第19話 妄想よりも単純な幸せ


さてさて、あれから俺と青葉は2人で歩いて電車に乗り、電車の揺れで青葉が俺の方に倒れてきて、



「おっと、、、あぶないぞ?」



「うん、、、ありがとう紅くん。」



そんな会話をしつつ、頬を朱色に染め、2人で夜になる前の夕焼けの下を歩く。



そんな、幸せな感じでスーパーに到着。








.....っんなわけねぇだろぉぉぉぉぉ!!!!!!!





ざっけんな。マジでふざけるな。





まず電車。



【 電車の揺れで青葉が俺の方に倒れてきて、



「おっと、、、あぶないぞ?」



「うん、、、ありがとう紅くん。」  】




現実⤵︎




満員電車ァァァァァァァ!!!!!




狭い!重い!暑い!苦しい!死ぬ!




きっちりラッシュに巻き込まれてしまった訳だ。




ムードも展開もクソもねぇ。





そんで道中!




【頬を朱色に染め、2人で夜になる前の夕焼けの下を歩く。



そんな、幸せな感じでスーパーに到着。】




現実⤵︎





頬!!!染まらねぇ!!!!




電車降りる!!!真っ暗!!!!




夕日とっくに沈んどる!!!!







ーーーークソが。





そんなこんなで、何もいい感じの事は起きず、制服デートなんてのは名前だけで、

むしろ学校生活の延長上くらいの気持ちだった。




ちくしょぉ、、、。



期待はしてなかったけどなぁ、、、




現実は苦い。苦すぎる。




もう現実苦くていいから、その他全てあまあまにしてくれ。頼む。




と、そんな地獄のような行き道を歩き、スーパーに到着した。



スーパーの入り口付近には、既に江原が到着しており、話しかけると同時に何かを渡してくる。



「二人とも、お疲れ様。この感じだと帰宅ラッシュに巻き込まれたんじゃないかな。夕方と夜の間は特にキツイからね。良かったらこれ飲んで。」



そう言って江原は、俺と青葉にペットボトルのお茶を差し出す。



「え、いいのか、これ?」



「悪いよ、電車乗っただけなのに。」



俺と青葉は、どちらも江原が差し出してきたお茶を遠慮する。



江原君やばすぎね?



有能すぎんだろ、、、。




たしかに俺も青葉も満員電車のクソ暑い中、暗い道を歩いてここまで来た。



だがそれは江原も同じじゃないのか?




流石に悪いと思い、俺は謝りながらお茶を受け取る。

いやー、、、謝りながらも受け取っちゃうあたり、俺は俺だなぁと思いますね。はい。



「悪いな、江原。」



しかし江原は笑いながら、



「いやいや、構わないよ。僕は自転車で来たから、ラッシュには巻き込まれなかったんだ。快適だったよ。」




「そうか、、、、、、ん?」



俺は、引っ掛かり1つ問う。



「今、自転車って言ったか?」



すると江原はなんで質問されたのか腑に落ちないのか、はてなをつけて答える。



「そうだけど、、、何かおかしかったかな?」



「いや、おかしいもなにも、お前の家からここまで5キロはあるだろ?自転車で来るならまだ到着できないくらいの時間なんだが?」




おかしいよな、5キロあるのに10分程度で来れてるのは。普通は早くても20分〜30分はかかるだろ。



「いや、自転車で来たよ。電車より早く来ようと思ってね。間に合って安心したよ。」




あーーー、、、やはりこいつは江原海斗だな。



普通の人って電車より早く自転車で来ようと思いますかね。思わないよね?



思うのかな、、、、。




江原といると、常識とはなんだったっけ?となってしまうことが最近増えた。



俺もヤバいかな。



「江原くん、、、すごいね。あと、お茶ありがとう。いただきます。」



「あぁ、二人ともどうぞ。お疲れ様。」




なら、頂くとしますかね。



一服一服ぅぅぅ。





「じゃあ、そろそろ行こうか。」



「おう。」



「うん!」



スーパーの入り口のところで座ってお茶を飲みつつ数分間休んでいたが、江原がそろそろいこうと催促をする。



もちろん、俺も青葉もそれに同意する。



お茶美味しかったっす!



しかしまぁ、最近のスーパーって進んでんだな。



入り口にイートインスペースがあるとは、、、!



まぁ、なぜこのスーパーに来たかというと、イートインがあるからではない。そんなの今初めて知ったくらいだからな。



そう、理由は簡単。



このスーパーはもはやスーパーよりホームセンターやデパートに近いくらい大きくて品揃えも良いらしい。



でも、こんな良いスーパーが家の近くにある人はいいよね。便利で。



俺なんか近所にあるのちっさいスーパーと商店街だよ?



でも意外にそれが良かったりする。



とにかく商店街とかは値段がバカ安いからな。



いいぜ?商店街はよー。みんな元気だし。基本。




さて、地元を褒めつつスーパーの目的の品をちらちら見ながら探していると、江原が口を開く。



「うーん、、、このスーパーは大きいからね。三階まで全部見ていたらキリがない。とにかく僕たちが買うものを優先で買いたい。ここは二手に別れよう。」



「なるほどな、俺もそれが良いと思う。」



たしかに、名案かもしれない。



このスーパーは、

一階 食品 二階 保存食品 三階 生活用品


という作りになっている。デケェな。



ということで今回買い出しに必要なものが、


・六人分の腰掛け椅子、お箸、コップ、飲み物、


あとは、和菓子はお好みでどうぞと真餅先生が言っていたな。



俺が脳内でしおりをおさらいしていると青葉も賛成の意を示す。



「私も、それでいいと思います!」



と、納得のようだった。



「じゃあ、僕は三階で食品以外のものを揃えてくるから、二人は一階で食べ物系を買って欲しい。」



異論は無い。



しかし、食品以外がかなり多いのに、

全て自分の管轄にしてしまう江原はやはり凄いな。



それくらいなら俺でもできそうだけど。



江原がいるんだからやらないけどね?



「おう、了解だ。」



「オッケーです!」



俺と青葉は同時に返事をする。



「よし、じゃあまた後で!」



そう言うと江原は三階に上がっていった。



こういうところでもエレベーターとか使わずに階段でスタスタ上がっていく江原君。


嫌いじゃねぇなぁ。




「さ、俺たちも和菓子とか適当に探すか。」



「うん、そうしよう!」



青葉が元気に頷く。



「何食いたい?」



「うーん、、、そうだなぁ。予算の事もあるし、あんまりいっぱいは買えないよねぇ。」



青葉はしゅんとした様子でそう言う。



あーくそ!全部買ってやりたくなるじゃないか!



これが父性ってやつかな。はやくね?



「あ、桜餅とか食べたいかな!」



「お、いいな。桜餅とか俺も長いこと食べてないからなぁ。」



「そうしよう!」




そう言って、

俺と青葉は和菓子コーナーに歩き出す。




あんな妄想はしていたが、こういうシンプルな形も、実は幸せなのかもしれないと俺は思った。








「桜餅、、、か。良いチョイスするね、あの二人は。」






そんな俺たち二人を江原が階段のところで微笑みながら見ていたことを、俺と青葉は知らなかった。

















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