第10話 春の訪れと新たな出会い


目を覚ますと、既にさっきまであった人の温もりは失われており、今はただ、窓から入ってくる春風を浴びながら、んーっと伸びをして、俺は起きた。



どうやら、また数十分ほど寝てしまったようだ。



もう、始業式はとっくに終了し、始業式の後の学期説明会も終わり、今は完全下校の時間になってしまっていた。




俺はといえば、今日は学校に来て渓と雑談をした後、担任が江口になったと分かって、急に席替えなんかを始めて、、、、、



そして、望月青葉が見つからずに探しに行くこととなり、いざ場所が分かっても、途中の階段から落ちて怪我をして保健室に運ばれ、眠り、、、、、




そして、保健室で目を覚ましたはいいものの、誰もおらずにまた眠り、、、、、



起きたかと思えば、目の前に探していた望月青葉がいて。



そのまま教室に帰る途中に不良の三年生に絡まれ、喧嘩が始まって、俺はボコボコにされてそのまま意識が飛んで、保健室でまた眠り、、、、、




あれ?俺今日寝てばっかじゃね?



というより、睡眠以外にしてる事が、校内ダッシュとガチ喧嘩って完全に俺が不良じゃねぇか。



一応、これまで自分なりには真面目に学校生活を送ってきたつもりだったので、自分が不良かもと思ったのはこれが初めてであった。



よし、明日からはさらに真面目に生きよう。



そう決心した。





さて、そろそろ流石に俺の聖域サンクチュアリから出て、家にでも帰りますかね。



江口先生には、始業式のしおりを読んでおくことと、高校説明会については、特に重要な事は言ってないので、これまで通りに過ごして、適当でいいとの事だった。



大丈夫なのかあの担任は、、、、。



それでも教師なのだろうかと心配になりつつも、別に俺が嫌いな考え方でもないので、嫌ではなかった。




保健室を出て廊下を歩いていると、前までとは違い風が吹いても、寒いという感覚ではなく、涼しいもしくは少し暖かいような、春の訪れとはまさにこの事なのだろうと感じさせられた。



春といえば、思いつくものは大体の人は桜や出会いや別れであろう。



今まで出会った仲間とそれぞれの道を行くために別れ、桜が舞う頃にまた新たな仲間と出会う。



そんなイメージが春にはあるだろう。



でも、俺は少し違う。



春といえば、あれだな、桜はわかるけども、季節が巡ってまた戻ってくる実家のような安心感が春にはある。



めーぐりめぐってeveryoneして、何かが待っていそうな季節が春である。




もちろん俺には春が出会いと別れの季節なんて思う事はあまりない。



なぜなら、特に別れるような友達もいなければ、出会ったとして、目と目が合ったらバトルだ!的に目と目が合えば友達!みたいに人生甘くない。




まぁ、春といえばーーーアレだな、いっちばん過ごしやすいし、気持ちが重くもあり軽くもある。




そんなかんじだ。



と、そんな他愛もない事を考えながら、俺は自転車通学なので、一人で帰ろうと駐輪場に着いたところ、見覚えのある顔が、、、、いくつだ?



あっ、1つありました。



いや、、この場合は1人か?



そんなことはどーでもいいが。



「よお、、、さっきは世話になったなぁ、、?」



一瞬物覚えが悪すぎて、誰かと思ったが、古傷が痛んだせいで思い出してしまった。




あー、、、俺が殴って10倍返しされたあの人か。



これ以上関わる必要、、、というか関わりたくもないんだけど、、、、。



俺は首を傾げながら、



「えーと、、、まだ何か御用ですか?」


と尋ねる。



さっきよりは丁寧な言葉遣いのはずだ。



しかし相手は癇に障ったのか、声を荒げ、



「用?んなもん、テメェのせいでこちとら停学処分になってんだよぉ、、、。」




いや知らないから。

完全にあんたが悪いでしょ。


と思いつつも、相手の話をまずは聞く。



「そんでよぉ、もう停学は別に俺もいいんだ。こんなクソみてぇな学校こっちから願い下げだからな。

だがよぉ、、、俺の面子潰したお前は、許せねぇよなぁ?許しちゃいけねんだよぉ、、、、。」




ありゃりゃー、、、。



まーた逆恨みされてんのか俺。



マジでこいつ面倒くせぇ奴だな。



とりあえず、キレてる様子なので、こちらも冷静に話しかける。



「あのー、、たしかに殴った事は悪かったんすけど、、、、。」



「あ?」



おぉー、、怖い怖い。



だが、俺の性格上、どうしてもこういう面倒くさい奴には本音が出てしまう。



そして今回も出てしまった。





「あの、自業自得って、言葉ご存知です?」





その言葉で完全に逆鱗に触れたのか、相手は大きく前に前進して、俺を殴る様な体勢で迫ってくる。



「舐めてんのかゴラァ!!!!」



俺も、一応構えはとるものの、相手が怒りすぎてフォームがグダグダだ。



こんなもの、伸びてくる腕を掴んで、捻って、相手殴れば一発ですよと言われているような物だ。




一応、なぜ俺がさっき喧嘩した時などに少し戦えていたかというと、幼い頃に親に武術を習わさせてもらっていたからだ。



親は特別強いわけではないが、やはり武術家に学ぶと自然と俺も捌いたり、捻るといった護身術的なものも身に付けれたという訳だ。



はい、隙自語すいやせんでした。



以後気をつけます。



と、そんな余裕のある脳内をしていた俺だが、相手はもう目前まで迫ってきていた。



少しまずい、反応が遅れてしまった。



だが、ギリギリ腕を掴める距離はある。



俺が、相手の腕を掴み技をかけてやろうと、手を伸ばした瞬間、遮られる様に死角から手が伸びてきた。



「え?」

「え?」



俺と三年の声が重なる。



すると、俺の後ろから出てきた男は、片手で俺の手を掴み、押さえる。



そして、もう片方の手で、三年の腕を押さえて、捻る。



三年の小さい悲鳴が上がった。




「うっ、、、!」



そしてその声が聞こえた直後、



爽やかで、だけど重みのあるしっかりとした声が、割り込んできた男から聞こえた。






「そこまで。喧嘩はダメですよ、先輩?」





そして、俺に向き直ると、




「あと、、、鈴風くんもね。」





両者の腕を見た目よりも強い力で押さえながら、

そう言い放った。


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