エピローグ②

※めんどいので、表記は全て地球時間となっております。

正確に知りたい方は、年数に365かけて4で割って下さい。


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今からおよそ2000年前

旧イセンドラス共和国首都

総督府ー執務室


「考え直してくれクオン!お前の力が必要なのだ!」


「嫌だと言っているだろ。俺にも家族がいるんだ、それにお前こそもう戦争はしないと誓ったはずだろ?」


「だが・・・・・・お前も今の情勢は知っているだろ?」


「それでも、争いの連鎖は今度こそ断ち切らなきゃいけないんだ。それに俺はもう60歳になる、いても邪魔になるだけだ。」


「クオン・・・」


反乱を成功させ、見事隣の星へと移り住む事に成功した彼らは、次々と町を発展させた。

しかし、溜まりに溜まった迫害への怒りはついに鎮める事ができないほどになっていた。人間は一度裕福になると、それ以外の事を考える。いつ戦争が勃発してもおかしくない状況にまでなっていた。

だが、イセンドラスの英雄、クオン=ワリーシナが味方にならないため、戦争へは発展せずにいた。

過去数十年に渡って共和国首相を務めていたヒミ=イセンドラスは、親友に自分の考えが通らない事がわかると何かを諦めた顔をして、別の提案をした。


「ならせめて、水と空気のある第3の星を探してくれないか?」


「どうしてそんなことを。」


「過激派の連中の目的は、かつての故郷にある大量の水と空気だ。ならば、その大量の水と空気がある新しい星が見つかれば解決するかもしれない。」


この42年間ずっと自分の名前と同じ星イセンドラスの仲間のためにと動いてきたヒミの物事に対する情熱は昔と変わらなかった。

誰もが後ろ向きになり、迫害を受けていた日々からたった1人で前に立ち、見事に明日を掴んだ彼の事をクオンもしっかりと尊敬していた。

だからふと、昔のようにこいつの役に立ちたいなと思わされてしまった。


「・・・・・・わかった、やるだけやってやるよ。」


「ありがとう。これで少しだけ希望が見えた。」


「だが、見つかるかわからないぞ?43年前、お前に言われて探したが、俺の発見できる範囲にそのような豊かな星はなかった。」


「だがほら、今なら時空龍ヘレナがいるだろ?」


「いるにはいるが・・・・・・まぁお願いしてみるわ。」


「あぁよろしく頼む。」



✳︎



その日から、クオンは妻や息子、娘、孫達と一緒に第3の故郷をひたすら探した。

家族みんなで探して3年かけて見つけ出し、1年かけて転移の術式を組んだ。


しかし、やっとの事でできたこの術式を見せようと思った時、ヒミは既にこの世界にいなかった。


自宅から総督府へと移動中に、スナイパーライフルで顔面を撃ち抜かれたそうだ。

そして、魔法があまり得意ではない彼は即死だったそうだ。さらに運が悪い事に、殺された日は術式が完成した日と同じ日であった。


がっくりと地面に倒れたクオンに、ヒミの秘書だった女が手紙を渡した。

それは、もし自分が暗殺した時の事が詳しく書かれていた。


"悪いな、殺されちまったみたいだわ。いつもの俺だったら、この星を頼んだぞと言うかもしれない。だが、死ぬ事を確信した今の俺は家族の方が心配だ。俺の家族を連れて、お前が見つけた星へと移り住んでくれ。大丈夫だ、世界最強の魔法使いであるお前ならできる、頼んだぞ。"


読みながら、クオンは絶望した。目に涙が溢れて、続きが読めなくなるほどに。


"追伸、泣き虫なお前に俺から1つ忠告だ。家族間でできた子供は死にやすいらしいから俺の孫とお前の孫を結婚させるといいぞ。"


「あいつ、最後の言葉がそれかよ・・・・・・」


「クオン様、どうかこの遺書通りにお願いします。イセンドラス様はこの遺書の事を最近は1番に気にしていました。」


「わかってる。俺はあいつに何度も明日を見せてもらった。その恩は返すさ。」


「よろしくお願いします。」


この時、クオンにもう少し魔法の腕があったなら時間魔法でヒミを蘇生ができて、世界が変わったかも知れない。しかし、クオンは蘇生できなかった。



✳︎



次の日、新政府が立ち上がる前にヒミの家族と共に新天地へと転移した。


転移したのは、氷に覆われた大地であったが、そこから各地を転々とし、やっと見つけた住みやすい場所で生涯を閉じる事にした。


ヒミの遺言通り、クオンの5人の孫の内の3人をそれぞれヒミの孫と結婚させた。

そして、結婚をしなかった2人の兄弟を現地で作った国のリーダーにした。

生まれた孫の長女の方に、親友であったヒミから名前をとり、『ヒミコ』と名付けた。

彼女には、未来予知という特別な真意魔法が使えたのでこの役にピッタリだと思ったからだ。



そして、彼にもついにその時が来た。


「人生、色々な事があったな。」


死ぬ時は1人にしてほしいという頼みを聞いて、クオンの家族は、部屋の外でその時が来るのを待つ事になった。


「えぇ、そうですね。私も貴方とお別れになるのが辛いです。」


だが、その要求を頑なに拒否したヘレナだけは、最後の瞬間を共に歩む事になった。


「お前たち龍は俺が死んだらどうなるんだ?」


「再び、人間には見ることができない精神生命体となります。新たな契約者が現れるまで私たち龍はその姿を顕現する事ができませんので。」


「ならまた俺の子孫の誰かがお前と契約するのかもな。」


「そうなると思います。ですがそれは、何千年先の事になるのやら・・・・・・」


「そうか・・・・・・なら1つ、俺の頼み事を聞いてくれないか?」


「いいですよ。私にできる事ならばなんでも言って下さい。」


ワリーシナには1つ、気掛かりがあった。それを解消するために、最後の希望を子孫に託そうと思ったのだ。


「俺の子孫と龍の契約を自由にしていい代わりに、俺が死んだ後、この星の人々がもし絶滅の危機になったら救ってあげてほしいんだ。」


そう、イセンドラスの存在だ。いつか自分に並ぶ魔法使いが誕生してこの星に侵略してくるかもしれない。それだけは何としても防ぎたかった。

クオンは、この魔法のない星が魔法によって汚染されるのが嫌だったため、魔法を広めるのを控えた。

だから、イセンドラスにこの星を攻められたらひとたまりもないと考えたのだ。


「・・・・・・いいでしょう。時を操る龍として、その願い、確かに聞き届けました。」


「できるのか?」


「私1人では無理かも知れませんが、私が契約をした事をとても羨ましがっている姉に協力を仰ごうと思います。」


「そうか、ならもう悔いはない。新たなご主人様をよろしくな。」


「はい、どうか安らかに。」



そして、クオン=ワリーシナは、その生涯を閉じた。

この願いはおよそ1800年後に聞き届けられ、彼は世界の危機と希望の光を同時に呼び出す事になる。


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エピローグはもう少し続きます。

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