あ、あたしだ、、、、。」
と、残念そうに心配そうに言うのは飯島結衣だ。
江原じゃねぇのかぁぁぁぁ!!!!
ちくしょー、くそ!俺と飯島が罰を受けるだけかよ!
悔しさを噛み締めながらも俺は自分の鼻に自分の指を刺す。痛くはないが心が痛い。
同様にかわいい女の子ながら鼻に指を刺す飯島が俺に向かって言う。
「あはは、、、。おそろい、、だね。」
「お、おう、、、、ヤなおそろいだけどな。」
アカン。これはアカン。
飯島結衣だって、普通にというかかなり可愛い系の女の子だ。
鈴風紅だって、普通に男子高校生だ。
こんなんアカン!
俺の第二の鈴風紅がイライラする、、、!
明確な場所を言うと身体の下の方、、、!
やべぇと思いつつも、飯島の顔を見るのをなんとか阻止しようと自分の脳に命令する。
が、やはり俺も男だ。
目はどんどんあられもない飯島の指と鼻と顔へ向けられる。
アカンぞ、ヤバいぞ。
「そんなに見られると、、、恥ずかしいよ。」
未だ鼻に指を入れつつ頬を赤色に染めながらそう言う飯島を見て、ついに限界が来てしまった。
「お、おう、、、。悪い、、。」
と言うと同時に、俺の身体はエベレストとなった。
新たなナニかに目覚めてしまいそうだ、、、。
すいません、飯島。
俺の鈴風紅は勝てなかったよ、、、。
俺は反省をしつつも、
なんとか自分の中の新たなナニかを鎮静しようと努力した。
俺サイテーすぎる、、、。
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