#24 終戦への道
【これを聞いている全イセンドラス兵士の皆さん、戦争を停止して下さい!我々イセンドラスは、降伏します!】
チェルシーを守るように両手を広げた少女は、敵味方問わず全ての兵士たちに精神に干渉して直接呼びかけた。
誰もが手を止め、彼女に視線を向ける。そして、イセンドラス人の多くは、彼女か自国の姫君である事を理解した。そして、『降伏』という言葉を理解した。
だが、まだ納得はできていないものが多い状態であった。
【降伏というのはどういう話でしょうか。それと、あなたはどちら様でしょうか?】
シーナが使った精神干渉魔法と同じ魔法を使って、咲夜が尋ねる。
『降伏』という言葉は理解できる、だがその言葉の捉え方が地球とイセンドラスで違う可能性があるからだ。それと、嘘をついたり何か罠にかけようとしている気はしないが、一応念のためだ。
敵が自身の槍を亜空間にしまった事を確認すると、咲夜も武器を収めた。
それを確認すると、少女は咲夜へと近づいた。
【私は、イセンドラス帝国皇女ーシーナ=イセンドラスです。我が国にはもはや、戦争を継続できるほどの部隊は残っておりません。よって、皇女の名において無条件降伏いたします。】
筋は通っている。しかし、セランは政治的な混乱を避けるために敵の降伏を認めないという方針を打ち立てていた。冷酷な自分は、このまま戦闘を継続すべしと言っている。
ただやはり、咲夜としては誰も殺さない道を選びたいと思ってしまった。そして、この選択を愛する夫である結人も選んでくれると考えた。
【申し訳ございません、私には降伏の受諾をする権限がございません。ですから、今は一時休戦という事で双方軍を引き、明日会談を行いませんか?】
それが、咲夜の出した最大限の譲歩であった。
そしてこの選択は、降伏を認める事と、ほぼ同義であった。
【わかりました。ですが、我々には寝床や食料がないので分けていただけませんか?】
【わかりました、私の方で用意します。案内します、部隊を集結させたら、ついて来てください。】
【ありがとうございます。】
✳︎
それからしばらくして、人類とイセンドラスの兵士達は南極半島へと降り立つと、それぞれ陣地を築いた。
イセンドラスは、皇女シーナの指導の下、騎乗魔獣部隊の魔獣達は全てその場で処分され、武器の類を全て放棄した。
生き残った最後の一隻のみ、特別に保有を許可された。
その日の内に両軍共同で救出作業や治療が行われ、多くの兵士の命が救われた。寒い南極の海で死んでしまった者は多く、両軍とも万を超える死傷者が出た。
そして、咲夜とシーナの間で交わされた停戦からおよそ20時間後、南極半島に人類側の最高指導者であるセラン=レオルドが護衛であるゼラスト=メネルトーレ、そして日本防衛軍の大将である朝日奈と共に到着した。
急遽作成した臨時軍港に、セランを乗せた空母が停まる。
そして、多くの部下と共に下艦した。
「こんにちは、セランさん。」
「やぁ『黒白』君、報告は聞いている。案内してくれ。」
「はい、こちらです。」
出迎えた結人は、S級魔法師モードで対応をした。多くの部下がいる前ではセランさん、黒白と呼び合う事にしているのだ。
航路の疲れを癒やしてもらったあと、臨時で建てたこの基地の中枢にある会議室へと案内した。
セラン、ゼラスト、朝日奈の3人が入室したのを確認すると、結人は厳重な結界を張った。
結界の中には、今回の作戦に参加したS級魔法師8名が並んで座っていた。S級魔法師がこうしてほぼ全員揃ったのは久しぶりだった。
また、イセンドラス代表とネオルカ代表は、別の部屋で待機してもらっている。
そして、結人も合わせた12名による会議が始まった。
「じゃあまず結人君、状況を説明してくれ。何がどうなっているのかきっちりと、だ。もちろん、建前はいらない。」
セランは、机に肘をつけながら前屈みになると結人に説明を求めた。
「まず、敵の状況から説明します。戦艦21隻を含むイセンドラス軍およそ30万は、その内の3割が死亡、5割が重軽傷を負っていて、戦艦は1隻を残して全て撃沈しました。」
「敵の被害状況はわかった。それで?何が起こったのだ。」
「はい、どうやらイセンドラスの本国で内乱が起こったようで、イセンドラスと地球を繋ぐ魔法が、反乱軍側から切断されたらしく、敵は自力での帰還を諦め、我々に泣きついてきたという話です。」
結人は、話の要点を掻い摘みながら、話を続けた。具体的な
数字はわからないが、反乱が起きた事は確実だ。
「イセンドラス軍を全滅させた場合、近い将来に、反乱軍から宣戦布告無しで攻められる可能性があるので・・・・・・」
「これは、誰の判断だ。」
セランは、少し試すような口調で聞いた。
「私の判断で停戦を行いました。」
結人は、自分の独断で戦争を停止させたと答えた。本当は咲夜てあるが、そこは伏せる。
結人を除く他のS級魔法師達は、それぞれ黙って聞いていた。
「確かに、叩くなら両方まとめて叩いた方が効率的だな。それに、奴隷とまではいかないが、労働者として利用できるな。」
「あくまで友好的に接するべきだと思います。『ネオルカ』と手を組まれて転移魔法で特攻してきたら現在の防衛システムでは守りきれません。戦争に勝てても、民間人に犠牲を出すような結果にはなって欲しくないからです。」
「そうだな、宇宙人をどう扱うかは今後の問題だな。だが、それよりまずは終戦についてを話し合いたい。終戦についてだが、私はやはり、イセンドラスを殲滅すべきだと考えている。だが、それぞれの意見も聞きたい、それぞれ自由に発言してくれ。」
セランは開戦当初と変わらず、イセンドラスなど殲滅すべき、と意見した。
そして、地球の未来を決める重要な会議が始まった。
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ギフトについて
こんにちは、佐々木サイです!いつも読んで頂きありがとうございまス!
先日開始されたギフトについて、説明します。
結論から言うと、ギフト機能を使う必要は全くないです。私自身もまだよく分かっておらず、限定でSSを作るぐらいなら、普通に公開する予定なので、無理のないようにお願いします。
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