どういうことなの?
何とかトーナメント用の隊員の洗い出しが済んだわ…あ~仕事した!ついでに、ホースト辺境伯領の繁華街?の情報を得て、買い出しとか市場の情勢なども確認したいな…
シュージアン殿下のゴタゴタが済んだ後…今、執務室には私の他にゴリマッチョのガイト=バファリアット少将(第二妾妃様)しかいない。
仲良くなる為には歩み寄り大事。
「バファリアット少将、少しお聞きしたい事があります」
バファリアット少将は顔を上げて、一つ頷かれた。無口な方だわ…
「ホースト辺境伯領で可愛らしい雑貨や女性向けの小物を購入出来るお店をご存じですか?」
本当はリード=ピレビュー少尉とかの方が若いし、お洒落に関しては詳しそうだけど…歩み寄り大事。
バファリアット少将は少しだけ、考え込むと
「シンシアとよく行く、ヒルカム雑貨店が可愛い商品を多く取り扱っていると思います」
と、すぐに返答してくれた。シンシアって誰かな?
「シンシア?」
バファリアット少将ははにかんだように微笑まれた。
「私の娘です」
「娘っ…えっ?バファリアット少将はお…奥様がおられるの?!」
衝撃…衝撃だ…まさかの既婚者?!それでリアフェンガーの愛人なの…はっ!性癖を隠すためにまさか偽装…?
バファリアット少将は途端に表情を曇らせた。
「妻は四年前に亡くなっておりまして…」
「…っ!そうなの、それはお辛いことでしたね。ではお嬢様をおひとりで育てていらっしゃるのね。お嬢様はおいくつなの?」
第二妾妃様の赤裸々な過去を暴いてしまった…!バファリアット少将はフニャと微笑まれた。おじさんの赤面…可愛くない。
「もうすぐ五才になります」
「まあぁ…じゃあ奥様はお嬢様が生まれてすぐ?ご苦労をされたでしょう…」
「祖父母も健在ですし…皆に、リアフェンガー殿下にも助けて頂いてますので…」
「…っ!」
私は白目を剥きそうになった。まさか…男手一つで育てて行く為に、リアフェンガーからの経済的援助を交換条件に愛人業を引き受けたとか!?
ああ…なんてこと、リアフェンガーあなたは人の弱みに付け込んでノーマルと思われるバファリアット少将をそっちの道に引き込んでっ…いやでも待って?路頭に迷う幼き子供をかかえた未亡人を経済援助をしつつ手元に引き受けているのは、考えようによってはノーブレス・オブリージュなのか?
そうか…そうよね。ノーブレス・オブリージュ…心にグッとくるわね。そうだわ…
「バファリアット少将、私もシンシアちゃんにお会いしたいわ、大丈夫かしら?」
私がそう聞くと、バファリアット少将はまたも嬉しそうに微笑んだ。
「はい…妃殿下にお会い出来ると伝えると、きっと大喜びだと思います」
「まあ嬉しい!いつでもいいのでお連れしてね。ああ、そうだ!甘いお菓子とかお好きかしら?」
「シンシアの大好物です」
「ウフフ…じゃあシンシアちゃんが遊びに来てくれる時にいっぱい作っておもてなししないとね!」
そう……牙城を切り崩すにはまずは外堀を埋める事!…これよね?いきなり妾妃様達に近付かないで、娘さんから仲良くなっていけば、より良い関係性を築けるはず…うん。
その後は、シンシアちゃんが如何に可愛らしいかを熱く語るバファリアット少将と楽しくお話が出来た。
暫くして、リアフェンガーとリード=ピレビュー少尉が戻って来たのだが、私達が楽しそうにお喋りしているのを不思議そうに見つめていたので、夕食時にリアフェンガーと食事を頂きながら
「という訳で…シンシアちゃんが遊びに来てくれた時に、いっぱいお菓子を作ろうかと思いまして」
と話してみた。
「うん、シンシアが喜ぶね」
「はい、喜んでくれるといいのですが…」
リアフェンガーが頷きながら、それはそれはお美しい微笑を浮かべているのが目の端に見えたので、直視を避けつつ微笑み返した。
うん、うん!妾妃様達と順調に歩み寄りを見せている私に安堵してくれたのよね?私も頑張りますからね!
