第25話 虚構ゲーム
さぁ、、、ゲームの始まりですよぉ。
たった今、俺と渓、江原、青葉、山吹、飯島による王様ゲームが始まった。
もちろん、俺と渓の狙いはただ一つ。
いつも、澄ました
俺と渓は目と目を合わせて、頷き合う。
別に目と目が合ったからって、瞬間好きだと気づいたわけではない。断じて違う。
「さて、、、じゃあ俺からいくぞ。」
まずは俺の
宣言した後、俺は舐め回すように割り箸を見る。
そして、、、じーーーっくりと選ぶ。
さぁ、、、どいつだ?
どいつが江原を苦しめるカードだ、、、?
こいつかっ!?違う。
こっちか!?違う。
、、、、、はっ!!!これだ!
俺は一つ、明らかにこれだと言わんばかりのオーラを放つ割り箸に目をつけた。
これこそが江原に勝つための勝利の
俺は盛大にこれを引くという意思を見せるために叫びながらこれを取る。
「ドロォォォォォォォォーーー!!!!」
バシッと割り箸を取る。
すぐさま結果は確認、、、しなぁぁい。
まぁ、焦るでない。
これは勝利が確定されたカードだ。
まずはじっくりと、、、、皆の表情を一つ一つ見る。
いい表情だ、、、。
さぁ、、、これが俺を勝利に導くんだよ、、、。
最大限のタメを用意した後、俺は結果を確認する。
「、、、!」
きたぞ、、、きたきた。
俺が王様だ。これを待っていた!!!
配られたそれぞれが持つ割り箸には数字が書いてある。
これは指名できる奴が持っている割り箸に書いてある数字と同じになっている。
そして俺はさっき、こっそりと江原の割り箸に手を伸ばし、俺の持っている5番とすり替えておいた。
あとは、俺が王様を引けさえすれば、5番を指名して好きなことを言って、
いやぁー、、、簡単簡単。イージーゲームですわ。
さてと、、、。
では、命令させてもらいますかね。
コウ・スズカゼが命ずる。
江原よ、俺に従え。
「んじゃ、俺が王様だ。えーと、5番はこのゲームが終了するまで、鼻に指を突っ込んでもらおう。」
「、、、、!」
さぁぁ、、、一斉にシーンとなったぞ。
命令としては十分。
たとえ完璧超人イケメンの江原君でも、これは屈辱なんじゃないー?
なに?クズだと?
はっはっは、好きに言いたまえ。
我は構わんよ。何と言われようがね。
だが、俺の目論見は刹那にして失敗する。
「おぉ、鈴風君いきなりハードだね。」
江原はふふふと面白そうに笑っている。
へっ、、今に見てろ。
その笑顔も見れるのは最後かもな、、、。
、、、、、え?
なぜ、こいつが笑っている?
ちょっとまてと俺が思考を始めた時にはもう遅い。
横から悲鳴が上がった。
「おぉい!!コウ!!どういうことだよ!ふざけんなよ!?」
あ、あんれー、、、?
どうして渓さんが怒ってるんですかね、、、?
「まさか、、、。」
俺が言うと、渓は俺に怒鳴る。
「そのまさかだよ!俺だよ5番は!!!」
あ、ら、らーーー。
だが何故だ?!どこで間違えた!?
俺の作戦に狂いは、、、、。まさかっ!
俺はバッと身体を回し、江原の方を見る。
江原は俺と目があった瞬間、ふふっと笑った。
そんななんてことない普段の江原の笑み、、、には俺は感じられなかった。
少しだけ、ほんの少しだけ、不敵に笑ったような気がしたからだ。
こやつ、、、やりやがったな?
「クッ、、、江原ァ、、、、。」
「何かな、鈴風君?」
俺は悲痛の声を上げるが、江原は余裕の笑みで俺に返し、渓は俺を睨みながら鼻に指を突っ込んでいる。
スマン、ほんとスマン。
江原め、、、。俺が思った以上にやり手だったか。
俺が江原に一杯食わされたところで、状況を全く把握していない人が3名ほど。
その中の1人の青葉が、おどおどしつつも進行しようとする。
「じゃ、じゃあ次いくよー?」
そう告げると、全員一斉に割り箸へ手を伸ばす。
「せーのっ!」
言うと同時に、各々が割り箸を引く。
「おっ、俺が王様だぜ。」
渓が王様となった。
何か嫌な予感がするが、俺の番号はあいつは知らないわけだし、大丈夫だ。たぶん。
「んじゃー、2番と3番がハグで。」
ハグか。
まぁ、王様ゲームとなればシンプルなところじゃないだろうか。
ひとまず、自分への仕返しでは無かったことに俺は安堵する。
「お、僕が2番だね。」
なるほど、2番は江原か。
となると、、、誰かが江原とハグか。なるほど。
「あ、3番私だ。」
「なにぃぃ!!!??」
あまりの驚愕に声が出てしまった。
最悪だ、、、青葉が選ばれてしまった、、、。
となると青葉が江原とハグ、、、。
ぐぬおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
俺は渓の方に向き、
「おい、、、。仕返しか?喧嘩なら買うぞ、、?」
「おうおう、俺の今の顔を見てよくそんな台詞吐けたもんだなぁコウ?自業自得だろぉよぉ?」
俺は怒号をあげそうになるのをなんとか我慢して、拳を収める。
くそが、、、、!元はといえば俺が悪いが、、。
ちくしょう王様ゲームなんてやるんじゃなかった!
「じゃ、じゃあ、、、。」
青葉が少し頬を染めながら江原に向く。
罰ゲームを断るほどノリは悪くないのか。
だが、今はそれが逆効果だ、、、。
江原と青葉の距離が近づく。
ぬわぁぁぁぁぁぁ、、、、ちくしょぉ、、
ちくしょう、、、。
耐えながらも覚悟を決め、見届けようとする。
「ふっ。」
しかし、江原と青葉はハグの途中で止まった。
江原が青葉の肩を両手で持っただけだ。
「やっぱり、僕はやめておくよ。望月さんにも、他の人にも申し訳ない。」
一同は驚きながらも、
「えぇー、見たかったなー。」
と、飯島は言う。
続けて山吹も、
「まぁ、本人が拒否なら仕方ないかーー。」
と言った。
江原、、、。江原、、、。
えはらぁぁぁぁぁ!!!!!
本当に頭が上がらなかった。
おそらくアレは俺を思ってのことだ。
申し訳ねぇ、、、だが、感謝するぞ。江原。
「邪魔はできないよ、、、僕にもね。」
江原はそう言いつつ、青葉にも謝る。
「ごめんね、望月さん。僕がヘタレなばっかりに。」
「いやいや、そんな。私も、なんか嫌な感じ出してたならごめん、、、。」
俺はただ江原の方を向き、
お辞儀をして感謝をしていた。
ありがとうございます江原さん。
「なんだよー、江原童貞かよ!」
そう言った渓の口を、俺は両手で無理やり閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます