#4 結果と歩み④
ご飯食べていたら遅れました、すみません。
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「これが私が50年前この星に来た理由だ。何故私がUC達より先に地球へやって来れたのかはわからないが、今述べた事に嘘偽りがない事は保証しよう。」
明かされた真実、その言葉は重い。
地球側の誰もが言葉を失った。この事実をどう世界に説明すべきか、今後どのような対策ができるかに頭を悩ませる。
有名な映画で、自分達がいる世界は実は偽物で造られた世界である事を知るシーンを思い出した。きっと登場人物たちも同じような気持ちだったに違いない。
しかし、ただ1人結人だけは先ほどの話からある疑問を覚えていた。
「20年前、どうしてキリアさんは別れを告げなかったのですか?」
「そうか、まだ伝えていなかったな。20年前、私がこの星を去った時私は直ぐに地球人と再会できると考えて別れの挨拶をしなかった。逆にしてしまったら帰れなくなる予感がしたからだ。」
「何があったんですか?」
「私が『ネオルカ』に帰星した時、私を殺したという理由で、再び戦争が始まっていた。今までのお遊びとは訳が違う総力戦だ。そのため私は向こうで、戦争終結を図っていたんだ。別れの挨拶が出来なくてすまなかった許してほしい。では最後、何故私がこの地球へとやってきたかだ。」
キリアは、地球にいた当時大好きであった日本茶を一杯飲んでから話を続けた。
議論は止み、全員がキリアへと耳を傾けた。
「奴らに地球の存在がバレたからだ。」
「地球がバレた?」
聞き返したセランに、そうだ、と答えてキリアは話を続けた。
「奴らが停戦に合意した一番の理由は、ここ地球があったからだ。過去に迫害を受けたからというのを戦争の理由にしていた帝国だが真の目的はそこじゃない。奴らは、鉱山資源に乏しい『イセンドラス』からどこか別の星へ移住したいと考えたのだ。」
移住した時点でわかっていた事だが、『イセンドラス』はとても軽い星だった。
鉱山資源に乏しく、その上陸地が多く水が少なかった。そのため近いうちに資源不足になる事は目に見えていた。
そして帝国上層部は何処か資源の豊かな星へ引っ越したいと考えた最初に目をつけたのはもちろん遠き昔の故郷『ネオルカ』。しかしここを落とすのは厄介な精霊使いがいるため難しい。
そこで目をつけたのが『帝国の奇跡』の転移先だった。何度かの実験を繰り返した結果、向こうには豊かな大地が広がっている事がわかった。
そしてすぐさま、移住計画が立案された。
障害となる事が予想された原住民も、その魔力の薄さから魔法がそれほど発達していないと考えられ、侵略作戦は順調に進んだ。
「奴らの進行は地球時間で、あと1ヶ月ほどでまず間違いなく始まる。私はその応援に来たのだ。」
「戦争・・・・・・」
「侵略だと?!」
「どうする、我々に対抗は可能なのか?!」
ざわめく議会を、セランは机を叩きながら黙らせた。
「諸君、静粛に!!!今慌てても仕方ないだろ!まずはキリア殿から敵の規模や正確な日時を聞くのが先決だ。奢るつもりはないが、我々にも切り札はあるのだ。地球を奴らに明け渡してたまるか、徹底抗戦するぞ!」
「「「おぅ!!!!」」」
✳︎
地球側の科学者と『ネオルカ』側の科学者の協議の結果、決戦の日は2050年1月20日である事がわかった。
場所はおそらく南極、規模は少なくとも100万人は下らないらしい。何より警戒すべきは敵UC改め魔獣の存在だ。
敵の意志の下、統率のとれた動きが予想される。それがどれほどの脅威か、予想がつかない。
そして、どんな魔法攻撃が考えられるかもわからない。とりあえずわかった事は、入念な準備が必要だという事だ。
これらの真実は、少し書き換えられた上世間に公表された。当然、世界中が荒れた。
何しろ、情報力が大きすぎたのだ。
キリア=メスタニア、ネオルカ、イセンドラスなどの言葉がネット上で飛び交い大きな混乱を呼び起こした。
そんなこんなで世界中が荒れている中、この日だけは平和で静かな雰囲気となっていた。
何を隠そう、クリスマスである。
結人と咲夜はお昼を食べた後、藁科の実家へと帰って来た。
「おかえりなさい、結人君、咲夜ちゃん」
「ただいま、おばさん。」
「お久しぶりです、おばさん。」
「はい、さぁくつろいで下さい。」
彼女は、結人の祖父ー隆元の妹である。
藁科一族はほぼ全員が藁科家にいないため、彼女が現在は家を見ている。
リビングに上がった結人と咲夜がしばらく待っていると、茜と美月がやってきた。
この2人は恋人がいない同士でクリスマスパーティーをしていたらしい。
「おばあちゃんの話聞いたよ、結君」
「私も録画を見たよー」
茜はともかく、美月の方は大丈夫かなって思っていたけど2人とも大丈夫そうだ。
「おばあちゃんの事は何処を調べてもわからなくてさ。やっと繋がったよ。」
実は結人は、自分の祖母の事を何度か調べた。息子である真人に対しても偽名を使っていたらしくとても驚いていた。
「はぁ〜まさか私があの英雄の孫だとはね〜それなのにどうして私はこんなに弱いんだか〜」
「私ももう少し強くなりたいな〜」
茜の自虐ネタになんて答えればいいのかわからなくなった結人は話題を変えた。
「それと、もう一つわかった、というか予想できた事があります。おそらくですが、僕たちはキリアさんの話に出で来た反乱軍の英雄『ワリーシナ』の子孫じゃないかという話です。」
「『ワリーシナ』?って確か『イセンドラス』が『ネオルカ』に復讐戦を挑むことに呆れて姿を消したっていう・・・」
「まさか結君はその人が地球で作った子孫が藁科家って言いたいの?」
「考えてみてよ、2万人もの人々を魔法の力で別の星に移したんだよ?そんなの空間魔法にしかできない。『帝国の奇跡』って魔道具からわかる通り、『ワリーシナ』はここ地球にやってくる手段があったんだ。証拠はないけど多分そうなんだじゃないかと思う。」
「藁科とワリーシナってなんか少し似ていますしね。私も結人さんと同じ結論に至りました。」
2人は、それぞれの頭の中でそろばんを弾く。
そして、納得した。
「確かに・・・・・・私もお兄ちゃんに同意するよ。」
「そっか〜そういう見方もできるのか〜」
2人は考えに納得した。
「皮肉だね・・・・・・圧倒的な力を手にした最強が、戦争を避けるために逃げたら、それが戦争を呼び起こすなんて。」
「圧倒的な力は、奇跡と破滅を同時に呼び起こす。大事なのは使い方だよ、結君」
「そっか、そうだね。みんなの幸せにするために、1番良い方法をとるよ・・・・・・とりあえず、僕達は準備をしようか。」
「「「うん(はい)!!!」
その後も4人は、決戦に向けて作戦を練り始めた。
これが、最後の戦いになるはずだ。
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一年近く続いたこのお話も区切りが見えてきました。
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