ss ゲーム

3000ブックマーク、65万PVありがとうございます!

これからもよろしくお願いします!


________________________________



結人、咲夜、美月、茜の四人の中で一番ゲームが下手なのは誰かと聞かれたらまず間違いなく結人の名前が挙がるだろう。

結人の場合、まずゲームを起動するところから始めなければならない。機械があまり得意ではない結人は、まず最初に説明書を熟読し、わからない単語は紙の辞書で引くタイプである。2049年現在、まだ紙の辞書に頼っている10代がいるだろうか。

そして、そんな結人が、戦闘に使用する武器や装置を握らせたら完璧に理解するのはどうしてだろうか。


話を戻して、では一番ゲームが上手なのは誰なのか。


「というわけでみんなでやってみよ~」


茜が何かを宣言するように飛び跳ねた。東京校に入学する時まで住んでいたマンションに4人で集まり、テレビを囲む。


「確かに機械は苦手だけど、僕が一番弱いってのは納得いかないかな。」


否定する結人、だが小さい頃から結人をサンドバックにし続けた茜は、結人のゲームの下手さを理解していた。


「いやいや~結君弱いじゃ~ん。双六みたいなボードゲームは結構強いけど~電子ゲ~ムはダメダメじゃん~」


「ま、まぁぜんぜん勝てないけどさ・・・・・・」


「大丈夫ですよ、結人さん。私はこのようなテレビゲームというものを触ったことすらありませんから。」


「私もゲームセンターには行った事あるけどテレビゲームはやったことないかな。」


予想はしていたが、10代とは思えないテレビゲームの経験率の低さに驚く茜。少し賑やかになりながらも、四人はゲームに集中した。


やっていくのは、大人気レーシングゲーム。今回で15作品目となる超大作だ。

初見の結人、咲夜、美月は、ルールを理解するところから始めた。

そして一回戦、立体のコースを上下左右へと走り回る。


「あれ?僕結構得意かも・・・」


と、呟く結人の順位はゲーム開始から今まで無難な走りを見せ、2位という結果であった。普段は電子ゲームが下手な結人であったが、今回は咲夜がいるからか、動きがまるで違った。


「やめて〜!!!甲羅当てないで!!!右!右に曲がってよーー!!!」


と、動かしている自分ではなく、ゲームの仕様に文句を言う美月は終始最下位争いを繰り広げ、最後に1人抜かして11位であった。


「テレビゲームというものを初めてやりましたが、結構難しいものですね・・・・・・」


と、独走しながら呟く咲夜。1周目こそ下位に沈んでいたが、続く2周目は全てのコーナリングで最適解を繰り出し、トップに躍り出た。そして3週目、最後の一周は咲夜の独走であった。


そして最後、唯一の経験者で1周目はドヤ顔でトップを走っていた茜は3位へと後退していた。


「・・・・・・実は練習してたでしょ!結君!咲夜ちゃん!」


「いや、そもそもこの機械すら触った事無かったけど・・・・・・」

「私も初めて触りました・・・・・・」


無自覚に茜をバカにする2人、茜が段々と小さくなる。


「も、もう一回やろ〜よ〜今のは練習、練習だからさ〜」


「いいよ、どんどんやろうよ。」

「次は勝つ!」


再戦を望む茜。

結人と美月は、悔しそうに了承して4人は次のステージへと移動した。


次のステージは宇宙の上を走るステージ。コースアウトするポイントが多く、難しいコースだ。

一回戦でスタートダッシュを学んだ3人は茜同様スタートダッシュを試みる、結果は全員成功4人が並ぶ形になった。


と思ったら早速最初のコーナリングでハンドルを逆に切った美月がコースアウト、宇宙の彼方へと飛んでいった。

何をやっているのだろうか。


「あれー???私ちゃんと右に傾けたのに!!!」


「いやいや、左に曲がるなら左に傾けなきゃでしょ~」


「え?」


「え?まさかのそこから?」


だとしたら先程の一戦はどうやってゴールしたのだろうか。逆にすごい。

一方の咲夜はと言うと、コースの最適化をしていた。どのタイミングで何秒ぐらいハンドルを傾けるべきかを瞬時に計算して実行している。理論上最速の走りを見せていた。

そして、咲夜に向けて攻撃ができない結人がその後ろに続く。


「いっけー!結君を倒せー!」


咲夜、結人、茜の順で並んでいたところ、茜は結人目指して絶対に当たることで有名な赤色の甲羅を2連投する。


結人の後ろに付いている防御アイテムは1つだけ、絶対絶命であった。


しかし、咲夜の車が急にブレーキを押して止まった。そして、あっという間に結人に抜かれると、先程美月が投げた2つの赤色の甲羅をガードした。

その直後、一位を走っていた結人が真っ直ぐしか進まない緑色の甲羅を後ろに向けて放った。

そしてその緑の魔球はフェンスで反射して、まるで狙撃銃のように茜の車に激突した。

完璧な連係プレー、これは夫婦にしかできないすご技であった。


「ナイス、咲夜」

「結人さんもお見事です。」


「ちょ、ちょっと!!!今の何?」


その後も2人の連携は続く。音を鳴らして周囲の物を破壊するアイテムを使ってお互いの事を守り合ったり、一方の進路を塞いでいたバナナの皮をもう一方が緑色の甲羅を用いて粉砕したりと、息の合った走りで半周差をつけながら1位2位フィニッシュであった。

茜と美月の結果は4位と5位。向こうは向こうでデッドヒートを繰り広げていたらしい。


「協力するなんてずるいよ、結君」


「え?このゲームは協力するゲームじゃなかったんですか?」

「僕もてっきり、一緒に戦うゲームなのだと・・・・・・」


「「・・・・・・は~~」」


何を言っているんだと言いたげな顔で答える二人を見て思わずため息が漏れる。

そんな中、咲夜にはまた違った感情が芽生えていた。


「結人さん」


「ん?どうした?」


「私、現実で結人さんとドライブしてみたくなりました。」


「私有地なら走ってもいいらしいから今度借りてみるか。」


「はい、楽しみにしています♪」


2人は今日も平常運転であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る