#19 乱舞③

南極大陸

日本及びネオルカ義勇軍



「引いて行くな・・・」


「そうだね。」


「あぁ・・・・・・まさかこんなに早く退却するとは・・・」


日本の4つの空中戦闘艦の1つ『イザナミ』に乗った樹、桃、空の3人は、周りに知り合いはおらず、自然と固まっていた。

敵は大規模な攻勢に出る事なく、ちまちまと砲撃を行うだけで、やる気を感じられなかった。

日本のエリート部隊『夜明けの光』所属の3人ではあるが、戦艦同士の戦闘に出番はないと判断され、この別働隊に組み込まれた。


長距離からの撃ち合いによる戦艦への被害はお互い出ていないものの、段々と両軍の距離が近づいていき、いよいよ本格的な戦闘が始まるのでは?と両軍の兵士たちが思ったところでまさかの反転、イセンドラスは尻尾を巻いて逃げていった。


「なんかよくわかんないけど、帰っちゃった・・・・・・」


「これって?追撃とかすんの?私出番ないんだけど。」


「追撃するなら隊長が支持を出すだろ。」


「たしかにそうね。」


桃の疑問に、空は吐き捨てるように答える。

戦争が無くなった事は嬉しい限りだが、せっかく寒い思いしてここまで進撃してきてもう終わりってのは虚しい。多少の戦闘はしたが、正直物足りない。


「「「・・・・・・」」」


「あ、隊長って俺か。」


「「そうだわ(よ)、早く指示を出してよ。」」


「えっと〜じゃあ微速前進で。」


「「「前進微速了解!」」」


樹のテキトーな発言に、魔法師部隊おやそ30名が声を揃えて復唱する。

最近、無駄にランキングが上がった樹は、追撃を行った。



✳︎



「・・・・・・」


イセンドラスの主力艦の後ろにぴったりとくっついたままの中型艦が一隻あった。

戦闘にはほとんど参加せず、先ほどまでもこうして主力艦『シーナ』を盾にしていた。


そんな戦場における汚点のような戦艦の艦長席にイセンドラス主力艦と同じ名前を持つ少女が座っていた。


「我が国の船がこんなに簡単に・・・・・・」


戦闘に参加していないこの艦からもイセンドラス側の戦艦が次々と海に沈められる光景はしっかりと見えた。

皇帝ダルバークの地球侵略作戦に異を唱えたため臆病者と呼ばれ、後方に下げられたレベター大佐の船は、後方に下げられたお陰でなんとか生き残っていた。


無傷とは言えないが、ミサイルをしっかりと全て迎撃していたため、未だ健在であった。

しかしそれと同時に、味方の戦艦がやられるのをただ見ているだけしかできなかった。

手柄が欲しくてたまらない同僚達はレベター大佐に「出しゃばるな」と散々に渡って言い、戦死したのだった。


また、「私にも見届ける義務があります。」と言って無理やり乗艦してきたお転婆なお姫様もあるせいで、うまく前に出られない。


「お父様は何を考えておられるのでしょう・・・この戦争、どう見ても我が国の負けです。兵士たちがまだ生きているうちに降伏するべきなのに・・・・・・」


宣戦布告という文化は無い代わりに降伏という文化はあるイセンドラスでは、戦時国際法の類はない。ただでさえ少ない人口か戦争によって散ってしまったら元も子もないからだ。


