第16話 脈ナシ


「そんな感じで、各グループごとにシートを敷いてお花見を楽しみながら自然に触れるというのが今回の目当てです。みなさん、しおりに書いてることをしっかり読んで、楽しみましょうー!、、、ぜぇ、ぜぇ、、、。」




最後の方息切れ聞こえてますよー、先生ー。



先生は生徒が元気すぎて過労死する一歩手前で説明を全て終え、書類などをまとめ始めていた。



良かった、、、過労死なんてされたら、自分も将来そうなるんじゃないかという恐怖に駆られて、夜しか眠れない日々が続き、働きたくなくなるところだった。危ない危ない。



心底働きたくはないなと思いつつ、渓が話しかけてくる。



「でも、花見のグループも一緒になれて良かったな。基本は5〜6人で一つのグループらしいけど、この四人が揃うのは嬉しいよな。」



たしかに、俺たち四人は何故かいつも固まっている様なイメージがある。



固形物って好きじゃないんだよな。



硬いし、溶けにくいし、いいところもあるんだけどね。



まぁ、渓が言う通り、一つのグループにつき5〜6人というのは、俺のクラスの人数が33人なので無難かもしれない。



「たしかになー、まぁこの四人ならとりあえずテキトーに済ましてオッケーだしな。」



「もう、花見はテキトーじゃダメでしょー。紅くんぽいけどさー。」



「はい、やります。全力でやります。」




青葉に指摘されてしまった、、、。



俺のダメなところが出てしまった、、、くそう。



「でも、私たち以外にも二人いるんだよね?私たちのグループ6人らしいし。」



山吹は指を頬に当てながら考えるようにして言う。



「そーだな、えーと誰だっけ?江原、、、と?」



渓も江原しか思い出せないようだ。




俺なんか江原いるの初めて知ったぞ。



なにその全能感、もう準備も後片付けも全部江原がやってくれそう。それは可哀想か。



「えーとね、、、江原くんと飯島さんかな?」



「飯島かぁ、、、、ごめん誰?」




俺は青葉にわかったように相槌を打ったが、わからないので本音が出てしまった。



飯島か、、、。どこにでもいそうな名前だからか、俺の性格上か、誰のことだかわからない。




と、そんな事を考えていると真餅先生が再び話し始める。



「じゃあみんなー、班の人同士で集まって持ち物とかを決めてねー。」



なるほど、それなら対面できるから名前くらいは覚えられるかもしれない。



まもなく、江原と飯島?と思われる人物が俺たち四人がいる席の近くに来た。




「やぁ、鈴風君。一緒になれて嬉しいよ、よろしくね。」



相変わらず爽やかっすねぇー、、、、。



江原兄貴は今日もカッコいい。




「はーい、私飯島結衣です。たぶん江原くん以外とははじめましてかな、よろしくね!」



そういって、元気で明るい様子で飯島結衣という女の子が江原の横からニョキっと出てくる。




たけのこかな?



江原というエネルギーの源みたいな人物から栄養を吸って生きているのだろうか。



そんな錯覚すら起こしてしまう。




「よろしくな、飯島。俺は本堂渓、仲良くしてくれ。」



「よろしくー、私は山吹楓。花見楽しもうね、結衣ちゃん!」



「よろしくお願いします、えーと、、、飯島さん。」




みんながそれぞれ飯島結衣に挨拶をする。



だが青葉だけはどこか少しよそよそしい。



人見知りなのだろうか?




照れる青葉、恥ずかしがる青葉、、、、、



アリっすねぇ、、、。





というより、俺だ。俺だけまだ何も言ってねぇ。




くそ、勝手に渓が始めやがるから、、、。



「えーと、俺は」



「こいつは鈴風紅、俺の親友こと悪友だ。よろしくしてやってくれ。」




渓がいきなり割り込んできて俺の紹介をする。



なんなんだよ、、、。お前俺のことどんだけ我先に紹介したいんだよ。




天皇に嫁ぎにいく女の父親かよ。



いつの時代の話してんだ俺。




まぁ、言われてしまったものは仕方ないので、俺が言う手間が省けたと思おう。




「あー、、大体そんなかんじだ、よろしく飯島。」



と、俺が諦めたように言うと、飯島は笑いだす。




「ふふっ、今の怒らないんだ?鈴風くん。」

 


なんだ、、、そんなことか。



俺の初対面のルックスで笑われてるならどーしようもないからどーしようかと思ったぜ。




ったく、、、冷や冷やさせやがる女だ。



「まぁ、こいつとは昔っからの付き合いだからな。慣れてるよ。というより俺が自己紹介するっていう手間を勝手に省いてくれたと思えば、怒りなんて湧かないよ。」



と、素直に伝えた。すると飯島はさらに笑いだし




「あははっ、鈴風くんめっちゃ面白いよ!そういう考え方もいいんじゃないかな?」




あー、、、、。終わった、、、、、。




おもしろい男認定されちゃいました、、、、。



それ男子からしたらなんも嬉しくねーんだよなぁ、、、、。




女子からしたら、男子からの




「ふっ、、、おもしれー女。」




は、きゃーとときめくかもしれないが、



男子が女子から受けた時点で、もしその女子が可愛かったりした場合、大抵の男子は絶望している。




はぁ、、、これで飯島さんルートはないわけですね。




ちくしょーめ、、、。




まぁ初対面だが言ってしまえば飯島結衣は可愛い。




クラスの中では、江原グループについてるだけあって、かなり可愛い方だ。




そんな子からおもしれー男認定されちゃったら、、、落ち込まないわけないよね、、、、。




てか、江原グループって代表取締役社長江原海斗って聞こえそうな企業みたいだな。



数兆単位で利益取ってそう。偏見だが。




しかし江原は社長やったり、裏社会取り締まったり、色々なとこでトップとってんだな。



すげぇな。江原。やべぇな。江原。




別に狙ってはないが、飯島から脈ナシだったことと、江原が色々取り締まってる事への驚きが混ざって、すごく変な気持ちになっていると、渓が話しかけてくる。



「大丈夫か?すんげぇ複雑な顔してるけど。」



「あ、あぁ、、、大丈夫だ。」



かろうじて返事をする。



ヤバいな、、、今の俺にはちと花見は厳しいかもしれない。



頑張ろう、、、。




「よし!じゃあみんなで花見楽しもう!」



「「おー!!!」」




5人は集まっておー!と掛け声をしながら楽しみにしていたが、





俺はそんな気分には少しなりづらかった。

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