その夜…メイドのシーナとフリージアが胸が半乳くらい見えている、透け透けネグリジェを着せてきた。
「こんな透けている寝間着なんて必要なの?」
「…っ!」
シーナとフリージアは驚愕の表情を浮かべている。
因みに、同じくメイドのエルマは今日は午前で仕事を終えている。三人でローテーションを組んで私のお世話をしてくれているのだけど…そう言えば昨日お風呂から出て、すぐに寝ようとしたらエルマに
「本当に寝てしまうのですか?大丈夫なのですか?」
と、しつこいくらい聞かれたっけ?どうしてなんだろう…
「エルマから聞いたのですが、今日は爆睡してはいけませんよ?いいですか?」
シーナがものすごい形相で迫ってくるけど…どうしたの?
皆が寝るな…と言ってくるので暫く起きてようと、宮廷愛憎ドロドロ小説を読んでいると、内扉が静かに開いた。
あら?その扉……ひゃああ?!湯上りしっとりの、この世で一番美しい人はだあれ?のリアフェンガー王弟殿下が……何故そこから入って来るの?あ、隣はリアフェンガーの私室だったっけ?
「ヴァル…」
明らかにホッとしたような顔をして、しっとりとした色気を発しながら近付いて来るお色気殿下。
カウチソファに座っている私の隣に座ってくると、こっちを見たので慌てて目を逸らした。
どうしてこんな夜にここに来るの?
リアフェンガーの手がゆっくり私の髪に触れてきた。毛先をゆっくりと触りながら…リアフェンガーの手が顔に近付いて来る。
流石の私も分かってきた。シーナやエルマが寝るな…と叫んでいた理由も分かった。でも…嘘でしょう?この私だよ?ちゃんと相手をしてもらえるの?
リアフェンガーの手が髪から胸元…そして顎を伝って来て指先で顎を上に向けられた。至近距離にあるリアフェンガーの瞳を真正面から覗き込んでしまった。
ほら…やっぱり目が離せなくなる…この世で一番美しい人。
何とか口を開いてリアフェンガーに問い掛けた。
「私で…大丈夫なのでしょうか、私は殿下の…その…好みに
まだ言いかけているのに、リアフェンガーに体を引き寄せられた。
胸筋に押しつぶされ…うぐぅ…これは本気の締め技なのか。
「ヴァル…ヴァル、もう待てない…いいか?」
え?と思う間もなかった。返事をする前にリアフェンガーに抱き抱えられて、ベッドに連れ込まれていた。
…
……
………
どうやらリアフェンガーは両方イケる口だったみたいだ。しかも現役軍人のマッチョ殿下…もうやめろ!シヌシヌ!…何回これを叫んだだろうか。最後は声が枯れて雄叫びのようなものを発していた記憶がある。
今は何回戦か終わった後で、一切下半身が動きません。比喩でもなくマイナス六十度の冷凍マグロ状態だ。きっとこのまま野垂れ死ぬんだわ…
「でんが…ゲホッ…ゴホッ」
咳が腰に響いて…激痛がっ!!
「イダダダッ…」
「…!ヴァル?!大丈夫か?!」
うぉい!このマッチョ!大丈夫じゃねええ!!!
何とか動く口の中に一口サイズの氷の塊を魔法で作り、舌の上で転がした。のど飴、舐めたい…
口の中の氷を舐め終わると、首を動かして私を抱き抱えているリアフェンガーを見上げた。リアフェンガーは心配そうに私の顔を覗き込んでいる。不敬だけど言うぞ?いいか、言うぞ?
「私を殺す気ですか?」
「す、すまん…加減は……した」
「今、変な間がありましたね?はぁ…もう…殿下」
「名前…」
「え?」
もう見慣れてきたので至近距離のリアフェンガーの瞳を覗き込んで見た。
「俺の名前…愛称で呼んで欲しい…」
何だか急に可愛くなってませんかね?今も事後のお色気がバンバン垂れ流されているけれど、二十六才のくせに可愛くありませんかね?
「じゃあ…リーフェ、これでどうです?」
リアフェンガーが破顔した。至近距離で笑うなヤメロ!!
「リーフェ…!いいっすごくいいよっヴァル…ヴァル…」
「イダダアァ?!シヌシヌ!」
本気で叫んでしまった。
取り敢えずは私の魅惑ボディも永遠に封印することにはならなかった。何だか、リーフェが「胸が綺麗だ!」とか「ヴァルの体は魅惑的だ!」と、ものすごく褒めてくれたのが結構嬉しい…いや、かなり嬉しい。
今の体はボロボロだけど、初めてはリーフェで良かった…と素直に思えた。
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