お花見と春と桜餅

第15話 イベントと桜の兆し


始まって欲しくなかった新学期もついに始まりを迎え、特に印象に残っている始業式の日から1週間が経った。




1週間も経てば、新しいクラスといえども人間関係やグループ、クラス内カーストなどは確立されてくる時期だ。



休み時間の教室を見渡してみると、あっちでは男子がすこし脳のない遊びでギャハハと喚き散らかしている。



そっちを見れば、少しカースト高めのちょいギャルな女子達が集まって戯れている。いかにもビッチ感満載だ。




そして、このクラスでも誰もが認めざるおえないトップカーストグループ。




そう、それは、、、、、




江原組こと江原から構成されているグループだ。




なんかヤ◯ザっぽいな。怖い怖い。




江原中心となっているあのグループは、見る人誰もがトップカーストだと思うくらいにオーラがあるような感じだ。




江原といえば、人間離れした色々な物をもっている男だ。



例えば、この前の新学期テストの成績。



江原はぶっちぎりの学年1位、さらには全科目満点を叩き出すと言うバケモノっぷりを初手で全員に、披露したわけだ。



ほんとやばくね?



ちなみに俺は学年37位(この学年は全員で99人)



え、でも俺スタートでいい結果残してモチベ上げようと思ってたから、今までのテストの中ではトップクラスに頑張ったんですよ?これでも。



しかし、江原の話をした後だとなぁ、、、、。



江原の実力の前では全てが霞むのか、、、、。



江原やばし、強し。



まぁ、逆に言えば江原のイメージが強すぎて江原の周りの人間が誰なのかわからないまである。



人の名前を覚えるのが定評の俺だが、流石に江原は覚えてしまった。たぶん。




江原の話ばかりになってしまったので話を戻すが、



俺は、俺、渓、青葉、そして山吹

という4人でいつメン的な感じになってしまった。



本当に気づいたらなってました。



まぁ、偶然なんだが、どこぞの絶賛生徒のみぞおちにエルボー入れて2週間謹慎になっているなんとか先生の始業式の朝の席替えで、俺と渓は前後になり、俺の横に青葉。そして俺の斜め前に山吹という配置になっていた。




まぁ、俺たちは席が近いからというのもこのいつメンになった事に納得のいく解答だろう。




さて、どこかの謹慎になっている先生は置いておいて、2週間臨時で担任を受け持ってくれることになった真餅先生というなかなか美人の先生が教室に入ってきた。



そうか、次の時間はHR《ホームルーム》だったな。



どうやら、新学年早々にイベントがある様だ。



今日のHRでは、その説明がされるらしい。



あまり聴き心地の良い物ではないチャイムが鳴ると同時に真餅先生が話し始める。




「えーと、今日は火曜日ですが、みなさん今週末の金曜日にあるイベントは覚えていますかー?」




どこぞの子供番組の様な口調でクラス全体に話しかける。



高2ともなれば、そんな子供騙しのような、みんな教えてくれるかなー?で聞いている本人が全部知っているという事実はもちろん知っているだろう。




ここいらで、真餅先生に舐めてんのかゴラァと言い出す男子生徒が現れてもおかしくなさそうだ。




でも、20代の真餅先生とそれに怒鳴る思春期の男子って何か起こりそうで怖いなぁ。



いや、1番怖いのはこんなこと考えている俺か。



そんなことを思っていると、クラス中から声が上がった。




「はぁーーーい!知ってますよー!」


「なんかアレだよね!お花見するやつ!」


「いいなぁー楽しみー。」


「餅食べたーい。」



と、驚くほど素直なみんなに俺は驚いてます。



てか、最後のやつなんか餅食いたいだけだろ、

スーパー行けよ。



思ったよりみんなは真餅先生の事が嫌いじゃないらしい。



たしかに真餅先生はいい人だし可愛くて若いので、みんなから好かれるのも納得だ。



そんなことを思っていると、前にいる渓が俺の方に振り向いて話しかけてくる



「でも、花見もいいよなぁー。普通に楽しみだわ。」



まぁたしかに。



「まぁーな、俺もめちゃくちゃ久しぶりすぎて作法とか忘れたけど大丈夫かな?」



そんなおとぼけたことを言っていると、横から可愛い小さな手がビシッとツッコミをいれてくる。



「ふふ、紅くんは面白いね。お花見に作法なんてないから大丈夫だよ!」



そう言ってきたのは望月青葉だ。



あの日助け合った仲だ。すっかり仲良くなってしまった。



その青葉の言葉に俺の斜め前の席の女の子も話に参加してくる。



「でもでも、もし古ーい作法とかあるかもしれないから、今度おばあちゃんに聞いてみるよ!」




「『それこそねーだろ笑』」



俺と渓は同時に山吹楓にツッコミを入れた。



こうやって四人で話している時の空気は俺は嫌いじゃない。



それは冬越しの冷えた身体に、というより人肌恋しかった心に、暖かみを与えてくれるからだろう。



それは決して、春が暖かいからと言うわけではないだろう。



だがそんな暖かい空気も太陽が直で割り込んでくれば、眩しすぎてそれどころでは無くなってしまう。



「でもね、花見にも作法というかマナーというのは一応あるんだよ。例えば、桜の木には触れない。これは一般的で常識なんだけど、あまりわかっている人は少ないらしい。桜はデリケートだから、あまり触ってはいけないんだ。」



そういって、知識を広めつつ割り込んできたのは、俺の二つ横の席、みなさんご存知、江原海斗君だ。




「他にも、飲酒によるトラブルを防いだり、ゴミや食べ残しの片付け、処分。それらも花見の作法に当たっているんだよ。そこはやはり環境の為にもみんなで守らないとね!」



太陽のような暖かみと頼りがいでそう言われては、もはや反論を述べる奴が悪なのだろう。



彼の言うことは全て正しいかの様なオーラを放っている。



何この人、花見のまとめサイトの管理者とかですかね?もしくは、花見大好きさんとかですかね?



ていうかまず、席が二つも離れている俺に話しかけてくるとか江原俺のこと好きすぎだろ。




いや別に何も嬉しくないんだが。




そんなこんなしていると、真餅先生は困った様に、



「み、みんなぁー、、、楽しくて喋りたい気持ちはわかるけど、説明するからちょっと聞いてね!」



だが、雑踏は止まない。



俺たち四人と完璧超人さん一人



クラスで口を閉じたのはこの5人だけだった。




「み、みんな、、、、、。話を聞いてく、、、れ、、、。」



真餅先生は、お手上げですと言わんばかりのポーズで声も弱々しくなっていった。




こんなクラスで新学期早々大丈夫なのだろうか?




2週間とは言え、早くあの先生に帰ってきてほしいと言う気持ちが驚くことに少しだけ湧いてしまった。














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