#20 乱舞④
【美月!聞こえる?!】
イセンドラス主力艦の中央部から出てきた新たなUC、破滅級10体分以上の魔力量で、見ているだけで強者とわかる。
あれを相手にするのは危険だ、そう判断した結人はすぐさま美月、そして、咲夜と通信を繋げた。
【うん、聞こえるよ、お兄ちゃん。】
【美月も感じていると思うけど、アレは明らかにやばい。ここは僕が相手するから、美月と咲夜はグレンの応援に行って。】
あのグレンが絶対に勝てないと確信する相手だ。美月1人もしくは咲夜1人では万が一の事があるかもしれない。そのため、2人に行ってもらう。
それにおそらく、目の前の相手の方が断然危険な臭いがする。
【いやです!私も結人さんと一緒に・・・・・・】
突然、咲夜の脳内に、祖父を失い、自暴自棄になって破滅級UCに1人で立ち向かっていったあの時の結人の姿が鮮明にフラッシュバックした。
ボロボロになりながら、人類で初めて破滅級をたった1人で倒してしまった、幼き日の結人。
あの時は、本当にぎりぎりだった。何かが欠けていたら、間違いなく先に力尽きたのは結人の方であった。咲夜は、間に入らずにそれを眺めている事しかできなかった。
初めて見た結人の本気。
それは、どこまでもカッコよくてどこまでも怖かった。
今、結人の目は、その時と同じ目をしていた。
【こればっかりはダメだよ。美月がいるとはいえ、粉々にされたら復活は出来ないんだからさ、ここは僕を信じて。】
結人は、咲夜の両手を握りながら、先程と同じ目で咲夜の目を見つめる。
有無を言わせない目。
気圧されて、咲夜は折れた。
【わ、わかりました。結人さんを信じます。】
【じゃあ美月、未来のお義姉ちゃんをよろしくね。】
【うん!わかったよ、お兄ちゃん!】
しばらくして、ツクヨミを降りた美月は、咲夜の手を引きながら、西の海へと飛んでいった。
その間、奇妙にも目の前の化け物は、自国の船を破壊して回っていた。魔力障壁と推進力の無い戦艦などただガラクタ同然、過剰なほど戦艦を粉々にした。
「何をやっているんだ?」
理解不能、結人には自国の船を壊すメリットがわからない。おそらくおの船には敵の指揮官や将校が多数乗っているはずだ、あの様子なら生き残る事は不可能に近い。
敵の目的は?
考えてもわからない。
ただ結人は、ある一つの結論へ辿り着く。
「まずい、もしもアレで敵の要人が死んだら戦争を止められる人がいなくなる!」
しかし、気がついた時には既に遅かった。
100km離れた現場にたどり着いた時には、生命反応は数えるほどしかなかった。生き残り、なんとか海へと脱出した兵士達も、どうやら泳げないようで、盛んに喚いている。運良く地上に降りられた者もいるが、それはずっと少数だ。
そして、そんな彼らをあの化け物は容赦なく殺して回った。
「重力操作、風魔法、空間魔法<絶縮>!」
結人はとりあえず、瓦礫に挟まっている人と海で溺れている人を順番に救出した。
多少雑ではあったが、並列起動をしながら全員を助けていく。
海の上を飛び回り、あと少しで全員を救出し終わると思ったその時、突然後方から凄まじい速度で黒い塊が飛んできた。
第3段階を使っていたため、その攻撃に気づいた結人は、純白の龍剣を合わせる。
「重い・・・」
気づいた時には、化け物の身体が正面にあり、繰り出されたパンチを正面から受けていた。
凄まじい力と力がぶつかり合い、何度も衝撃波が飛ぶ。
「弐式<ファルト・ルイン>!」
亜空間から取り出すのは2枚の大盾、これは随分と前に作ったものだが、耐久性は盾として機能できるレベルと判断して、投入する。
特別な魔力障壁でコーティングされていて、結人以外の魔法師の魔力を受け付けない作りになっているその盾は、敵の攻撃を完璧に防いだ。
さらに、ノックバックを与え、敵を混乱させる。
尽かさず結人は、真一文字に敵を切り裂こうとした。
しかし・・・
「なっ!膝でガードするなんて・・・・・・」
敵は、胴体を真っ二つにされる事を避けるためか、片足を犠牲にして斬撃を受け止めた。
結果、勢いが足らず、左足を切り裂くだけで終わった。これでは意味がない。
すると案の定、敵は再生を行った。
わずか1秒足らずでの再生、流石に早すぎる。
魔力の方も戦闘開始時から1%程しか減っていない。とんでもない強さだ。
敵のメイン攻撃である腕をかわしたり盾で防ぎながら、着実に剣を敵の身体に当てる。
しかし、大してダメージは入らず、こちらの魔力だけが減っていく状況、打破するためには・・・・・・
使うしかない。
魔法師同士の戦いの頂点
『第4段階』
その歴史は長い。
かの英雄にして今回の戦争の発端となった人物ワリーシナを始めとして、歴代のネオルカ国王の半分ほどがそれを使うことができた。
しかし逆を言えば、それぐらいしか使えるものはいない。
イセンドラスでも、数百年現れなかったり、2人同時に存在していたりと、出現の時期や頻度はバラバラでそこに到達するための明確な基準はない。
ただ、精霊もしくは龍と契約している人のみが到達できる極地でもある。
結人は、自らの純白の翼をはためかせながら、空中に静止すると、体中の魔力を集めた。
空気が震え、風が止んだ。
極限状態まで効率化した魔力回路は、東京のスクランブル交差点の数万倍の忙しさを見せながらぐるぐると回っていた。
「
結人は何気にこの魔法を使うのは4回目だ。
1回目と2回目は魔力が暴走寸前になってしまい失敗、3回目でやっと成功したが、そのあまりの力の大きさに、思わず怖くなってしまったほどだった。
いつの間にか周囲の時間軸と空間軸が止まっているかのうな感覚に襲われ、追いかけてきた敵の動きが止まった。
自分の心と身体と魔力が完全に一致したのを感じた瞬間、結人は唱えた。
「<
______________________________
ついに結人の最期の魔法が出てしまいました。
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