#22 最強のその先へ
「<魂の回廊>」
周囲一帯の魔力を全て吸収し、この世界へと顕現した龍の世界における頂点の一角、聖星龍リエスは、その圧倒的な魔力と威圧感を放ちながら、結人の隣に立った。
結人が差し出した右手をリエスが優しく握り返す。直後、2人の魂が魔力によるパスで繋がった。2人の身体が、白い光で包み込む。
「この力も慣れてきたみたいね、結人」
「まぁあれだけ特訓に付き合わされたらそりゃ・・・・・・」
ここ最近、結人はずっとリエスの特訓をしていた。身体は強くなっても心が追いついていかずに、何度も失敗して、やっとのことで掴んだ。
魔法師における頂点ー第四段階、その力の大きさは想像を軽く超えていた。
第四段階を使った結人は、龍の力の一部借りる事ができる。
「力を借りるよ、リエス。」
「いいわよ。さっさと終わらせちゃいましょ。私は早く苺大福食べたいわ。」
リエスは、顕現してからというもの、ずっと自由気ままに遊んでいた。
中でも、僕と一緒で苺大福が好きなようで、妹のヘレナと一緒にたくさん食べていた。
過去一強い相手なのに、緊張感を全く感じていない。まるで、道端に転がる石ころかのように扱っていた。
それほど、圧倒的な差があったのだ。
「ぐあああぁぁぁぁあー!!!」
その圧倒的な差を見せても、黒い化け物は臆することなく攻撃を繰り出してきた。高速移動で一気に距離を詰め、右腕で力一杯払う。そして、敵が無事かどうかを確認するよりも先に左腕で突進攻撃を繰り出してきた。
ともに超高速の攻撃、普通の魔法師であれば、まず間違いなく初撃で沈む。しかし・・・・・・
「うるさいわね。もっと静かにする事はできないのかしら。」
魔力障壁などを一切展開せずに伸ばしたリエスの右手は、その攻撃を完璧に魔力で無効化した。
純粋な魔力の塊をぶつけて攻撃を防いだのだ。
手を繋いでいる間は、結人はリエスの力が使え、リエスも本来の力を取り戻す事ができる。
結人は左手で、3色の龍剣+愛剣である絶夜、そして以前のクリスマスに咲夜が打ってくれた刀の5本を構える。もちろん、手に握るのではなく宙に浮かせ、自由に操る。
「飛べ!」
結人は、凄まじい速度かつ、強烈な斬撃を幾度となく浴びせ続けた。手足を切り落とし、本体も何度も切り刻む。
破滅級UCならばこれで決まる、そう思った直後、敵は再生を始めた。
あれだけ切ったのに敵の魔力はまだ20%しか減っていない。
「ギャアアアァァァァ!!」
敵も痛みを感じたのか、雄叫びを上げた。それによって敵UCの雰囲気が変わる。
真っ黒の人型の化け物の身体のいたるところに赤いラインが生まれた。
おそらく、魔力の塊だ。魔力が濃すぎて魔力回路がほぼ暴走状態になっていると思われる。
そしてそれか、異様な雰囲気を感じた。
「・・・・・・なんかまずくない?」
「っ!!!結人、急いだ方がいいわ。あいつ、この星を消そうとしている!」
「本当?!」
攻撃力は、意外と大したことがないこの黒い化け物だが、防御力と体力に関してはありえないほど高い。
先ほどの、連撃も決まると思ったが完全復活された。
そして、それに対抗できるだけの魔力を使って十数分戦ったにもかかわらず、まだ敵の魔力が80%も残っている。核のような物は無いみたいだし、残りの80%を削り切れるかわからない。
どうする?
第二段階でも放つ?
でも多分避けられる。
他に選択肢は・・・・・・あった・・・・・・
使った事はないが、入った事はある。
ぶっつけ本番だ。
「リエス、アレを使うよ。」
「何の事よ。」
「多分アレならこの状況を打破する事ができるはず。」
「・・・・・・あぁ、アレのことね。いいわよ、ぶち込んであげなさい。」
「わかった、まずは・・・<絶縮>!」
結人は、藁科の魔法の基本<絶縮>を使って敵の正面へと移動した。当然、それに気づいた敵は攻撃を繰り出した。
結人は、敵の攻撃が到達する前に、半径1mほどの小型な魔法陣を形成すると、それに大量の魔力を流した。複雑な魔法式が刻み込まれた魔法陣が光り輝く。
「これで終わりだ。<
直後、結人を中心に半径数十mが結人の魔力に飲み込まれ、次元が引き裂かれた。
✳︎
何もない、真っ白な空間。空気は、先程まであったが、既に分解された。
その中で、一体の怪物が崩壊するのを龍とその契約者が眺めていた。
「っ!!!」
上も下もない無を象徴するような空間。魔力は愚か、物理的な時間すら流れていない。
既に、勝負は決した。
普通の物質や生物にはこの空間に存在する資格はない。
まるで異分子を排除するかのように徐々に崩壊が始まる。
「ここは、空間と空間の間、通称『次元の狭間』。光、音、魔力、質量、全てが無となる虚無の空間。この空間に入った以上、僕達の勝ちだよ。」
丁寧に説明をする結人の声を、聞き取るだけの力はもう残っていなかった。
「それにしても、よくこの空間を作れたわね、入ったのはだいぶ前のあの時だけなはずよ。」
「できるかなって思ったら出来たんだよ。」
やってみたら出来たとしか言いようがない。結人自身もそれに驚いていた。
リエスは、そう答えた結人の身体をまじまじと見つめた。
「これはいよいよ、人間を卒業したようね。」
「卒業?いやいや、まだ人間でいたいよ。」
「は?何を言っているのよ。私を顕現させた時点で人間はとっくの昔に辞めてるわ。今は・・・そうね、龍人といったところかしら。」
リエスがニヤっと笑った直後、残っていた最後の塊が消えた。
「龍人か・・・・・・確かにそうなっちゃったかもな。」
「さぁ帰りましょ。ここは何も無いから長くいるとうんざりするわ。」
「わかった。<絶門>」
結人がそう唱えると、次元と次元をつなぐ輪っかが形成された。
2人は順番にその穴に飛び込んだ。
________________________________
問題発生
ラスボスの討伐が、たった2話で終了。
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