第17話 花見会議
「じゃあ、買い出し担当は、僕と鈴風君と望月さん。で、下見&場所取り担当は本堂君と山吹さんと結衣で行って欲しい。いいかな?」
江原のテキパキとしたまとめ力、そして仕切り力のおかげで、全員満場一致で頷き、OKをだす。
うーん、、、欲しい物ですねぇ。その力。
江原の凄さにまたもや驚かされつつ、
割り振られた担当の人物を目で追いながら確認していく。
えーと、、、
とりあえず、俺の担当は買い出しっと。
大丈夫だろうか。
普段俺は、親がいない時などは自分で料理を作ったりするものだが、花見となると何を用意して何を作ればいいのかがわからない。
なにせ今まで人生で花見なんて家族と小学校低学年の頃に行ったやつしか記憶にないし、俺の身体も知らないと言っている。厨二くせぇな。
生粋の陰キャを舐めてもらっては困る。
花見なんてのは二人とかで行くようなものではないだろう。三人以上となれば、既に俺の
だから厨二くせぇな。
しかしそんな少し能力不足の俺を補うどころか、俺が補えるかどうかと考えてしまう立場にいるのが江原という男だ。
江原なら花見の1回や2回、、、いやいや10回や20回は人生で行ってるだろう。会食とかで花見してそうじゃね?
それに、青葉だって俺よりは知識があるだろう。
花見だって、結構行ったこととかあるんじゃないだろうか。そうなるとかなり戦力になる。
もうこの時点で俺は勝ち確定。
あとは適当に買い出しに着いて行って、先陣江原、中堅青葉みたいな感じの並びで行けば、俺は優雅に散歩をするだけで事は終わるだろう。
ちなみに今のでいくと、先陣が江原で、中堅が青葉の場合、俺が大将ということになってしまう。
急に荷が重くなったな、、、。
それを例に考えるのは良くないと判断した。
俺寿司とか握れねぇし。
そんな冗談めいた本音を自分の中で完結させていると、渓が俺に近づいてくる。なんだよ。
「おい、、、コウ。俺の担当班は、俺と楓と飯島だよな、、、?」
何をいうのかと思えば、、、。
プリントに書いただろ。
渓のボケの始まりかもしれないので、一応相手はする。
「おう、それがどうした?」
「それってよ!完全にハーレm」
「黙れ。」
こいつ、、、まだそんなこと言う年頃なのかよ。
俺は、男子が自分だけで、周りが女子しかいない状況は別にハーレムじゃないってことを強く主張したいところである。
いるんだよ、たまに男1人で周りが女だけの状態を見ただけでハーレムとかいうやつ。
アレなんっっっっにもハーレムじゃねぇからな!?
わかってんのか!?
ハーレムってのは、男1人に、少なくともその男に想いを少しは寄せてる女の子が集まる現象をそう言うんだよ!!!
俺の場合ただの地獄だから!ほんとに地獄だから!
GOTOヘルだから!!!
あれは忘れもしない中学3年の合宿、、、、。
たまたま、女子だけの行動班に俺が1人で入れられてしまったあの日。
俺は、、、ずっと空を見ていたよ。
空は青いんだ。空は広いんだ。
空は、、、現実逃避なんだ。
前を向こうなんて綺麗事があるが、
前は向いちゃダメだ。あいつらがいる。
聴きたくない声が聞こえてしまう。
上を向こう。上を向けば、なにも囚われることはない。自由だ。
自由、、、なんだ。
周りで、
「わぁーお、紅1人!?ハーレムじゃーん。良かったなガハハハ!」
とか言いながら、男子しかいない班で思いっきり楽しんだやつには天罰を下そう。
俺はあのセリフだけは許さない。絶対に。
なにがハーレムだ。なにが桃源郷だ。
ふざけるな。
以上です。
黙れの一言にその意味を全て孕ませて渓に伝えた。
流石の渓もそれ以上言ってくることはなかった。
すまん、許してくれ。俺はそれだけは我慢ならないんだよ。
俺が怒涛の怒りに等しい何かを展開する横で、ガールズトークは盛り上がっていた。
「お花見って言っても、一応文化鑑賞の一環らしいねー。」
飯島が思い出したように言う。
それを聞いた青葉と山吹はそれぞれに自分の意見を言い合う。
「へぇー、そうなんだー。まぁでも、お花見だから全力で楽しもうよ!ね、青葉!」
「だね!このメンバーなら絶対楽しいよ!」
めちゃくちゃ平和な会話だなぁ、、、、。
さっきの俺の脳内と渓とは真逆の会話をしていて思わず苦笑いをしてしまう。
しかし可愛い女の子達がこうやって仲良く喋っているのは悪くないもんだ。
下品さのかけらもないこの三人の会話。
聞いているだけで心が浄化されそうだ。
青葉と山吹と飯島、この三人の会話をもっと聞いていたいと思えるほどにほのぼのとしていた。
かえあおゆい、、、アリかもですねぇ。
さぞ俺の顔は気持ち悪かっただろうと思う。
だが、俺も紳士だ。
女の子達が楽しそうにお喋りしているところに入ったりするほど不調法者ではない。
こっちは男三人だ。特に話すこともなく、買い出しの品確認だけを済ませておく。
そしてメンバーが集まって数十分が経った頃、真餅先生が喋り始める。
「はーい、とりあえず授業そろそろ終わる時間なので今日はここまでとしますー。後は各々グループで相談して買い出しなどの準備をしてくださいー。では、解散!」
金混冠混とチャイムが鳴り、花見説明会の授業は終了した。
荷物を片付けて、自分の席に戻ると、江原が話しかけてきた。
「おつかれ、鈴風君。お疲れのようだね。」
「あぁ、疲れたよ。すっげぇ疲れた。」
すると江原はふふと笑い、話の本題に入る。
「疲れてるところ悪いけど、伝えさせて欲しい。今週末の昼からお花見だから、朝9時に買い出しに三人で行こうと思うんだけど、大丈夫かな?」
なるほど、朝に各々で準備する感じか。
「オッケー、大丈夫だ。んじゃあ、またテキトーに連絡してくれ。」
そう伝えると、江原も納得したように頷き、離れていった。
花見は今週末。
買い出しも同日。
このメンバーには江原がいる。
何も不安はない。
いっちょ、お花見やりますか!
そう意気込んで、
少し残っていたペットボトルの紅茶を一気に飲み干した。
ふぅー、効くねぇ。
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