#26 分かり始める世界の真実⑤

これは遠い昔の話


命がけで何とか逃げ延びたのは未知の星。

通信用の魔道具は使えないし、ここがどこなのかもわからない。

でもよかった、水と空気がある。

これなら何とか生きられる。


きっとこれは、少し魔法に自身があったからと言って王女である私が護衛を振り切って勝手に戦場に出た罰なのだろう。

目を閉じて、もう一度開いてみるが景色は変わらない。辺り一面真っ白の氷の世界だ。

そして空にはたくさんの星々がギラギラと輝いている。どれも見たことない星空だ。


「あぁ、何か疲れたな、一度寝るか・・・・・・」


着ていた戦闘用の防具や靴を脱いで地面に横たわった。少し寒かったので魔力障壁を周囲に展開して眠りについた。



✳︎



翌日、目が覚めた私は食糧を探す事にした。いくら精霊王国最強である私とて食糧が無ければ生きていけない。収納魔法の中に非常食がまだ何個かあるが、いつ無くなるかわからない。


とりあえず私は、新たな大陸を目指す事にした。この氷の大陸では作物が育たないと判断したからだ。故郷ほどとは言わないが、美しい緑の大地がここにもあるのではと期待したからだ。

緑があれば、果実もあり、それを食べる事ができるだろうと考えたからだ。

魚や小さな動物を食べてもよかったが、どうせなら果実が食べたかった。


次に、この星が故郷『ネオルカ』よりも大きい事がわかった。重力が『ネオルカ』よりも大きく、より遠くまで見る事ができるからだ。一日の長さは『ネオルカ』とそれほど変わらない。それ以外に特徴を挙げるとしたら魔力が薄い事だろう。

魔力が薄いと、魔力の回復に時間がかかる。魔力を無駄に消費しないようにしようと思った。


朝のまだ日が低いうちに私はこの氷の大陸を出た。海面ギリギリをしばらく飛んでいると大きな大陸が見えてきた。

そして驚いた。

ネオルカ人がいたのだ。

新たな大陸へと足を踏み入れた私は早速、現地人に声をかけた。


「ここはネオルカからどれぐらい離れているんだい?」


発音の訛りなどないはずだが、返事が帰って来ない。

私の声を聞いたネオルカ人と思しき人物は隣にいた仲間と未知の言語で話し始めた。


「×××」

「×××」

「×××」


当然何を言っているのかわからない。おそらくこの者たちも私の言葉が理解できていないのだろう。

私が困っていると、話かけたもう一人の方がこちらの方を向いて、両手の平を上に向けて首を振った。

どういう意味があるのかはわからなかったが、拒絶されていることはわかった。


その日、私はひたすらジェスチャーを覚えた。親指と人差し指をくっつけると許可を表すらしい。これを覚えてからは早かった。私は、この星でのジェスチャーを理解した。

そしてもう一つ、大きな発見があった、この星では魔法というものが存在しないらしい。それどころか、魔力すらも認知されてすらいなかった。その時私は、この星の技術は遅れているかと誤認した。


その日は、野原の上で寝た。

久しぶりの草花に囲まれながらの熟睡は気持ちよかった。

次の日も私は街を歩き、現地の言葉や文字を覚えた。文字を覚えなければ交渉が出来ず、交渉が出来なければ『ネオルカ』を探せないと考えたからだ。

思考加速や分析のような頭をよくしたり、理解力の上がる魔法を多用して頑張った。


遭難7日目、私にも友人ができた。この星の言語を全く知らないというのに、親切に寝床まで貸してくれる友人だ。

彼女にこの星の言語である『英語』とよばれるものを学んだ。

私は代わりに、彼女の畑仕事を手伝った。城から出た事がほとんどない私だが、役に立てたらしい。


14日目、この日初めて買い物をした。友人に給料としてもらったお金を、使い新聞紙を買った。

何を書いているのかあまり理解できなかったが、そこに写っていた絵から色々な事を学んだ。

そしてこの日、私はこの大陸を出た。シドニーという大きな都市を訪れたが、そこには大きな建物などは無く。

私はこの大陸では何もできないと考え別の国へと向かった。


友人に1番技術が発達している国はどこかと聞いたら『日本』だと答えたので日本へ向かう事にした。

飛行機に乗るには戸籍とパスポートというものが必要らしいが、持っていなかったので海面を飛ぶ事にした。


そして、私は技術大国『日本』へとやってきた。

ここで、私は藁科隆元というこの星の人間で唯一魔法の使える友人を得た。それと日本語も完璧にマスターした。

そして、私が日本を訪れてから1ヶ月後、来たる1999年11月9日最悪の想定が現実となった。


戦いのさなか、友人は生涯ただ一人の良き夫となった


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