#1 結果と歩み

2049年12月14日午後5時32分


この日、序列2位ゼラスト=メネルトーレ率いるジルトレア選抜部隊が最終目標である『ホーン岬』の地を踏んだ。日米欧の混成集団の中には樹や大和、桃の姿もあった。

拠点設営の後、ゼラストたちは掃討戦へと移行した。障害となるであろう災害級UCにはS級が、超級にはA級が当たり特に危なげなく掃討戦を行った。

周辺の海を空母や護衛艦が囲み、最悪の場合の回避経路としての役割をしていた。


上空には大気圏外から地球へと降りてきた空中戦闘艦艦隊もならんでいた。これらの艦隊は『夜明けの光』の副隊長である紅の指揮の基に、遊撃部隊として活躍した。

移動砲台としての活躍はもちろん、魔法師の休憩所としても活躍を見せた。


そしてそこから45時間26分後


「戦闘に参加中の全ての人類に通達する。たった今<第五区>内に生息していた全てのUCの消滅を確認した。これによって現ジルトレア最高責任者である私、セラン=レオルドの名において第三次奪還作戦の終了をここに宣言する。」


「「「わぁぁあああ!!!!」」」


破滅級UC2体を含むおよそ150万超のUCを討伐し旧南アメリカ大陸からUCが完全に消え去った。





奪還作戦は無事終了した。しかし実際はまだ何も終わっていない。むしろここからが始まりであった。

魔法師や戦闘員の仕事は終わった、ここからは軍司令部や作戦局の仕事である。


12月24日、ジルトレア最高責任者セラン=レオルドは序列1位黒白を含む5名のS級魔法師とジルトレア幹部をニューオリンズにあるジルトレア本部へと招集した。


この会談は後に、『真実のトゥルー前聖夜クリスマスイヴ』と呼ばれる事になる。


無駄にでかくて強固な人類最大の防衛拠点。

海岸沿いにある円形の建物は四方を海で囲われており交通の便がとても良い。ここにも魔力測定システムの一つ『レギンレイヴ』が24時間体制で監視が行われている。

そんなジルトレア本部の最深部に、結人達は集まっていた。


円形のテーブルに老若男女20人の人間が座った。また、会話は日本語で行われた。人数比的に日本人が一番多いからだ。


「さて、今日集まってもらったのはほかでもない。『ネオルカ』と『イセンドラス』についてのジルトレアの対応についての会議を始める。」


全員が揃い、定刻になった所でセランが開幕を宣言した。


「ゼラスト、説明を頼む。」


「わかりました。」


セランの問いかけに答え、ゼラストが立ち上がる。直後、全員の視線がゼラストに集まった。


「我々ジルトレアは、先の戦闘で念願であった<第五区>奪還に成功しました。つきましては、まずはその防衛案についてお話させていただきます。」


そう言うと中央にあるモニターに旧南アメリカ大陸の全体図が映し出された。それぞれは4色で色分けされており、それぞれ日本・アメリカ・ヨーロッパ連合・ジルトレアの領土を示していた。

これについては文句はどこからも出なかった。領土が増えるということは決していいことばかりではない。むしろ今回に関して言えば赤字とも言える。


世界には元ブラジル人で、故郷に帰るという夢が叶って涙を流して喜んでいる人がたくさんいた。しかし、その領土を維持する為に血を流して悲しむ人たちもいるのだ。

どの国も単純な防衛費だけで、国庫の10%を超えるだろう。

はたして奪還した意味はあったのだろうかと疑いたくなる国民もいたらしい。だがこれが大きな一歩になったのは間違いない。


「記載されているとおり、以前までの体制に加えて今回の奪還作戦で有用性が確認された衛星軌道からの遊撃部隊の新設しました。これにより防衛のレベルが格段に上昇したことをご報告させていただきます。」


「おぉぉ!」

「ついに・・・・・・」

「紅の賢姫様の提案していた・・・・・・」


各地から驚きの声や納得の声が上がる。紅の賢姫様というのは茜の軍部での通り名だ。普段はいい加減なイメージがあるが(実際その通り)、戦術を練らせたら超一流。

奇想天外な発想力と計算高さは一目置かれている。


「続いて各地点の担当ポイントを発表いたします。」


ゼラストの発言とともにS級魔法師12名の名前と担当位置が映し出された。基本的には、9つの魔力測定システムにそれぞれ1人ずつ、例外として黒白、白銀は別枠の遊撃部隊として起用。

金色(ゼラスト)はホーン岬の防衛を務める事になった。

新ルールとして常時100分以内に防衛が可能な位置待機しておくことが義務付けられた。


「あのゼラストさん、私のような非戦闘系のS級魔法師はどうしましょうか。」


そう尋ねたのは、世界で2人目の戦闘分野以外のS級魔法師となった預言者シェリカ=ユタ。

彼女本人も何故自分にこのような能力が備わったのかはわからないそうだ。

ある日突然わかるようになった彼女はその翌日にジルトレアの門を叩いた。最初、誰も彼女を取り合わなかった事は言うまでもない。しかしその翌日、彼女の預言は次々と的中した。軍上層部は震え上がったという。


彼女としては、今やっている仕事を続けながら預言があったらジルトレアに伝えるという仕事をしようと考えていたが、軍上層部はすぐさま彼女の押さえ込みを図った。

現在彼女は、ジルトレアの重要人物の1人として、ニューオリンズ本部の一室が与えられている。当然、仕事は辞めてもらい、預言者の仕事一本に身を捧げてもらっている。


「これまで通りとさせていただきます。我々S級魔法師の中で1番人を救っているのは、貴方とエリーナさんなのは間違いありません。安全な後方で待機していただきます。」


「了解しました。」


「さて、本題に入りましょう。入室お願いします。」


「失礼する。」


ゼラストがそう言うと、入り口の向こう側から声が聞こえた。やがて扉が開くとから4人の『ネオルカ』人が入ってきた。

そして、空いていた席へ隣にいた者とともに座る。

そして後ろには護衛と思われる2人が立ち合った。


机の上に置かれた名札には、

ネオルカ精霊王国 女王 キリア=メスタニアの名前があった。


会議はここからが本番だ。



____________________________


私個人は、こういう会話シーンの方が書いていて楽しいし、好きです。

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