しかし、ダルバークは勝つ事を信じて疑わず、降伏という考えは選択肢にもなっていなかった。

自分の声は届かないかもしれない、だが言わずに本国が攻撃される事になったらと思うと怖い。

ならば、早めに降伏をして、いい条件にしてもらう事を祈るのが1番の最善手。


「でもこれは・・・自分勝手な選択なのでしょうね。私たちは侵略を行なっているのに、本国が危険に晒されるとわかった瞬間に手のひら返し、ですが仕方ありません。」


「姫さま、もはやこれまででございます。」


「えぇ、私もそう思うわ。」


「もうこの戦争を止められるのはあなた様だけでございます。どうか、陛下の元へ行き、陛下を説得して下さい。私も共に参りますので。」


「えぇ、わかりました。ー


2人が頷き合い、席を立った直後、魔力の収縮とともに物凄い爆発音が鳴り響いた。

衝撃波で、艦全体が少し揺れる。


「おいどうした!何があった!」


「わ、わかりません!主力艦『シーナ』から突然爆発が!」


「爆発だと!あの鉄壁を誇る『シーナ』の魔力障壁が破られただと!敵の砲撃か?」


古くから軍の第1線に所属しているレベター大佐は、自国の戦艦の防御力の高さを誰よりも理解している自身があった。

高さ10kmのところから垂直に落下させても壊れないであろう魔力障壁に、分厚い装甲、中型艦全てが倒されてもあの艦だけは生き残るであろうと予想していたほどだ。

故にわからない。敵はどのようにしてあの防衛を突破したのか。

敵の主砲は言うに及ばず、先程のロケット型の爆弾では破壊できないはず、だとすると敵の魔法使いか?いや無理だ。連続して攻撃を与えたなら可能かもしれないが、一撃で貫通する事など不可能。

だとすると、考えられるのは・・・・・・


思考していると、さらに次の瞬間エンジンが停止した。それだけじゃない、魔力障壁も全て解除され、砲撃も止まっている。

光が失われ、推力も失われた。


「主力艦シーナ、エンジン停止!魔力障壁ダウン!全システムダウンを確認!」

「主力艦シーナの中央部から膨大な魔力反応を感知!この魔力パターンは・・・・・・魔獣?だがこれほどの魔力量を持った魔獣など聞いた事が・・・・・・」


「内部分裂・・・・・・くそっ!予期していた最悪の事態だ。」


言語が通じない以上この状況を説明する事はできない。また、これでは姫さまと主力艦に移動するのはむしろ悪手、西方にいるチェルシー将軍と共にいるのが1番安全だ。


「反転する!チェルシー将軍の元へ急ぐぞ!」


「「「了解」」」


レベター大佐の命令を受けて、艦首をぐると傾け、離脱体制をとる。


「待ってください、お父様がまだ中に・・・・・」


「もう無理でございます、姫さま。あの爆発、おそらく中に反乱を企てた人物がいるのでしょう。ならば真っ先に皇帝陛下は刺されてしまうと思います。」


「そんな・・・・・・」


次の瞬間、主力艦シーナが着水した。もはや、撃沈と言ってもいい。

そして中から、全身真っ黒な化け物が出てきた。魔力が濃すぎて、ところどころ結晶化しなが、宙に浮いていた。

艦内の誰もが言葉を失った。

自国の兵器なはずなのに、誰もその姿を見た事がなかった。

ただ1人、イセンドラスの姫ーシーナを除いて。


「あれは・・・・・・『サイモン』・・・・・・」


1年以上前、何処かでその姿と名前を見た事があった。


どこで見た?


1番可能性が高いのはお父様の執務室。しかし、そこではない気がする。


ならばどこで?


トディア様の持っていた資料に挟まっていた・・・・・・

そんなはずはない。だが、否定する材料もない。つまりこれが現実というわけで・・・


何か猛烈に嫌な予感がしたシーナは、思わず隣にいたレベルー大佐に向かって叫んだ。


「今すぐこの場から離れて下さい!あれは・・・あれは・・・星破壊兵器です。」




_________________



どうも、続編をやろうかどうか悩む今日この頃な佐々木サイです!


あともうちょいで終わるってなると何故か妙にもったいないなと思ってしまい。

一度決心したはずが、続編を書きそうな勢いになっています。


こうなったらあとは、皆さまからの⭐︎やレビューがあれば、もしかしたら・・・

お星さまやレビュー待ったます!٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

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