第23話 必要とされ、花見は開幕


俺はいつも孤独ぼっちだ。



いや、孤独というよりは孤高と言った方がまだマシなのかもしれない。特に気持ちが。



俺は別に嫌で一人な訳ではない。



別に一人だって楽しいし、むしろ羽を伸ばして気が楽まである。



ただそんな中、変に友達ヅラして関わってくるやつはダメだ。




何が危険か、それは自分の気持ちだ。



俺はたしかにスクールカーストで言えば下の上がいいところだ。



でもそれは、自分一人の幸せや充実感を邪魔される理由にはならないのではないかと俺は思う。




だってそうだろ?




誰だって、自分の趣味や好きな事に介入されて邪魔されるのは嫌なはずだ。



俺だってもちろんそうだ。




だから極力人を避けて、本当に仲良く、、、というよりそばにいて嫌じゃない人物だけを近くに置くべきだ。




そういう意味では、俺はまだ自分を除き二人にしかそう思っていない。




一年生になれば友達が100人できる?




馬鹿を言うな、ありえない。



仮にできたとして、そいつら全員が心の底から認めている親友ともだちなのか?



俺は、、、、、。




友達100人か親友1人なら、迷いなく後者を選ぶ。




ただそれだけのことだ。




それだけの事だった。そうだったのだ。




俺が誰かを必要とするならまだわかる。



俺だってたまに、、、というかかなり人を頼る。



馴れ合いじゃない。頼るんだ。その先はない。




だが、



誰かが俺を必要としていることなんてあるのか?



あっていいのか?




これまで人を避けてきて、

親友以外の友達には心の底からは信頼していなかった俺が、、、



必要とされる事なんてあっていいのか?




あまりの光景に絶句し、言葉が出ずに棒立ちになっている俺に向かって、ただ一人の親友は言う。




「遅かったなコウ、待ってたぜ。」



「......。」




それでいいのか?




「紅くん、待ってたよ!」



「.....。」




本当か?




「来てくれたね、始めようか。」




「.....。」




はじめてもいいのか?




棒立ちで唖然としている俺に、渓が肩を叩く。




「ほら!何呆けてんだよ!こっち来いよ!」




「お、おぉ、、、、。」



ろくな返事もできないまま、俺は敷いているシートに座る。



俺は、、、、。



この人たちに、求められていたのか?



わからない、わかりたい。



わからないことは素直に聞きなさいと言われたことがある。なら、、、、



聞くなら、それは今だ。




「えーと、、、待たせて悪い。あー、、、待ったか?」



そして、渓と青葉が口を合わせて言う。



『待ったよ!!!』



待った、、、、のか。




俺が来るまで、待ってくれていた。




何も食わず、何も遊ばずに、




俺を待ってくれていた。



なら、俺は、、、




それに全力で応えるべきだ。



「待たせてしまってすんませんでした!」




俺は頭を下げる。



「ったく、、、やっといつものお前に戻ったか。」



「うんうん、全然大丈夫だよ!」



「僕も、構わないよ。」



「よーし、お花見スタートだねー。」



「鈴風くん、楽しもうね!」



渓、青葉、江原、山吹、飯島がそれぞれ言う。




俺は、、、、。



「あぁ!!!楽しもう!!!」



そう俺が告げると同時に、バッと青葉がコップを掲げて宣言する。



「よし、紅くんも来たことだし、お花見楽しむぞー!!」



「かんぱーーーい!」



俺と青葉以外のメンバーもそれに続き大きな声で、



『かんぱーーーい!!!』



そう大きく大きく叫んだ。




叫ぶと悩み事やマイナスな気持ちは失せるらしい。



今回俺はそんなことを教えてもらった。



江原がみんなに向かって皿を出しながら言う。




「さぁ、鈴風君も来たことだし、お寿司もお餅もある。ジャンジャン食べよう!」



各々がうんうんと頷く。



俺も、、、、そういえば朝食を抜いていたことに気がついた。



お腹が減ってはなんとやらだ。



ここは素直に、自分で買ったものを自分で食べましょうかね。なんか虚しいな。



「じゃ、寿司もらいー、、、、、美味いなこれ。」



「たしかに、美味しい!」



俺が感嘆の声をあげると青葉もうんうんと同意してきた。



うまい、なんだこれうまい!



パクッと一口口に入れた瞬間、刺身独特の美味しさが溢れ出してくる、、、!



昨日の夜に買ったものだから、鮮度が落ちて味も落ちている、、、、なんてことはなく美味い。




たしかに、すこし新鮮さは薄れているが、

これはこれで、、、、!



「うん、たしかに美味しいね。みんなで食べるお寿司は美味しいよ!」




またコイツは、、、、。



江原はどーも天然で良いことを言うタイプらしい。



そーゆーのおばちゃまとかにすごーく好かれますよ。



江原くんカッコいいから襲われないようにね?



逆に自分から襲ってそう。



それだと江原じゃなくって狼原じゃん、つってな。



俺おもんな。



そんなこんな考えながら、俺はまた一口寿司を頬張った。



いやぁー、学校の金で食う飯は格別だね!!



美味さのレベルが違う。



人の金最高。



そして俺は、パクパクと食べ過ぎて無くなってきた寿司の最後にとっておいたマグロを一口、乱暴に口へ放り込んだ。




んんーーー、うまいね。






前言撤回、花見やっぱ最高だわ。













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