#25 分かり始める世界の真実

少な目です。


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「ここは・・・・・・」


知らない天井、そして知らない部屋。

だがキリアには、ここが何処なのかがわかった。

自分の国よりも薄い魔力、濃い酸素量、そして何よりこの進んだ文明。以前、持って帰った『スマートフォン』という機械の仕組みを解明できる者は1人もいなかった。

そして何故か、自分の国に帰った途端に使えなくなった。いや、使えるには使えるのだがアプリやゲームが動かなくなり、動かなくなったのだ。

終いには充電器をもって帰ったのにコンセントが無く、今ではただの箱となっている。


まぁそんな話はともかく、ここはその昔大戦の折に不時着した星だ。この星には魔法が無く、それはそれは不便な暮らしをしていた。

しかしながら、奴らの侵攻によって魔法を取得し、世界は更なる発展をみえた。

彼らは寿命が短いというのに、長い間魔法に頼らない生活をしていたためか、文明の成長速度が凄まじい。

たった数年で我が国を追い越したのだ、あれから数十年たった今では遥か高みにいることだろう。


すぐにここから出てセランと話そうと考えたキリアは、立ちあがろうとする。

だが、身体が動かない。どうやら拘束具をつけられているようだ。

すぐに雷魔法で電流を流して拘束具を解こうとする。この手の機械は電流を流してやればだいたい外れる。


・・・・・・あれ?


「おい!外れないぞ、これ!」


その昔、酒を飲みすぎて酔った時、同じような拘束具をセランにつけられた。しかしあの時は、魔法の対策はまるでされていなかったため簡単に外れた。今回は、前回のように簡単にはいかないようだ。


「えぇーい、めんどくさくなったわ。風魔法<旋風>」


さっと小型な魔法陣を作り出すと、忌々しい拘束具を切り裂いた。

壊れてしまったためか、何やらサイレンが鳴っているが関係ない。

さっさとセランの元へ・・・


「<探知魔法>」


魔力回路を持たないセランではあるが、その独特な気配を覚えたキリアは遠く離れた位置から彼を探す事ができる。


「なんだ、すぐそこにいるではないか。」


キリアがそう呟いた直後、ウィーンという音と共に扉が開いた。

そして、黒い軍服を着た白髪混じりのおじさんが入って来た。その後ろには護衛と思われる兵士が数名控えている。


「やぁキリア、久しぶりだな・・・・・・もう20年になるのか・・・・・・」


「地球歴だとそんなに経過していたのか、やつれたなセラン」


「お互い様だ、と言いたい所だがお前の方は全然変わらないな。」


キリアの容姿は20年前と全く変わっていなかった。実際には少し変わっているが、20年経過しているとは誰も思わないような容姿であった。

その事から彼女が『人間ではない』事は容易に想像できた。


「・・・」

「・・・」


お互いに話すべき言葉が見つからない。頭の中には何個も思い浮かんでいる、だが何と言えばいいのかわからない。

自信がない。

しばらく、沈黙が訪れた。


死を偽装して自国に帰った英雄、そして死を偽装され怒り狂って世界をまとめた人類の救世主。

お互いに思うところがある。


「・・・・・・話してくれるのか?」


先に痺れを切らしたのはセランだった。弱々しい声で優しく語りかける。


「あぁ、すまないとは思っている。私は何もかも偽りだらけだった。アメリカ出身という話も嘘だし、2000年生まれというのも嘘だ、それどころか・・・・・・。」


「っ!!!」


予想はしていた、だけど心のどこかで違うんじゃないかと信じていた。

だが、現実は甘くない。


「私は、地球で言うところの宇宙人だ。私が住んでいる星『ネオルカ』も地球と同じような星だ。君たち人間とほぼ同じ容姿の人種と、額にツノのある人種が共存している。」


「『ネオルカ』・・・・・・」


「ああ、文明レベルは地球よりも数段劣っているが、魔法技術はおそらく私の星の方が進んでいるだろう。位置は、この地球と同じ銀河で距離は地球換算すると40光年ぐらいだ。」


「そうだったのか・・・・・・」


急に衝撃の真実を伝えられ、セランは何を言えばいいのか分からなくなる。

いきなり、隣の席に座っていた人に自分は宇宙人ですって言われた感じだ。まぁ実際その通りなのだが・・・・・・

キリアは続ける。


「それと私たち『ネオルカ人』の寿命は地球換算でだいたい250年だ。私の容姿がそこまで変化していない理由がそれさ。」


「・・・・・・一旦時間をくれ。ジルトレアの仲間と話さなきゃいけないことが多すぎる。」


すでに、セランの頭の中はパニック状態になっていた。一度、頭の中を整理するためにも休憩を告げる。

だが、キリアには急がなければいけない理由があった。


「だめだセラン!時間がない!」


「時間?何の話だ。」


「・・・・・・やっぱりやめた、話は後でする。それより私をその会議とやらに出席させてくれ。伝えなければならない事がある。」


「・・・わかった。」




それから2時間に及ぶ会議が行われた。

そして、人類は知る事になる。自分たちの敵が何で、何のために戦ってきたのかを。



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どうでもいい話


キリアの故郷の星のモデルは『TRAPPIST-e』です。

宇宙に興味のある人ならもしかしたら知っていると思いますが、現在地球外生命体がいるかもしれないと予想されている星の一つです。

もしかしたら本当に宇宙人がいるかもしれませんね。

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