エピローグ/クリスマス

タイトルを見てもらえばわかると思いますが、少し修正を加えました。物語の進行状況には問題ありません。


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12月25日、今日は何を隠そうクリスマスである。

第三次奪還作戦がもたらした新事実による混乱も今日だけは落ち着きを見せていた。

疲弊した戦士達を労うためか、ここ東京では戦勝祝いとクリスマスが同時に行われていた。


そして、ゆったりとした空気を味わうのはもちろんこの夫婦も・・・・・・


「はぁー、おはよう、咲夜」


「おはようございます、結人さん。昨日は楽しかったですね。」


「そりゃああんなコスプレされたら・・・・・・」


「少し恥ずかしかったですが、結人さんに喜んでもらえるならと・・・・・・結人さん?」


隣で寝ていた咲夜を引き寄せてもう一度唇を奪う。んっ!という可愛らしい喘ぎ声を耳に入れながら、10秒、20秒と深いキスをする。

何か最近咲夜との距離が縮まった気がする。

元々遠慮なんてものとは無縁の生活をしていたと思っていたが、最近はさらにそれが激しくなっている気がする。


まぁこれも全部、咲夜が可愛すぎるのがいけないのだ。

僕は悪くない。



S級のみが侵入を許された摩天楼の70階その中で1番大きな2人用の部屋のベッドルームで2人だけの朝を迎えた。

美月も入りたがっていたが、咲夜は断固拒否。

どこまでも理論的に美月を言い包めた。


2人だけのクリスマスを守った咲夜は、どこかのホテルに泊まるよりも自分の部屋の方が安全と考え、こうして2人きりで過ごす選択をした。

ちなみに、聖星龍ーリエスは彼女の実の妹である時空龍ーヘレナといるらしい。


「それにしても、第四段階を解放してからいつもより長くなった気がしませんか?」


「まぁ確かに、体力が上がったからね。僕もそんな気がするよ。」


「ふふふ、これから500年間ずっと結人さんと一緒ですね。リエスさんには本当に感謝しています。」


結人と咲夜は、リエスの魔法によって肉体が最適化され、この先500年ほど生きれる身体となった。

とは言っても咲夜は外面的には何にも変化しておらず、少し背が高くなったかなぁ程度である。

しかし、結人の方は、龍の眼こそないものの、髪の毛の色が白から戻らなくなった。咲夜は、おんなじですね、と喜んでいたが、違和感がすごい。

同様の措置がリエスの魔法によって強引に第四段階に到達した美月にも施された。


3人は魔力量、魔力操作技術と、共に人間のレベルを遥かに超えていた。また、寿命が伸びた事は軍は愚か、家族にすら秘密にしている。唯一、姉さんだけには真実を伝えた。

姉さんは、「弟が竜人になった。」と喜んでいた。龍人という表現は言い得て妙だなと思った。


「その割にはなんか仲があんまり良くないみたいだけど・・・・・・」


「そ、そんな事ないですよ?」


そう、何故かは分からないが、咲夜とリエスは仲が悪い。喧嘩とまでは行かないが、何かと争っているのを目にする。

咲夜曰く、これは絶対に負けられない戦いらしい。まぁほどほどに頑張ってと言っておいた。


「そう、それならいいや。僕は咲夜もリエスも美月も3人とも大切だからね。仲良くしてくれると嬉しいかな。」


「そうですか・・・・・・では結人さん、3人の中で誰が1番なのですか?」


心配と不安を半々にしながら、咲夜はトロンとした目つきで結人に尋ねる。

すると、そんな咲夜の心配心を感じたとったのか、結人はニコッと笑うと優しく耳元で囁いた。


「もちろん、咲夜が1番のお嫁さんだよ。」


右手で彼女の頭を優しく撫でながら、正面からストレートに伝える。

途端に、咲夜の頭の中は再びピンク一色になった。


「あ、あの、結人さん!」


「どうしたの?」


「証が欲しいです・・・・・・」


「証か、クリスマスプレゼントの時に渡そうと思ったけど・・・・・・今でいっか。」


そう言うと、結人は息をするかの如く、魔法陣を描いた。単純な収納魔法ではなく、咲夜ですら気づかないほど厳重な隠蔽魔法を施した収納魔法である。

咲夜の驚いた表情を楽しみながら、お目当ての物を取り出した。


無駄に豪華なのも少しアレなので、ケースはとてもシンプルな物を採用した。

問題は中身の方である。

プラチナとダイヤモンドそして咲夜のイメージカラーである赤を出すためのルビーそして極め付けは、ダイヤモンドと並んで宝石の王様と呼ばれるアレキサンドライトを使って作ったネックレスだ。

『アレキサンドライト』については、ジルトレアボスであるセラン=レオルドに何かいい赤い宝石がないか聞いたところ、これが上がったのだ。

最悪、魔法で作ってもよかったが、ジルトレアからのボーナスとしてただで貰える事になった。

宝石に関する知識が全く無かった結人は、腕の立つ職人に依頼して、早急に作らせた物だ。


なんと加工代金は、結人のサインとツーショットでオッケーと言われてしまった。

流石に断り、代金は払ったが、「紅焔様とついに結婚ですか?」と祝福された。

まぁ油断して仮面を付けずに行ったのが裏目に出たってわけだ。仕方なし。

世間には公表されてはいないものの、黒白の素顔を知る人間が増えたのは確かだ。とはいえ、まだ0.01%に満たない。


そんなどうでもいい話は置いといて、まずは咲夜へのプレゼントだ。



「はい、咲夜。クリスマスプレゼントだよ。」


「ありがとうございます、結人さん!一生大切にさせていただきます。」


「うん、喜んでもらえたようでよかったよ。」


「あの・・・・・・よろしければ、付けていただいてもよろしいでしょうか。私、結人さんに付けてもらうのを憧れていたので・・・・・・」


「わかった。」


結人を立ち上がると、咲夜の背後に回り込み、首に手を回した。

シンプルだが、とても似合っており、男心をくすぐる。

最近、咲夜とレネが影で戦場に舞い降りた天使と呼ばれているらしい。この光景を見れば、確かにと納得してしまう。


「ふふふ、ありがとうございます。ではこれ、お返しです。」


そう言って咲夜は、亜空間から一本の刀を取り出した。


「これは?」


見たところ魔法式が刻んであるわけでも、龍が宿っているわけでもない普通の刀であった。

でも・・・・・・


「先日、私が打たせていただきました。結人さんの剣を一本いただいたのでそのお返しも兼ねてです。」


そこには、溢れ出るほどの意志と愛情が注がれていた。触るだけで咲夜が一生懸命作ってくれた事がわかる。


「ありがと、咲夜。」


「はい♡」



✳︎



混沌と化していく世界、変化していく世界情報、そして新たなる明確な敵という存在。


それでも僕らはより良い明日を信じて進み続ける。


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