#10 開戦と世界の運命③
「敵艦隊の座標がわかりました!正面、直線距離でおよそ2000kmです!」
「敵中型艦20、大型艦1!偵察班の報告では、敵の魔力障壁の強度はジルトレア地球軍以上だそうです!」
「敵の装備に、光学兵器を確認、回避はほぼ不可能なので魔力障壁を展開せよとの事です!」
司令本部と常時回線を繋ぎ、最新の情報を手に入れる。もし仮に敵に情報が漏れても英文を理解できるとは思えないので、垂れ流し状態になっていた。
今回の通信で得た情報を、頭の中でまとめる。かろうじて引っかかる程度であるが、与えれた情報から結人も敵の位置座標がわかった。
しかし、今いるのは南極半島の東側。この場所は、もし仮に敵艦体の出現位置が南極点でなかった場合でも対応できるギリギリの位置となっている。そのため、ここからでは遠すぎる。
「姉さん、確かこの艦って他の艦より硬いんだよね。」
「うん、硬いよ〜なんせ私が魔改造してあげたんだからね〜ガッチガチだよ〜」
「じゃあ先行して、敵を惹きつけよう。全速前進し、敵の注意を引いたら転進!」
「「「了解」」」
このまま進もうかと考えていたが、敵艦隊の方が魔力障壁の技術が上かため、ジルトレアの戦艦に施されている魔力障壁では貫かれてしまう可能性があるのだ。
そのため、威力偵察という意味でもツクヨミが前に出る。
結人は魔力を動かし、艦を高く上昇させる。直後、乗組員の1人がレバーを大きく前に倒した。
艦後部に積まれた4つのエンジンが大きく火を吹く、空中戦闘艦だからこそできる動きで艦隊の前へと躍り出た。
しかし、速度を上げたといってもまだ遅い。この分では接敵までに1時間近くかかってしまう。
「このままじゃまずい・・・・・・、でもワープはあんまり使いたくないし・・・・・・」
ワープ最大の弱点であるワープ後の硬直は、戦場では命取りになる。それに、それだけの魔力を集めたら敵に気づかれる可能性は大きい。
「1番困るのは敵が分散進撃をする事だよ、結君。少し危険かもしれないけどワープを使おう!」
「でも、そんな事をしたらこの艦の守りが・・・・・・」
「そこは大丈夫、結君が外にいる状態でワープすれば攻撃されてもなんとかなるでしょ。」
「確かに・・・わかった、それで行こう、美月ここをお願い。」
「わかったよ、お兄ちゃん。」
この中で、結人の次に空間魔法に著しい美月に席を譲る。そして、結人は乗降口へと走っていった、咲夜もそれを追いかける。
そして、2人が艦の正面に来た事を確認した茜は乗組員に指示を飛ばした。
「総員、ワープの準備!」
「「「了解!」」」
美月も結人と一緒に何度かワープの練習をしたので、このぐらい朝飯前である。
そして、美月は全世界で唯一このツクヨミだけに搭載されているシステムを使う。
「『ワープシステム』発動!」
約2万5千個の魔法陣に膨大な魔力を一気に流し込む。
全ての魔法陣が互いに連載反応を引き起こし、世界を書き換える。
そして、目の前に巨大な魔法陣が現れた。言わずもがな、ここと目的地とを繋ぐワープホールである。
「次元バリア装填完了!」
「システムオールグリーン!」
「ワープホール、突入します!」
結人に先導されて、魔法陣の中に突っ込むと途端に景色が変わった。もはや見慣れた光景になって来た白くて短いトンネルを抜けるとそこには白い世界が広がっていた。
「ワープ成功、システムに異常なし。」
「メインエンジン再始動、魔力障壁展開」
「『ワープシステム』、クールダウンに入ります。」
「敵艦隊座標、正面約200km地点です。まもなく、射程圏内に入ります。」
トンネルを抜けた先は本当の意味での雪国であった。大陸全土が氷に覆われており、UCが点在していた。どうやら、心配は杞憂に終わったようだ。
UCの勢力圏内なため、当たり前と言えば当たり前だが個体数が多い。見えるだけでも超級が4体、災害級が1体いる。
放置しようとも考えたが、イレギュラーは出来るだけ排除しておきたい、そう考えた茜はすぐさま魔法で愛する弟へと用件を伝える。
【結君、今のうちに強いUCだけお願い。】
【了解、姉さん。】
✳︎
出来るだけこの場から動かない方がいいと思った結人は、甲板に座りながら亜空間から遠距離攻撃用の銃を取り出す。
遠距離攻撃用光学兵器”MKーV3ドレータ”
銃身約1.5m、射程距離2万kmの光学兵器。
このV3ドレータは、改良を加えたか結果、この武器が1番効率よく敵UCを倒す事ができる。必要な魔法陣の数も1万個から1000個程度に減った上、射程も2倍になった。
そして何より、この武器は専用武器ではなく量産型となった。
つまり、結人以外の魔法師にも使えるようになった。ドレータの製造元である『銀の船』はボロ儲けしたらしい。なんでも、観賞用にと購入した一般人が大量にいたらしい。
なんで使えない物にお金をかけるのか理解に苦しむが、買った側が満足しているのならそれもいいだろう。
ちなみにお値段日本円にして1500万円である。なんて高い買い物なのだろうか。
「・・・・・・動いている物に乗りながら撃つのって大変だね。」
「そうですね、私たちのような剣メインで使う魔法師にとっては難しいですね。」
5発ともきっちりと敵UCの核を貫いた夫婦の言葉である。
敵UCはなすすべもなく、その命を削り取られた。
そして・・・・・・
「あれですね・・・結人さん・・・・・・」
「うん、多分アレが・・・『イセンドラス』軍だね。」
地平線の彼方に、少しだけ白い塊が見えた。纏っている魔力量も相当な物だ。
それが何なのか、言われなくてもわかる。
「結人さん、こ武運を・・・」
「うん、第一段階<龍召喚ー聖星龍>」
結人は、軽く咲夜にキスをすると魔法陣で彼女を呼び出した。
半径1m程の小さな魔法陣にとてつもない量の魔力が集まる。そして、完全体となった彼女がその姿を表した。
「待ちくたびれたわ、結人。さぁ、一緒に行きましょう。」
「うん、行こう、リエス」
結人は、リエスの手を引きながら、南極の空を飛んでいった。
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