#23 最強のその先へ②

同じく第四段階を解放した美月は、別次元の魔力を放った。

美月の契約龍であるヘレナと手を繋ぎながら、敵を見つめる。先ほどまでは同じか、少し強いぐらいだと思っていた実力は今では天と地ほどの差が生まれていた。

負ける気がしない。


「空間魔法・・・<絶縮>!」


最短距離でチェルシーの真上へと瞬間移動すると、下に向けた左手で魔力波を放つ。込める魔力量はあまり多く無いが、直撃すればダメージは必至。

瞬時に反応したチェルシーは、槍を上に掲げてガードした。

予測どおり、むしろガードを選択してくれる事を望んでいた。ガードを選択すれば、必然的にもう1人の方が無防備になる。


「お姉ちゃん!」


「わかっています、<火炎加速フレアドライブ


美月の攻撃が防御される事を予測して、正面へと飛び出した咲夜は攻撃を放つ。

槍を使って上を守っているので、腹部はガラ空きだった。


「神楽流・壱式<火の舞>」


神楽流の最初の一撃、火をまとい真一文字に切り裂く。

しかしこれは、チェルシーがギリギリで反応してかわし、斬撃は空を切った。

やはり、そう上手くはいかない。


「×××(氷魔法<氷爆>)」


チェルシーの反撃が始まった。

僅か数秒で空気中に作り出した大量の氷の塊が、咲夜と美月を襲った。無差別に弾け飛んだ氷の塊を、2人はお互いの剣で切り裂いた。

パリンパリンと氷の破片が飛び散り、パラパラと海に沈む。

それに対して、死角である裏側に回り込んだ美月が反撃の雷魔法で対抗した。


「雷魔法<電雷>」


空気という絶縁体を余裕で突破できるほど高い電圧で、雷魔法を放った。

数的な有利を用いて、ターゲットを2つに分散させることによって、弾幕を薄くする。


「×××(風魔法<旋風刃>)」


1vs2では戦ってもジリ貧になると判断したチェルシーは、咲夜の方を少し放置して、美月の方へと狙いを絞り攻撃を繰り出した。

いくつも生み出された鎌鼬かまいたちのような攻撃が美月を襲う。

8つの攻撃のうち直撃コースは1つ、避けた先に攻撃を置いて、逃げられなくする作戦。

もちろん、この程度では美月を止められない。

しかし、美月はそれを避けなかった。


スパッーン


美月の足が切りさかれた。そして、美月は血が出るよりも早く時間魔法を使って修復した。


「時間魔法<逆再生タイムリバース>」


美月の身体が魔法陣に挟まれて、時間の逆転が行われ、傷が僅か0.01秒で塞がった。

美月は、ヘレナによってその魔力が尽きるまて自動再生が行われる。

例え一瞬で殺されたとしても、身体を粉々にされたとしても、ヘレナさえ無事てあれば再生をする事ができるのだ。


時間魔法を初めて見たチェルシーは、それに対応する事が出来なかった。イセンドラスの魔法技術では、時間魔法を実現させる事は不可能とされている。故に、それが時間魔法である事に気がつかなかった。

藁科の空間魔法である絶縮によって距離を詰めた美月は、ここで初めて有効打を与えた。


「空間魔法<絶牢>」


黄色い半透明の障壁がチェルシーを囲い、内部の動きを止めた。

初見でこの魔法を打ち破るのは難しい。打ち破るのに最低1秒以上の時間が必要だ、そしてその1秒という時間は、魔法師同士の戦闘において、あまりにも長すぎた。

間髪を入れずに咲夜が近くと、咲夜の斬撃に合わせて美月は自ら魔法を解いた。


「神楽流・参式<紅葉の舞>」


真っ赤に燃えた紅葉が降り注ぎ、咲夜の持つ一振りの龍剣改め龍刀に魔力を注ぎ込むと一気に放出した。


空を切り裂くような一撃。

輪を生み出すように一回転しながら、炎の斬撃を繰り出した。

それに対して、炎の輪を正面から止めるようにチェルシーは槍て迎え撃った。


「私の攻撃は無限を司る『輪』。欠ける事はありません。」


「ハァァァアアアアアアア!!!」


お腹に力を込めて、高速で縦に回転する炎を受け止めたチェルシーだったが、咲夜の斬撃に押し負けてた。

咲夜の斬撃は止まる事を知らず、魔力障壁を粉砕し、初めてまともなダメージを与えた。致命者こそ避けたものの、そのダメージは大きい。

肩からお腹の方に深い太刀傷ができ、赤い血が流れる。


「×××(回復魔法<成長促進>)」


一瞬で傷を元どおりにする魔法は、時間魔法を除いて他に存在しない。そのため魔法師は、こうして成長促進魔法を使うことによって傷を治したり止血をしたりするのが一般的だ。それは、人類もイセンドラスも同じだったようで、チェルシーは痛みに耐えながら必死に回復魔法をかけていた。


その隙をわざわざ見逃す2人ではなかった。美月は、見えている範囲ならほぼノータイムで瞬間移動できる<絶縮>を連発した。

一回放つごとにどんどんレベルが上がっていく。咲夜も、容赦なくチェルシーを追い詰める。

細かな太刀傷が増え、だんだんとチェルシーの回復魔法が追いつかなくなっていった。


そしていよいよ、咲夜は追い詰めた。


「これで終わりです・・・・・・」


迷いはない、戦場でいちいち殺した殺されたを数えていたら、お話にならない。

出来るだけ義妹である美月の手を汚さないため、咲夜が前に出た。

もはや、チェルシーに助かる道は存在していなかった。


「神楽流伍式<焔の舞>」


神楽流・伍式<焔の舞>

咲夜が新たに生み出した、咲夜のみが使える剣技。

燃え盛る美しい焔をまとい、進行方向上のあらゆるものを貫き、焼き尽くす技。


一直線に繰り出されたその斬撃は、チェルシーに当たる直前で止まった・・・・・・いや、止めてしまった。


突然やってきた1人の女の子が、チェルシーを守るように両手を広げて立ち塞がった。


もちろん見覚えはないが、魔力量から推定したところお世辞にも多いとは言えない。

着ている服は一応軍服だが、あまりにも弱そうに見える。

そして、増幅魔法と精神干渉魔法を使いながら、彼女はこう叫んだ。


【これを聞いている全イセンドラス兵士の皆さん、戦争を停止して下さい!我々イセンドラスは、降伏します!】


その一言で、戦闘は嘘のように止まった。



_________________________



どうしましょう、私のpcが物理的に壊れました。(自分が悪い)

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